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愚兄が魔王を継ぎました。~ツンデレ魔導士奮闘記~  作者: まあ
第二部 ラグシア、領地を回る。
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第三四話

「……何するのよ。女の子の頭を叩くなんて、それでも騎士?」

「斬られなかっただけでもありがたく思え」

「始めてもよろしいでしょうか?」


 ゼノンはどうしても怒りが治まらなかったようでリズの頭に拳を振り下ろした。

 その痛みに彼女は涙目で抗議するが、ゼノンはまだ怒りが治まらないようで不機嫌そうに言う。

 二人の様子にアルはどうして良いのかわからずに困り顔をしているが、ラグシアは先に進みたいようでため息を吐いて聞く。


「……この娘は貴様の管轄だろう。黙らせる事はできないのか?」

「無理だな。ラグシアにリズを静かにさせる甲斐性はない」

「それはそうか……」


 リズが元々、シーリング家と同格のラミリーズ家の令嬢であった事を知らないゼノンは彼女をただの下女だと考えており、主人であるラグシアを睨み付ける。

 幼い頃からの二人の関係性を知っているデュメルは今更無理だと首を横に振るとゼノンは野盗討伐の時に自分勝手に動き回っていた彼女の姿を思い出してしまったようで大きく肩を落とす。


「……納得されるのも頭に来るのですが」

「気にするな。それより、早く答えを教えてくれ。お前の話は長い」

「……」


 リズに振り回されている自覚も確かにあるのだが、納得される事もそれはそれで納得がいかないようでラグシアは眉間に深いしわを寄せた。

 その様子にデュメルは苦笑いを浮かべた後、簡潔に話を進めるように言う。

 元々、話しに割り込んできたのはデュメルとゼノンであり、ラグシアの眉間のしわはさらに深くなっており、アルは胃が痛くなってきたのか腹をさすっている。


「ラグシア様、気にしないで行きましょう。きっと、身体に良くないです」

「……知っている」


 アルはいたたまれなくなってきたのか、デュメルを無視して話を進めて欲しいと頼む。

 ラグシアは彼の言葉に頷くものの、怒りが治まらないのか深呼吸をしている。


「それでは話に戻りましょう」


 しばらくすると怒りが治まったのか、ラグシアが口を開く。

 ゼノンとアルは表情を引き締めるが、デュメルとリズは長い話について行けないようでテーブルに身体を預けている。

 その様子に再び、ラグシアのこめかみに青筋が浮かぶが何とか平静を務めている。


「戦争を長引かせたい者がいるのは理解していただけましたか?」

「ああ、だが、それを見分ける方法がないのが困るのではないか?」

「どうして、無視するの?」


 すでにラグシアとゼノンの間ではリズとデュメルを無視する方向で決まったようで真剣な表情をしているが、リズは何か考え付いたようで手を上げた。

 しかし、二人は何度も話を折られている事もあり、無視されるため、彼女は不満げに頬を膨らませるとラグシアの腕を引っ張る。


「……黙っていろ」

「ねえねえ、この人だって出世欲強いじゃない。戦争を長引かせたい側じゃないの?」

「流石に王城の中で剣を抜くのは騎士としてどうかと思うぞ」


 うっとうしくなったラグシアが反応してしまうとリズはゼノンを指差して言う。

 彼女の言葉にゼノンの怒りには再び、火が点き、彼は腰に差していた剣へと手を伸ばす。

 彼の手が剣の柄を握った瞬間、デュメルからは強力な殺気のようなものが飛び、ゼノンは手が止まる。


「リズ、ゼノンやリアは誇り高いクルーゼル家の人間だ。あまり失礼な事を言うんじゃない」

「でも」

「リズ」

「わかりました」


 デュメルの様子にゼノンは威圧されてしまったのか息を飲むがデュメルは気にする事無く、リズに声をかけた。

 先日からのゼノンの行動にリズは不信感を抱いているようではっきりさせたいのか追及するべきだと言う。

 その様子にデュメルは大きく肩を落とすとリズは何かを感じ取ったようで姿勢を正して座り直す。

 ゼノンは威圧されてしまった事をなかった事にするように不機嫌そうな表情で両手の前で手を組む。


「ラグシア、さっきも言ったが、結論だけ話してくれないか? もう、リズも聞いていられるのが限界だからな」

「……限界なのは兄上でしょう」


 二人の間は険悪にも見えるが一先ずは騒ぎが治まったため、デュメルは話に戻るように促す。

 それはリズが飽きたと言っているが、誰よりも彼が飽きているのはわかり、ラグシアは大きく肩を落とした。


「結論から言えば、誰がこの病気を広めたか見つけなければいけません。アル殿の話を信じれば、あの村に私達以外に異国の者が足を踏み入れた事はありません」

「何もわかっていないと言う事か? そうなると警備を強化すると言っても何もできないな」

「そうでもあり……なんでもありません」


 話の細かい事はゼノンと後で行えば良いと割り切ったのか、ラグシアはため息を吐く。

 彼の言葉で何もわかっていないと考えたようでデュメルは難しい表情で首を捻っている。

 ラグシアには田畑の病気をまき散らした人間を見つける手立てに行きついているようであるがこの場で話しても面倒になる事に気づき、言葉を飲み込む。

 しかし、言葉を飲み込んだ姿はデュメルにしっかりと見られており、デュメルは話すように目で促す。

 自分の失態にラグシアは舌打ちをするとリズは早くしろと言いたいのか彼の肩を叩く。


「病気をまき散らした人間はたぶん、先日まであの周辺を統治していた者の手勢でしょう」

「なぜだ? 自分の領地に病気を流行らせてしまえば税収は見込めないではないか。対立している者と考えるのが普通ではないか?」

「そうです。それで俺達がどれだけ困った事か」

「ラグシア、どういう事?」


 ラグシアはしぶしぶだが話し始めるが、彼が予想している人物は通常とは逆であり、ゼノンはバカな事を言うなと肩を落とした。

 その言葉にアルは同調するように頷くがリズはラグシアの考えが気になるようで続きを話すように急かす。


「対立している者が広めたのであればすぐに対応したでしょう。それなのに村人に野盗になるように勧める当たり、何かの考えの元で動いていたと考えるのが妥当だと思います」

「……野盗騒ぎも計算の内と言う事か?」

「はい。それも協力者はまだ政務を取り仕切っているなかにいると考えられます」


 ラグシアの考えにも一理あると考えたのかゼノンは舌打ちをするとラグシアは今回の野盗騒ぎはまだ終わっていないと言う。


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