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愚兄が魔王を継ぎました。~ツンデレ魔導士奮闘記~  作者: まあ
第二部 ラグシア、領地を回る。
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第三八話

「……なぜ、兄上と義姉上が屋敷ここにいるんですか?」

「なぜ? 先ほどの話が気になったからな。ユフィに頼んでここまで来たんだ」

「兄上には関係ありませんので気にせずに公務にお戻りください。父上、お話があります」


 冒険者とアルを連れて転移魔法でシーリング家の屋敷に戻ったラグシアはリズと執事長に冒険者達の世話を任せ、父親に報告するために書斎のドアを開けた。

 書斎には父親だけではなく、デュメルとユフィがおり、二人の顔を見てラグシアの眉間には深いしわが寄る。

 王城の書庫での話が中断されたため、話しの続きを聞きに来たと言うデュメルだが彼に説明をしても無駄と判断しているラグシアは冷たく言い放つと父親に向かって頭を下げた。

 しかし、デュメルは王城に戻る気はないようで立ち上がろうともせず、ユフィは困ったように笑っている。


「……その話はゼノン殿が同行している時にお話しします。だいたい、兄上に説明しても理解できないのですから無駄です」

「それはわかっている。だから、ユフィを連れてきたのではないか」

「ゼノンに説明が必要なら、私が」


 話の続きはゼノンと一緒の時にと話をはぐらかせようとするラグシアだが、デュメルは自分では理解できないからユフィを巻き込んだと胸を張る始末である。

 ラグシアのこめかみにはぴくぴくと青筋が浮かび上がり始め、ユフィはこのままではまた兄弟喧嘩が始めると考えて仲裁に入ろうと手を上げた。


「申し訳ありませんが、義姉上にお話をするわけにはいきません」

「そうですか……デュメル、ラグシアもこう言っているわけですし」


 ラグシアはユフィへと視線を向けると怒りを抑え込もうとしたのか大きく深呼吸をする。

 何度か深呼吸をするがまだ怒りが治まり切らないようでこめかみに青筋を浮かべたまま、ユフィへと向かい深々と頭を下げた。

 彼の態度にユフィは何か感じたようであり、小さく頷くとデュメルの腕を引っ張る。

 それでも、デュメルは引く気はないのか首を横に振るとまっすぐにラグシアへの顔を見た。

 その視線にラグシアは怯む事はなく、睨み返しており、二人の間にはピリピリとした空気が漂う。


「あれ、お客さんが来ているって聞いていたけど、お義兄様、お義姉様? こんなところまでどうしたの?」

「……入ってくるな」


 その空気を引き飛ばすようにリズが勢いよくドアを開く。

 リズは本来いるはずの無いデュメルとユフィの顔に首を傾げるとラグシアはデュメルから視線をそらす事無く、彼女を追い払うように手を払う。

 彼の態度が面白くないリズはずかずかと書斎の中に入ってくると執事長に任されたのか紅茶を並べると当たり前のように書斎にあるソファーに腰を下ろす。


「お義姉様、ラグシアとお義兄様はどうしたんですか?」

「……デュメルがいつも通り、無理な事を言っているみたいで」

「それは……いつも通りですね。いつもの事ですけど良く飽きないですね」


 睨み合いをしている二人からは話が聞けないと思ったようでリズは運んできた紅茶を飲みながらユフィに聞く。

 ユフィはラグシアが言葉を濁している事に何かあると思っているため、デュメルを連れて帰りたいようだが睨み合いは続いており、困ったように笑っている。

 リズは呆れたようにため息を吐くと好きにさせてようと思ったのかシーリング家当主へと視線を向けた。

 彼女の視線にシーリング家当主は首を捻ると彼女はラグシアが調査に協力してくれている冒険者を連れて帰ってきた事と報酬を用意して欲しいと告げる。

 当主はラグシアに前任の信頼を寄せているため、頷くと二人の睨み合いが終わるまで時間がかかると思ったようで冒険者と直接話をしようと思ったのかユフィに頭を下げると書斎を出て行ってしまう。


「冒険者を雇ったんですか?」

「そうみたいです。とりあえずはこの間の田畑の病気の原因を調べるため……みたいですけど」

「みたいですか? リズは不満そうですね」


 取り残されたユフィはラグシアが冒険者を雇い入れた事に関心を持っているようで首を捻った。

 リズは調査について行けなかったためか、不満そうに頬を膨らませており、彼女の様子にユフィは苦笑いを浮かべる。


「不満ですよ。私だって一緒に行きたいって言ったのに置いてけぼりだったし」

「流石にリズを一緒に連れて行くわけにはいかないでしょう」

「この間の野盗事件の時は一緒に行けたのに?」

「あの時とは状況が違いますよ!? ラ、ラグシア、突然、どうしたんでか?」


 リズはラグシアについて行きたかったとテーブルを叩くがユフィにも彼女を連れて行く事は危険だと判断しているため、彼女を説得しようとするがリズは納得できないようで手を止める事はない。

 ユフィは下手に話を振ってしまったと思ったようで困ったように笑うがリズは止まる事はなく、ラグシアへと助けを求めるが彼はデュメルと睨み合いを続けたままである。

 その様子にユフィはどうするべきかと頭を抱えた時、ラグシアの拳がデュメルに向かって放たれた。

 デュメルはその拳を避ける事無く、顔面で受けるが非力なラグシアと身体を鍛えているデュメルにはダメージなど通るわけもなく、デュメルは平然としているがラグシアがそのような行動に移るとは思っていなかったユフィは驚きの声を上げる。


「何度も言わせるな。私は兄上と違ってヒマではない!! こんなところで余計な事をしているヒマがあるなら、王城に戻り、自分のなすべき事をしたらどうですか? これは私がやるべき事であって、兄上が気にする事ではありません」

「……怒らせちゃった。お義姉様、お義兄様の方はよろしくお願いしますね」

「デュメル、もう少し、ラグシアの話を聞き入れてください。怒らせてどうするんですか?」

「あいつは頭に血が上りやすくてダメだな」


 ラグシアは話にならないと言いたいようでデュメルを怒鳴りつけると書斎を出て行ってしまう。

 その姿にユフィはどうして良いのかわからずにオロオロとしているがリズは苦笑いを浮かべるとデュメルを彼女に押し付けてラグシアを追いかけて行く。

 ユフィはデュメルを非難するが彼は悪いとも思っていないようでため息を吐いている。


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