浮気調査(六百文字小説)
結婚して二十年。
どうも最近夫の様子がおかしい。
しきりに私を外出させようとする。
それほど男前でもなく、給料もよくない夫が浮気をしているとは考えられない。
しかし、あのソワソワはそうとしか思えないのだ。
一計を案じて、夫の薦めに従う事にし、家のあちこちに盗撮用のカメラを仕込んだ。
もし想像通りであれば、動かぬ証拠が掴めるはずだ。
何も知らない夫は笑顔で送り出してくれた。
夫が見えなくなったのを確認して、時間を潰すためにファミレスに入った。
だが、ご近所の奥さんが入って来たので、気づかれないように出た。
後で夫に喋られるとまずいから。
家の近くでは知人に会う確率が高いので、ちょっと離れた場所まで行った。
夜になり帰宅した。
夫は早かったな、とか言って出迎えてくれた。
翌日、私はビデオを再生し、夫の所業を確認した。
言葉を失った。
夫はその日一日、黒い影と過ごしていたのだ。
影は夫の隣に座って一緒にテレビを見て食事をし、風呂に入った後、ベッドで睦み合ったりもした。
私は画像が悪いのかと思い、何度も再生し直したり微調整したが、影は影のままだった。
夫は正体不明の何かと浮気していたのだ。
幽霊に取り憑かれているのかも知れない。
だが、私にはどうする事もできない。
そうだ。お寺のご住職に相談しよう。
そう思った時だった。
「貴女だったのね、私達の楽しい時間を覗き見していたのは」
背後で女の声がして、左の肩に氷のように冷たい手が載せられた。