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愚兄が魔王を継ぎました。~ツンデレ魔導士奮闘記~  作者: まあ
プロローグ ラグシア国を出る。
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第十話

「……ラグシア、今更だけど、お前、変態だな」

「何をわけのわからない事を、それより、兄上、曲がりなりにもガーランド王の後継者なら、この書斎の書物くらい頭に入れていただきたい」


 リズと王都を見て回ったラグシアは使用人達からの頼まれた買い物を済ませる。

 今朝、ユフィとユミルを押し付けた事もあるため、リズにしっかりとわがままを言われており、屋敷に帰ってきた時にはリズは上機嫌であった。

 リズの様子に使用人達は二人の様子を見て、ニヤニヤと笑っており、耐え切れなくなったラグシアは書斎へと逃げ込んでしまう。


 書斎に逃げ込んだラグシアはガーランド王が治める国の事が書かれた資料を引っ張り出すと自分の目で見て、耳で聞いた物をまとめて行く。

 まとめられて行くものにはラグシアの主観だけではなく、一歩引いて冷静に見た考え、祖国で行われていた事で利用できそうな物事も書き込まれている。

 ラグシアが書斎に入り込んでからかなりの時間が過ぎた頃、デュメルが書斎のドアを叩いた。


 兄の訪問にラグシアは頭を下げるが、相手をする気もないようで手を止める事はない。

 その様子にデュメルはため息を吐くと机の上に置かれていた本を一冊手に取った。

 内容はデュメルには理解のできない物が多く、眉間にしわを寄せると小さな頃から嬉々として書物を読み込んでいたラグシアを変態と言う。

 変態と言われては我慢ならないようでラグシアは書物から視線を上げてデュメルを睨み付けると嫌味事を返す。


「そう言うのはお前に任せると言っただろ」

「……冗談はそれくらいにしてください。仮に任せられても常時、側に控えていられるわけではないでしょう。その時にバカがばれては危険が及びます」

「お前、兄に対してバカって」


 デュメルはラグシアの能力を高く買っているため、ラグシアに難しい事は任せると言う。

 ラグシアもやれる事はやるつもりであっても常時、デュメルの側にいるわけにはいかない。

 ガーランド王に臣従するとは決めたが、それを良く思っていない者は多くいる事は容易に想像がつく。

 それについて何も考えていない兄の姿にラグシアは呆れたように言うが、デュメルは口の悪い弟の姿にため息を吐いた。


「バカはバカだろう。義姉上は良くこのようなバカについて行く気になったものだ」

「それを言ったら、リズは良くこんな口の悪い男について行く気になったものだ。ここに来る前にリズにあったがデートはずいぶんと楽しかったようだな」

「……」


 ラグシアは相手をする気はないと言いたいようで追い払うように手を払うとユフィの身を案じて言う。

 その言葉に対してデュメルは負けじとリズとの事を言うとラグシアの手は止まり、兄を睨み付けた。

 弟の表情の変化にデュメルは口元を緩ませると表情の変化を見られた事にラグシアの表情は歪む。


「……それで兄上は政務を放り投げてこのようなところに何かご用ですか? ガーランド王の後継者なる者、忙しいでしょう」

「嫌味を言わないでいられないのか。義父上から、お前を王城の書庫に案内するようにと言われて迎えに来たんだ」

「王城の書庫ですか? いきなり、私が王城の書庫に立ち入って良いのでしょうか?」


 兄に痛いところを突かれてしまった事が面白くないラグシアはデュメルとの会話を早く終わらせたいようでもう一度、追い払うように手を払うと本題に移るように言う。

 弟の口からは自分に対する嫌味しか聞こえず、デュメルは大きく肩を落とした後、ガーランド王からの指示で来たと話す。

 ガーランド王の考えとは言え、信頼関係も築けているか怪しいラグシアをいきなり王城のそれも過去の記録が蓄積された書庫に案内するなどラグシアには考えられないようで驚きの声を上げた。

 しかし、驚きの声とは裏腹にその表情は新たな知識を得る事ができる絶好の機会に興奮を覚えているようで完全に緩んでいる。


「……これで、どうして自分は変態ではないと言えるんだ?」

「この国の書庫か。それならば、祖国に記されている物がどれだけ性格が比較する必要があるな。そうなるといくつか持って行った方が良いか。都合が良い事に荷物持ちがいる。積載量も増えるとなると……」


 書物などから知識を得る事に向いていないデュメルはラグシアが興奮している理由が理解できず、眉間に深いしわを寄せた。

 兄の反応などすでに耳に入っていないのかラグシアはぶつぶつとつぶやきながら考えをまとめているようで書斎にある本棚から、書物を取り出して行く。

 目の前で積み上げられて行く書物の量にデュメルはイヤな予感がしたようで逃げ出そうとするが、ラグシアは兄の行動を予測していたようでぶつぶつとつぶやきながら書斎のドアを指差した。

 指先は小さな光を帯びた後、その光はドアに向かって飛んで行く。

 光はデュメルがドアノブをつかむより先にドアに溶け込んで行き、デュメルはドアノブを回すがドアは開かない。

 何が起きたか理解できず、デュメルはがんがんとドアを叩くがドアはびくともせず、デュメルは無駄だと理解したようでゆっくりと振り返った。


「ラグシア、お前、魔法が使えたのか?」

「それが何か?」

「なぜ、黙っていた?」


 魔法をラグシアが使った事にデュメルは問いただすように聞く。

 ラグシアはその言葉などどうでも良さそうに書物を積み重ねており、積み重ねられている書物の量はすでにラグシアの伸長を超えるものが四つほど出来上がっている。

 その様子にデュメルの顔は引きつるが、それよりも先に聞かなければいかないのは魔法の事であり、顔を引きつらせたまま、魔法の事を黙っていた理由を聞く。


「……誰かに話す必要性を感じませんでしたので、祖国で魔法を使う事がばれてしまえば面倒な事に巻き込まれるのは目に見えていましたから」

「それは確かにそうかも知れないが、だからと言っても家族にくらい話しておいても良いと思うんだ」

「とりあえず、これくらいで良いでしょう。兄上、書庫までこれを運んでください。後、私が書庫に閉じこもって調べ事をする許可も取れるようにガーランド王に申請をお願いいたします。」


 ラグシアは面倒事に巻き込まれないための自衛の手段だと言い切るとデュメルは納得ができないよう眉間にしわを寄せるが魔法の才能を持つ者達の扱いが良い物ばかりではない事も知っているため、責める事はできない。

 その時、ラグシアは運ぶ書物の選別を終えたようで山積みになった書物を指出すがそれは人一人で運べる量ではなく、デュメルは流石に無理だと首を横に振った。


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