第四十話
「……酷いですね」
翌日、ラグシアが屋敷から転移魔法を使って中断していた探索を開始する。
雇い入れた冒険者達は三度目の転移魔法でなれたのか体調を崩す者はおらず、ラグシアの指示で田畑の病気の原因を探す。
歩を進める度に周囲の木々や草は色あせており、ラグシア達の身体が触れる度に粉々に崩れ落ちてしまう。
アルは下手をすれば自分達の村がこの森と同じ状況になっていたと思い、表情を曇らせていると部下になった者達が彼へと声をかけて励ます。
「ラグシア様、この森を本当に元に戻せるのですか? ここまで枯れてしまうと元に戻す方法があるのですか?」
「……」
「……ラグシア様を信じるしかありませんよね。俺達は病気についても良くわからないし」
部下から励まされた事やラグシアからしっかりするようにと言われている事もあり、アルは顔を上げると森を元に戻せるのかと聞く。
しかし、ラグシアの耳には届いていないのか彼は真っ直ぐと先を見ており、先頭を歩く者を急がせている。
その様子にアルは小さくため息を吐くと彼の後を追いかけて行く。
「……ここだな」
目的の地に到着したのか、ラグシアは小さくつぶやくと先頭を歩いていた者達は足を止めた。
ラグシアは先頭の者達をかき分けて先頭に出ると周囲を見回している。
アル達がこの場所に来たのはあくまでもラグシアの警護であり、彼の調査の手伝いは出来ず、交代でラグシアの警護をしながら休憩に移る。
ラグシアはこの場所に来るまでは息も絶え絶えだったのだが、いざ、調査が始まると目を輝かせて動き回っている。
その様子には疲れなどまったく見えず、警護に付いていた者達を完全に振り回しており、彼の暴走を始めて見る者達は暴走を止めるためにリズを連れてくれば良かったと言う声まで出ている。
「しかし……なかなか、面白い魔導式を組んでいるな。病気の進行を進める魔法か。これだけでも高位の魔導士を抱え込んでいるのがわかるな。これは厄介だな」
しばらくするとラグシアは調査が済んだのか小さくつぶやく。
口では厄介とは言っている物の彼の口元は小さく緩んでおり、田畑の病気の原因になった者達に興味を持ったようにも見える。
彼の口から出た魔導式と言う言葉はアル達には聞きなれないようで首を傾げるがラグシアは気にする事無く、目を閉じた。
ラグシアが目を閉じると彼の足元から五本の光が走る。
足元から現れた光はラグシアを中心に大きな円を描くと光の柱が伸びて行く。
アル達は何が起きるかわからずにその様子を眺めていると上に伸びた柱は何かにぶつかったようで動きを止めてしまう。
「ラグシア様、何をしているんですか!? ちょ、ちょっと待ってください!?」
「……何を慌てている。私は攻撃魔法を使えない。安心しろ」
「せ、せめて、何をしているか、説明をしてください」
動きを止めてしまった光の柱はこれ以上、進めないため、他に進む場所を求めるように動き始めるが上空だけではなく、ところどころで壁のような物があるのか光は跳ね返り、進む速度を上げて行く。
光はアル達のすぐそばも光は走り抜けており、その光に触れるのは怖いのかアル達は必死に光を交わす。
アルは光が何をしているかわからないため、声を上げるがラグシアは危険などないと言い切ると光へと手を伸ばした。
光はラグシアの手をすり抜けて行くが、それは魔導士であるラグシアから見れば当たり前の現象であり、初めて経験するアル達に取っては恐怖の対象と言っても良い。
アルは光を交わしながら、声を上げるとラグシアは面倒だと言いたいのか小さく肩を落とす。
「……ここまで酷くした状況から風を使って多くの場所に病気の原因を広範囲に飛ばす魔法」
「ま、待ってください。それって!?」
「何度も言わせるな。攻撃魔法ではない。話しにくいから止まれ」
この場所に組み込まれている魔導式に簡単に説明するラグシア。
それは自分達の村を含めたこの周辺の村を襲った田畑の病気を国中に広げるとも聞こえ、アルは声を上げるが光が自分に迫ってきており、言葉は続かない。
話を止められるのにラグシアは面倒に思えたようで光を交わそうとする彼の手をつかみ、動きを制限すると光はアルの身体をすり抜けて行く。
「……何ともない?」
「最初から、そう言っているだろう」
「そう言って、後から何かあるとかしませんよね?」
「しつこい」
アルは光がすり抜けて行った場所を覗き込むが体調不良はなさそうでほっとしたのか胸をなで下ろす。
彼の様子にラグシアは小さくため息を吐くと本題に戻ろうとするが、アルは光がすり抜けて行った場所に何かあるのではないかと不安げである。
話が進まない事にラグシアはかなり苛立っているのか、一言で切り捨てるとアル達はまだ不安のようだが言葉を飲み込んだ。
「……誰かがこの地で病気の元を育て、実験としてこの周辺を使ったと考えるのが妥当だな」
「実験? どうして、そのような事が言えるのですか?」
「風を故意に起こし、遠方に病気を飛ばす以外に無風状態を作り上げ、この地に原因を縛り付ける魔法も組み込まれていたからな。確かにここまで育て上げるには苦労しただろう」
アル達の不安など知った事ではないとラグシアは話を続ける。
実験と聞き、出身の村が被害に遭ったアルは悔しいのか唇をかむが、ラグシアはこの魔導式を組み込んだ魔導士を労うように笑う。
「ラグシア様、なぜ、笑っているのですか?」
「……すまない。少し、不謹慎だったな。しかし、複合の魔導式を組み込める魔導士は貴重だ」
「貴重と言っても、今回の事を考えれば俺達の敵なんですよね?」
ラグシアの様子にアルは不満のようであり、眉間にしわを寄せる。
彼に言われてラグシアは表情を戻すが、それでも、今回の事を裏で操っている者の側に高位の魔導士がいる事に興味を持っているようであり、自然と口元は緩んで行く。
アルにとって、魔導士は異色の能力者であり、敵対する事に不安を抱いているようで表情を引き締めると魔導士が自分達を見ている可能性もあると考えたようで周囲を見回す。




