自由へと・・・・・・・・・
ルパン三世とハンニバルの映画を見て思い付きました。
国盗り物語とは別の異世界戦記物として投稿する予定ですが、先ずはパイロット・フィルム版的な感じで出します。
夜明けが近いな・・・・・・
俺は目の前に立てた十字の鍔を持つ簡素な剣の前に立ちながら眼を細めた。
いま居る場所は海岸の近くにある丘。
ここなら海を一望できる。
そしてここは彼女と初めて会った場所だ。
だから、ここが良いだろうと思い埋めたんだ。
出来るなら・・・国葬にして欲しかった。
こいつは・・・この女は誰よりも国を愛し忠誠を誓い勝ち目の無い戦場に出陣したのだから。
片手では数え切れないほど。
しかも正規軍を率いて、ではない。
俺らを含めた傭兵を率いて戦った。
この国以外でも---俺らが“居た”世界でもそうだが正規ではない者は蔑まされる傾向がある。
普通に考えればそうだ。
俺らは金で雇われた者達。
金さえ払えば俺達は何処へでも行き顔も名前も知らない野郎を殺す。
しかし、貰える金は本の僅か。
所謂“端金”だ。
そんな金の為に人を殺すのか?
頭が出来あがっている、とよく言われる。
その通り。
俺達は頭が出来あがっているのさ。
金より戦う事が大好きな野郎どもだ。
そしてそんな端金が俺らにとっては自分の命よりまして他人の命より大切なのさ。
言わば俺たちのプライドだ。
そんな俺らを率いて彼女は祖国の為に戦った。
だが、本国の奴等は彼女に碌な支援もしてくれなかった。
寧ろ彼女を厄介者として蔑んだ。
祖国を守る為に立ち上がり私財を投げ打ってまで俺らを養い続けた彼女を蔑んだ挙句・・・敵に渡した。
誰のお陰で滅亡に追いやられた祖国が無事だと思っている・・・・・・
全ては彼女が・・・たった一人で成し遂げた事だ、というのに。
それなのに彼女が命がけで守り通した祖国ではそんな彼女の事など最初から居なかったとばかりに忘れ去り宴会を開いている。
俺達も誘われた。
彼女が忠誠を誓い守りたかった家族に。
しかし、断らせてもらった。
彼女にとっては自分の命より大切な家族だろうが、俺達から見れば彼女を見殺しにしたただの腑抜けだ。
しかも、“あの小娘”は彼女が死んで清々していると・・・聞いた。
『あの女が死んでくれて清々したわ。戦ばかりやって祖国を顧みないんだもの。でも、お陰で祖国は無事だしあの方も無事。これであの方は私の夫になるわ』
思い出すだけでも胸糞悪い。
俺はてめぇみたいな温室育ちの小便臭い餓鬼なんか要らない。
俺が何よりも欲したのは・・・・・・・
「あんただったんだよ」
剣は何も語らない。
ただ無言で俺の前に立ち続けている。
俺は左ポケットから手を入れてネックレスを取り出した。
銀の鎖で繋がられたのは・・・サファイア。
・・・の原石だ。
しかも小さいから値打ちなど高が知れている。
そんな物だが、彼女はそれを後生大事に持ち最後の最後まで手放すのを惜しんでいた。
『これ初めて父に貰った物なの』
酒の席で彼女が俺に言った言葉。
あの狸親父から渡されたのがこんな物とは驚いた。
彼女の身分から言えばこれより豪華な物を貰えた---プレゼントされた筈なのに。
『いまこんな物と思ったでしょ?』
鋭い勘で俺の心を読み取った彼女は歳相応の怒った顔を浮かべる。
そうだ・・・その顔だよ。
あんた何時もムスッとした顔つきだ。
まぁ、役職が役職だからそれなりの顔をしないと駄目なのは解かる。
しかしな・・・こんな時はその顔で居てくれ。
出来るなら笑顔をみせてくれ。
あんたの笑顔は俺にとっては100万ドルの値打ちがある。
あんたの為になら死ねるぜ。
あんたみたいな“良い女”の為、ならな・・・・・・・
俺はネックレスを剣の握り手から掛けてやった。
彼女の首へ掛けるようにして優しく。
風が吹いてネックレスが揺れる・・・・・
彼女の髪が揺れるように。
「・・・自由になりたかった、か」
あんた言ったよな?
『私も自由になりたいわ。風のように・・・鳥のように・・・・・・・・・・』
自由になって何処へでも行きたい、と彼女は二人切りの時俺に言った。
それに対して俺はこう言った。
『自由、か・・・確かに良い事だ。だが、自由には自由で大変なんだぜ?』
何が?と問い掛ける彼女に俺は答え続ける。
『自由を維持するにはやらなくてはならない事もあるんだ。それに何もかも自分でやらないといけないんだぜ?』
それでも自由を求めるのか?と今度は俺が問い掛ける。
『えぇ。自由になりたいの。自由になれば・・・貴方達と同じ、でしょ?』
彼女は縛られていた。
祖国という名の鎖に。
祖国を愛するが故に見捨てられず縛られている。
俺らは違う。
祖国なんてこんな稼業をやるようになってから捨てた。
だから、金が俺らにとっては祖国であり忠誠でありプライドなんだよ。
そんな俺らを彼女は羨ましかったんだ。
それでも最後は・・・・・・・・・・
『やっと・・・自由になれた、わね』
血を吐きながら笑みを浮かべる彼女に俺は頷いた。
あぁ・・・あんたは自由になれたのさ。
自由になったんだよ。
もう誰にも縛られない。
自由に何処へでも行けるんだ。
俺らと同じになったのさ・・・姫さん。
そして彼女は息絶えた。
「・・・大尉。出発の準備が出来ました」
後ろから部下が声を掛けてくる。
「・・・あぁ」
俺は剣に背を向けた。
『じゃあな・・・姫。今度は俺らみたいに自由人同士で会おう』
そうすればムスッとした笑みではなく・・・100万ドルの笑顔を見せてくれよ?
まぁ・・・俺だけに出来るなら見せてくれ。
部下達もあんたの笑顔を見たらそれ以上の値打ちを掛けて激しい抗争が繰り広げられっちまうからな。
俺が部下の待つ場所に行くと全員、出発準備が出来ていた。
「何処へ行きます?」
部下の一人が俺に問い掛けてくる。
「何処へ?はっん・・・・んなものは風にでも訊け」
俺の言葉に部下達はゲラゲラと笑い出す。
その時が風が吹いた。
「よぉし。風が吹いた方角へ行くぞ」
まだ行った事が無い未開の地だが・・・これこそ自由人の特権。
何処へ行こうと自由なのだから。
「てめぇら行くぞ!!」
『ヤ・ボール。ヘル・コマンダー!!』
俺たちは旅立った。
船に揺られながら俺は空を何気なく見上げた。
一羽の白い鳥がこちらを追い掛けてくる。
「・・・姫さんか?」
白い鳥は俺が乗る船に追い付くと速度を同じにして離れず付いて来る。
まるで姫さんだな。
自分より年上で場数も上な俺らに舐められないよう必死になって同格に見られるようにしていた。
姫さんの化身か?
それとも姫さんの守り神か?
どちらにせよ・・・・・・・・
「付いて来な。何処までも」
何処までも付いて来い。
死が二人を別ち合うまで・・・・・・・・




