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第二七話

「襲撃者達を逃がすな!! 全員、捕縛しろ!!」

「リ、リア? ラ、ラグシア、どういう事? リアがこの村を襲っているの?」


 何が起きたかわからないで慌てているリズの耳に聞きなれたリアの声が響く。

 それは村を襲っている襲撃者へと向けた攻撃命令であるが慌てている彼女にはリアの攻撃命令が村への襲撃だと思ったようでラグシアの服を引っ張る。


「……逆だ」

「逆?」

「ラグシア殿、リズ、無事ですか?」


 ラグシアは使用していた魔法の詠唱を取りやめると青い光の柱は消え去ってしまう。

 光の柱が消えると先ほどまで雷と雨が嘘のように止んでしまい、月明かりが周囲を照らしだす。

魔法の効果が切れてしまってもラグシアはまだやる事があるようで一言だけ発するとすぐに新たな魔法の詠唱に取り掛かる。

 意味がわからずにリズが眉間にしわを寄せた時、一頭の馬が二人に駆け寄ってくる。

 馬上にはリズが乗っており、二人を見つける安心したようで胸をなで下ろすと彼女に続いて数名の兵士が二人に向かって駆け出してくる。


「リア、どういう事? お義兄様は?」

「デュメル様は私に馬を預けて兵達とともに襲撃者を捕らえに行ってしまわれました」


 リアの顔を見て、リズは何があったのかと詰め寄った。

 彼女はデュメルとともにガーランド王から預かった兵を率いており、この村に来るはずではない。

 リズの様子にリアは困ったように笑うと現在、この村を襲っている者達を捕らえるために動いていると言う。


「……指揮を執らないといけないんじゃないの?」

「馬上で指揮など執れないと言って私に丸投げして行ってしまいました」

「……うん。お義兄様はいつも通りだね」


 兵の指揮権はデュメルにあるにも関わらず、指揮を執る彼の姿は見つからない。

 デュメルは指揮を執るよりは前線で戦っているのが性に合っていると言ってリアに丸投げしてしまったようである。

 話を聞き、リズは納得してしまったようで大きく肩を落とす。

 リズ達、野盗討伐の兵士が現れた事で村を襲っていた者達は完全に及び腰になってしまっている物の、月明かりだけでは明るさが足りないようで襲撃者を捕縛までできていない。


「……」

「明るくなりましたね?」

「こんな事、できたんだ!? ラグシア、大丈夫」


 その時、ラグシアの魔法が完成したようで村の周辺にいくつかの光の玉が浮かび上がる。

 光の玉は光りを放ち、月明かりだけが照らしていた闇を振り払って行く。

 その様子に驚きを上げるリズとリアだが、彼女達の後ろでラグシアは多くの魔法で魔力の底が付いたのか膝をついてしまう。

 リズはすぐに気が付き彼に駆け寄るが、ラグシアは心配ないと言いたいのか手で彼女の行動を制止する。


「ラグシア殿の魔法で終局に向かっていますね」

「降参すれば良いのにね」

「そう言うわけにも行かないのだろう。いろいろと都合があるようだからな」


 リズはラグシアの制止など聞く気もなく、彼に肩を貸すがラグシアはこの状況が恥ずかしいのかふて腐れたような表情をしている。

 二人の様子にリアは苦笑いを浮かべると襲撃者を捕縛した兵士達が村に戻ってきている姿が目に映り出す。

 捕縛者が出ても襲撃者達は何とか応戦をしており、リズは降伏すれば身の安全が保証されるのではと首を捻った。

 この村が野盗と関わっていた事がガーランド王に知られて困る者達に逃げ道はなく、この場で決着を付けなければいけない者達は命がけのため、被害を出さずに捕縛する事は難しい。

 ラグシアはそれを考慮しているようだが、すでに自分がやるべき事は終わったと言いたいようでどこか他人事のように言うとリズから離れて村の中心に向かって歩き出すがその足取りはふらふらとしており、危なっかしく見える。


「ど、どこに行くの?」

「……眺めていても、何も変わらないんだ。この場にいるよりはやる事があるだろう。あの愚兄(バカ)の事だ。上手くやるだろう」

「ま、待ってよ……」

「あまり無茶はしないでくださいよ」


 彼の様子を見てリズは慌てるがラグシアは戦闘での指揮能力の高さだけは信頼しているようで任せるつもりのようである。

 ラグシアを一人にしておくわけにはいかないと考えたリズはリアへと視線を向けると彼女はそばに居た兵士に二人の護衛を任せて、戦況を見定めるように視線を移す。


「ラグシア、私が肩貸すのに」

「……黙っていろ」


 リアからつけられた兵士はラグシアの足取りに放って置けなくなったようで彼に肩を貸して歩く。

 ラグシアは兵士の肩を借りる事には抵抗はないようで素直に肩を借りるとリズは不満そうに口を尖らせた。

 彼女の相手をすると疲れると言いたいのかラグシアは素気なく答えると二人の様子に兵士は苦笑いを浮かべている。

 兵士の視線に気が付いたラグシアは申し訳ないと言いたいのか小さく頭を下げ、兵士は気にする必要はないと笑った。


「それで、ラグシア、何をするつもり?」

「人手が足りないだろう。魔力は底をついているからな。リズ、村長、馬車のなかから薬や包帯を持ってきて貰えないか。後は石を投げるようなヒマがあるなら手伝え」


 その時、村人達が集められている場所が見え、その近くには捕縛された襲撃者や戦闘でケガをした兵士達がキズの治療を始めている。

 村人達は村を救ってくれた兵士達には好意的で治療の手伝いを進んでしていてくれているが捕縛された襲撃者達には冷たい視線を向けており、中には石を投げる者の姿も見える。

 その様子にリズは表情を曇らせるが、ラグシアは兵士にここで待っているように言うと石が飛び交う場所に向かって歩き出す。

 ラグシアを見ても彼の事を知らない村人達は石を投げようとするが村長が気づき、止めるように声を上げる。

 村長の声に村人達は不満げだが、ラグシアは気にする事無く、襲撃者達のそばに行くと傷の様子を眺めると傷の手当てを始めるつもりのようで指示を飛ばす。

 彼の指示にリズはすぐに馬車に向かって行くが、村長は村民達にラグシアの指示を伝えるが村人達は自分達の村を焼こうとしていた人間の治療など手伝えないと首を振るだけではなく、ラグシアに罵詈雑言を浴びせる。

 その様子にラグシアは言っても無駄だと判断したようで冷たい視線を向けた後、ケガをした者達へと視線を戻す。


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