エクソシスト
大分時間が飛び飛びで、分かりにくかったらすいません!
僕はまだ歩いていた。途方も無い死への旅を。
どの位の月日が流れたんだろうか。僕は少し成長していた。髪も程よく伸び、少年の時のみにある独特の柔らかさが生まれた。細く小さい体は、まだまだ少年のままだ。硬く閉ざした口は僕の心を表してるみたいだった。
身体的には周りの人となにも違いはなかった。でも、僕には人とは違った部分があった。それは世にも珍しい白い瞳。悲しみを携えた白き真珠は生まれたときの輝きを失い、鈍い光を放っていた。
この目は僕に人が見えないものを見せてきた。それは死者や穢れといった、この世に残る魂だ。それは生前のままの姿であったり、醜い悪魔になれ果てているものもいた。この目のお陰で、僕は『死』というものに直面してきたんだ。
その結果、僕は心が震えなくなった。
違いを嫌う人々は僕を恐れ、教会という箱庭に追いやった。そこで僕は知ったことがある。それは感情をコントロールするということだった。もとから感情が無いに等しい僕だったが、相手に合わせなければまともな人生すら歩めない。だから感情を学び、真似をして仮面を手に入れた。これで僕はやっと普通の人間として見られるようになった。そこで僕は数年の少年期を過ごした。
それから数年が過ぎ、世界は混乱と混沌の波に飲み込まれていた。混乱の最中にあった世界は穢れきった。そこで人々は神に頼るようになる。その過程においてエクソシストなるものが普及し始めた。ある者はこれを神の使いとして崇め、またある者は魔を払うものとして扱った。
僕は教会の教え、そして世界の流れの二つが手伝ってエクソシストになった。自分で望んだ訳でも、誰かに望まれた訳でもない。ただ川に流れる木の葉のように、世界の流れに流されただけだ。
他のエクソシストは見えてもいないのに、見えているふりをして役に入っていた。くだらない。
僕はまた一人歩き始めた。この場に留まる意味もないからだ。
この教会を出る時、僕は更に成長していた。色づいた黒い髪は以前より伸びてしっかりとしたものになり、体も大きくなった。線の細い体も筋肉がついて青年に近づいた。身長もそれなりに伸びて高くなっている。閉ざした口は相変わらずだ。自分で言うのもなんだが、割とルックスはいいらしい。そんなことは気にしたことなどないが。
エクソシストは食に困らない。そう気が付いたのは歩き出してすぐのことだった。歩いていれば、何かしら食べ物を分け与えてくる狂信者たちがいたお陰だったからだ。
放浪しながら僕は色々な霊たちに会った。そこで何度も彼らを成仏させてきた。昔いたエクソシストの組織の人たちのように、力付くで浄化するような真似はしなかった。いや、出来なかったと言ってもいい。僕は見えるだけで、祓う力なんて持っていないんだ。いつだって何も出来ずに見送ることしかできない。自分の無力さと、逝ってしまった後の虚しさだけがこの目に、手にいつまでも残っている。
彼らは知っているのだろうか。霊を成仏させる方法というものを。それは実に簡単で、ひどく悲しいものだということを。
僕はまた歩いている。途方も無い死への旅路を。
今ある先になにがあるのだろうか。……なにもない。そもそも先なんてあるのだろうか。
そんな時、僕は出会った。同じ死を抱える少女に。
彼女は道の先にある小岩の上に儚げに座っていた。ただ一人、時を止めたように……。