―Ⅱ― 同族殺しの短剣
剣、剣、剣。
道行く人々の腰に背に映る剣。
異様な光景だった。六十年前、外国から無理やり戦争をしないと誓わされた平和主義のこの国で、朝目が覚めれば全員剣を持ち歩いているなんて。
そのくせ、まるで今までそれが当たり前だったかのように平然と歩き去っていく人々。重たそうな大剣を平然と背負い、早く家に帰れると浮き足立つサラリーマンを大通りの四つ角、丁度対角線の向こうに見つけ、在人は毒気を抜かれた。
夕日は、今日最後の紫外線を見事に肌に押し付け、焼いてくる。
そのくせ、サラリーマンの剣は全くその光で赤く染まる気配を見せても、光を全く反射してこない。灰色の冷たい、むき出しにされた大剣は、主の歩みに合わせて小さく揺れながら無機物の証を伝えてくるだけ。
どの人のもそうだった。
「……ないわ、これ……」
いったいどこの映画のロケなのだろう。どうして昨日学校に行ったのにその話を受け取らなかったんだろう。もしかしたら聞いてないだけかもしれないけど。
思わず足がどんどんと速くなる。ほぼ一本道に近い帰路を、わざわざ路地裏を使ってどんどんショートカットしていく在人は、歩く速さよりも心臓の鼓動の方が速く感じられる。
早く家に帰ろう。香奈に連絡を取って確認しよう。家に行けば翔矢だって――
……馬鹿にされそう……。
もしあいつも帯剣してて、本当にそれが当たり前であるのなら。
またあいつに馬鹿にされて、あいつばっかり祭り上げられる。
「……刻名の剣……か……」
名前が変わっていたなら。
そうすれば、あたしはどれだけ女の子らしくて、あいつなんかと比べられずに生きていけたんだろう……。
「ただいま……翔矢?」
野球でもしに行ったのだろうか。靴がなかった。
四人住まいであるも、人がよく来るからとやや広めに作られた玄関から二階に上がり。荷物を置いて、今日出された宿題を確認して溜息をつく。要領よくこなすのも、さすがに中学二年ともなると難しくなってきた。小学校の頃なら、沢山の趣味の間でも楽しくやれていたのに。
何の部活にも入らずにいるというのに、面倒な性格だと自分でも思いつつ。けれど昨日香奈から借りたゲームを思い出し、顔が自然と笑みを貼り付ける。
――感情を作るのですら、慣れているのだと心の中で実感した。
今日あれだけ剣を見てきたというのに、また剣を見ようという気は、正直起きない。
車通りが少ない家の前の路地から車の音が聞こえてきて、重たいものが砂利を踏みしめている音が聞こえて来る。思わずぽかんとして、在人は自分の部屋のベランダから身を乗り出して驚く。
「あっれ、父さん今日早番だったのかぁ……」
八月朔日家の駐車場に止まった普通乗用車。あの形状で紺色は、うちの車しかない。
階下に降りて緑茶を注いでいると、父が大きな息を吐き出しながら入ってきた。
「お帰りー。どったの、今日早かったね」
「ただいま。おー、美味しそうな茶だなー、いいなー」
そう言うと思った。在人は呆れつつも差し出す。
「どーぞ。欲しいならちゃんと欲しいって言いなよ、遠回しじゃなくて」
「随分男らしく育ったなぁ、お前も。サンキュー……ああっ、くれーっ、返してくれー、外暑かったんだー」
「うっさい、男らしく育ったのは誰のおかげだ誰の」
下に弟もいて、頼りない両親がいれば男気出して弟を引っ張っていかないといけなくなるのは当然なのに。むかっ腹が立って、せっかく冷えていたお茶を目の前で全部飲み干してやった。
白髪が徐々に生え始めている上に、前禿が気になりつつある三十代後半がテーブルに突っ伏して泣き声らしきものを上げているのは、在人からすれば正直むさくて鬱陶しい。
「在人がお父さんのお茶とったー……」
「ガキかあんたは。ほら、五秒以内に顔上げないと茶注ぎ直さないよ」
一応次ぎ直してやると、言って一秒もしないうちに顔を上げた。実に自分に正直な反応に、在人は眉間に皺を刻みそうになる。
テーブルにコップを置いてやると、嬉しそうに茶を飲む父。在人は溜息をついて、今日の菓子を探しに行く。
「で、翔はまだ戻ってきてないのか?」
「……さあ。野球か川で釣りでもしてんじゃないの」
「そっか。まあそんな時期だろうなぁ」
どんな時期だっていうわけ?
開けて覗き込んでいた冷蔵庫の扉を握り締め、しかし怒りを押さえ込もうと頑張りながらも何とか扉をいつも通り閉めた。
閉めたその拍子に垣間見たゼリーに、慌ててもう一度開け直す。葡萄の実が入った市販のゼリーを手に取りつつ扉を閉め、スプーンを手にダイニングを出ようとする。
ただ遊び呆けてて、そのくせ学校の成績もよければ、「そんな時期」で済ませられるっての? あたしの時はがみがみ言ってきてたくせに……。
父に手の中の菓子を羨ましそうな目で見られたものの、気づかない振りをしてさっさと部屋に戻った。ゼリーをやるほど親切心に満ち溢れた娘でもないから。
スプーンを咥えてパッケージを開けつつ、自室のパソコンの前に座ると同時に、無料メールサーバーの画面を付ける。案の定、今日休んでいた香奈からメールが届いていた。明日の日程の問い合わせだろう。
まあ、体調崩してるんならなぁ……。本当大丈夫かな、あいつ。あたしと同じぐらい風邪には強いくせに、一度引くと長いからなぁ……。
明日の授業日程のメモを鞄から引き抜きつつ、香奈からのメールを開きつつ。鞄との格闘を終えた在人は何気なく画面を見て、目を見張った。
どうしよ……
件名なし。ただ一文、それだけが書かれてあるだけ。
思わずゼリーを放って下へ駆け下りていく。玄関まで疾走し、靴を蹴るように履いて、扉を開けようとして光が溢れ、すぐに遮られる。
「うわっ!?」
「きゃっ!? ――なっ、なんだ、翔矢じゃん、邪魔っ!」
すぐに押しのけようとして、けれど弟は不服そうに眉尻を上げた。
「邪魔言う前に何か言う事ないのか」
「あー後で言う後で! ちょっと急いでるから!」
「香奈さんなら今日腹痛酷くて病院行って、今家で格ゲーに負けたって玄関先で落ち込んでたけど」
しばし、在人は弟の肩を掴んでスタートダッシュを決め込もうとした態勢のまま固まった。
格ゲーで負けて落ち込んだ?
何、精神的不安とか肉体的病原の関係ゼロ? っていうかそもそも格ゲーってどうよ単にボロ負けして落ち込んだから「どうしよ」って書いてきたわけ!? こんな急いで飛び出したあたしの立場どうなるわけよねえ!? 香奈ここにいないけどねえ!? っていうかそれ以前に
「紛らわしいわ馬鹿!」
「てめえのほうがだろうが!」
弟に盛大に頭を殴られ、むかっ腹が立ってそのまま罵り合いとなってしまった。
「あー、そんな事あったんだ。ごめんねぇ」
「いや、別にいいけどさ……」
結局力技に持ち込みそうになって、父親に止められたとまでは言えなかった。
あの後自室に戻ってゼリーを食べて、やっと思い出した本題を夕食の時に確かめて食欲が失せたのも事実。
けれど香奈に、それも今学校だというのに聞いていいものか。
いきなり市民全員が剣を所持してるんだけどなんて聞くのは、正直いくら親友であっても頭が狂ったと言われるのは嫌だ。
事実香奈も、剣を所持している。あまりにも小さな、ご信用程度の錆付きかけた短剣だけれど。
「――香奈。皆が剣持ってたらどう思う?」
持っている本人に聞くのも野暮だったが、やはり口にせずにはいられなかった。
そうすれば、香奈はほんの少し不思議そうな顔をしてみせる。
「持ってるの?」
「見えてないの!? あんたも持ってんじゃん!」
今度はこちらがぎょっとさせられた。在人は顔を持ち上げ、なおかつ香奈の腰の短剣を指差す。
香奈がぽかんとして自身の腰を見やったのを見て、まどろっこしくてたまらなくなった在人が触ろうとして――
「――えっ?」
手が通り抜けた。
香奈も不思議そうな顔をして、けれど何かに気付いたように表情を変える。
「ねえ、もしかして剣みたいなものが見えてるの? 誰も気付いてなくて」
「え? あ、うん……昨日から」
何度も香奈の腰の短剣に触れようと手を振るも、やはり何度もすり抜けてしまう。諦めて顔を上げると、香奈は苦笑い。
「そっかぁ、ついに超常現象起こっちゃったんだぁ」
「人を奇人扱いしないでくれる?」
「あ、そういう意味じゃなくて。わたしは信じてるよ? 在人嘘付けるほど器用じゃないもん」
半ば的を射ている理由だったが、在人は思わずほっとした。
弟にも両親にも言えなかった事を、香奈はあっさりと信じてくれるなんて。
「それで、在人はその剣、持ってるの?」
「ぜーんぜん。背中だったら見えないけどさ。鏡で確かめようと思ったけど、学校で剣持ってる連中が鏡の前に立つと、剣映らなかったんだよね」
だから最初、剣の亡霊でも憑いているんじゃないかと思ったのだ。だが市民全員ともなれば規模が違う。
そもそも、昔そんなに大量の剣が亡霊となったとしても、この国の人口的に考えて全員分憑くには無理がありすぎる。
香奈が考え事をしているのを見つつ、在人はもう一度自分の背中を振り返った。……やはり見えない。
「剣で連想できるものなーんだ」
「なぞなぞにして自分の思考止めたいだけでしょうよ、あんた。まあいいや」
在人は苦笑して考える。
そもそも剣というのは興りが色々とある。元々は――
「古来から見ていいなら、刀剣類は神器のひとつだったという説、また儀式に用いられる道具などなど。まあ神聖な道具だったかな。あと、剣を持つ者は槍を携える者よりも格が上である事が多かった。これは古代や中世に多い特徴なんだけど、お金がない人が槍って言うイメージは、あながち間違いじゃなかったとも思う。柄の部分は木だし、技術も値段も高い金属を使う必要が少ないしね。騎乗しちゃえば槍のほうが便利で、ランスとかが活躍したんだけど。
話を戻すとしたら――まあ、剣はさっきも言ったとおり、お金がある人――主に貴族が多く携えてたんだよね。中世とかには装飾された、飾り用の剣が登場するぐらいだったから。そしてもうひとつ意味合いがある」
誓い。
映画や物語でもよく聞く、「この剣に誓う」という言葉は、昔から剣が誓いの道具であった事も裏付ける過去からの引用句なのだ。
剣は、剣士たちにとって命を預けるだけでなく、また別の意味合いもあるというのは、剣好きな人間ならなんとなく覚えている内容のはず。
「今のところ挙げられるワードとしては、武器そのもののイメージの『破壊』、過去における英雄がよく携えるとされている所からして『改革』、『正義』、『守護』。王族や貴族が剣を所有するという事も考えて『秩序』、『格』。あとさっきの『誓い』、『意志』って所かな……」
今思う。
武器辞典持っててよかった……ついでに全部の項目に目を通しててよかった……。
在人が並べた単語を整理しようとする香奈。ノートに走り書きしたそれを改めて在人も見下ろし、じっと考えてみる。
剣の正体がいったいなんなのか。並べたワードから近しいものは浮かび上がるのか。
イメージマップを頭の中で展開させつつ、在人はふと思う。
「そういえばさ、大抵の連中は刃が潰れてたり、ぼろぼろだったりしてたよ。何人かは真剣じゃんって思えるぐらい刃が研ぎ澄まされてたり、手入れが行き届いてたけど。珍しい剣もあったかな。水晶みたいな刀身の奴」
新谷祈の短剣を思い出し、思わず溜息が出る。
あんなに綺麗な剣、学校でもほとんどいなかった。
「――在人にしか見えないんだから、幽霊っぽいよね」
「それか精神的なもん? 打たれ強い人には分厚い大剣とか」
「剣、剣ってうるさいんですけど」
鋭い声に、在人は流し目で相手を睨み付けた。
クラスでかなり浮いている、いちゃもん専門家のあだ名で有名な那賀明だ。
すぐさま顔を一瞥して相手を確かめた在人は、視線を紙に戻す。
彼の剣は形状も特徴的だったから覚えている。剣を折るための短剣、ソード・ブレイカー。櫛状の刀身に相手の剣を引っ掛け、てこの原理で折る、同族殺しの武器だ。
「『意志』、『誓い』、『正義』、『守護』、『改革』、『秩序』、『格』、『破壊』……触れてもすり抜ける、大抵の剣はぼろぼろ……謎かけにしては漠然としすぎでしょこれ」
「うるさいって言ってるのが聞こえないわけ? ついに頭だけでなく耳までいかれたのか男女」
「人によっては傷を持っていても綺麗なものもある、代表的な剣は長剣、大剣、短剣系。また特殊加工の刀剣か……」
全ての悪口を無視。どうせもうすぐ教師が来る。
しばらく無視すれば相手も諦めるだろう。香奈とも視線で合図して怒りを抑え込ませる。
「香奈、解けそう?」
「在人より頭が悪いわたしに助言求められてもねぇ……でも、何かを例えてる気はするよ。さっき在人が言ったみたいに」
「男女の調子に合わせるってわけ」
「在人が言ったみたいに、精神的なものっていうのもありえると思う」
「聞こえてないのかよ、お前いっつもキモいんだよ、ブス」
素早く視界が横を向き、同族殺しの短剣の持ち主の顎を拳が狙う。
咄嗟に相手も反応できなかったのだろう。周辺でニヤついていた男どもも表情が固まったのがスローモーションで見えた。
アッパーカットを叩き込んだ在人の次の行動は、自分が座っていた椅子を蹴るように押しのけて立ち上がり、頭を揺さぶられて思考が追いつかないらしい相手の腹部に蹴りを見舞う。
女子が悲鳴を上げ、後ろから声が聞こえた気がしたが、在人は構わなかった。
「誰がブスだって?」
机に背中を預けてだらしなくのびて呻くクラスメイトの脛に踵落しを食らわせ、さらに悲鳴を上げさせる。
「その口でいったい誰をブスって言いやがったてめえ……! 黙ってりゃ付け上がりやがって、調子こいてんじゃねーぞ!」
反響していた悲鳴が静かになり、遠くでパタパタと音が聞こえた気がしたが、構わない。
「女相手にブスだのキモいだの言ってよ、てめえ何様だ? 他人の容姿をけなせるほどてめえ偉いのかよ神様かよ?」
那賀の学ランの襟元を掴み、強く揺さぶる。相手の頭が何度も机にぶつかり、痛みに呻いているが気にしない。
「それともなんだ神より偉いってか? 口先だけでかい奴じゃねえのかあんた? 自分の今の顔も変えられねえようなてめえは神より偉くて人の容姿に口出せるほどご大層なご身分かっつってんだよ! その薄きたねえ口から何か言ってみろってんだ、ああ!?」
「やっ、止めて、いいよ、もういいよ在人!」
「八月朔日さん、もう止めなさい!」
両脇をがっちりと押さえられ、けれど在人は振りほどこうと暴れながら那賀の襟元を掴んだまま。
「放せ! 今までこいつの言動抑えられなかったどころかいじめを見て見ないふりしてたあんたらに、何が分かるってんだ!」
「そんなはずはない!」
頭の中でいくつもの炎が揺らめく。
「はずがないだ……? じゃあ現状どうなんだよ説明しろよ! あたしがこいつを殴ったのは気まぐれだって言いたいのか!? 今まであたしがどれだけこいつの言動で腹立てて口論したかあんたらは知らないってか!?」
振り返って見れば、どちらも男性教師だった。戸惑う二人とも知らない教師で、間違いなく自分が切れた原因が何か把握していない。
腹が立つ――!
「こいつが吐くうざったい言葉に何人が傷付いてきた!? こいつのせいで何人が登校拒否起こしたよ聞いたか数えたか!? 今だって香奈をブスだのキモいだの言いやがったのはこいつだぞ! あんたらは現状がこうだからあたしを止めただけで、こいつは全部悪くないって思ってるんだろどうせ!」
「本当なのか?」
尋ねられた香奈は怯えているようで、言葉も出せていないようだ。近くにいた女子が小さく肯定の言葉を出した。
「ほ、本当……ウチ、帰りの準備してたんです、けど……八月朔日さんたち、何かやってたんだけど、それがうるさいって……苛々するって、那賀が……その後八月朔日さんたちの所行って、ブスとかキモいとか……」
「――分かった、後で那賀は」
「こいつだけか、罰するってのは」
怒りが収まらない
「そこに固まってる連中全員、那賀の台詞聞いてオレらににやにやした顔向けてたんだぞ! あいつらは同罪じゃねえってのか、実質声に出さなきゃなんでもいいのかよ!」
「わ、分かったからおちつ――」
視界が一気にぼやけた。
水の音と、頭が急に冷たく冷やされて。在人は開いていた口に大量に入ってきた水に思わず咳き込む。
「あ、ある」
「言いたい事は分かったから、あんたも落ち着きなさい、八月朔日」
クラス担任の先生の声がした。しばらく咳き込んだ後、在人は呆然として力が抜ける。
「切れたい理由も分かった。私だってそんなの聞いたら切れるわね」
「す、住永先生……?」
隣に見えた、見慣れたズボン。思わず見上げようとして、けれど頭にぽんと手を乗せられる。
「あんたが殴りたくてたまらなかった気持ちは分かるよ。でも先に手を出したら、何より手を出せば、それはあんたの心がどれだけ『正義』でも、状況が分からない人の大半はあんたを『悪』に見る。意味、分かるね?」
「け、ど――」
「あんたのその力は、きっとこんな事のために身につけた力じゃないはずでしょう? 自分が嫌いな相手と同じ行為をやらなければ『正義』になるわけじゃない。あんたが『正義』を目指していなくても、人を殴る事も、同じように貶す事も、誰も望んでない。誰もあんたに望んでいないよ。
最初にやるなら、先生があんたにしたようなやり方からにした方が、女が立つわよ?」
……呆れた。
呆れて、もう那賀を殴る気にもなれなくて。力も出なくて、風邪引いても不思議じゃないぐらいびっしょりと体も制服も濡れてしまって。
「……あたしはいいけど……これ、体罰扱いされないの?」
「しなくてあんたの頭がカッカしてるの見るより、マシなんじゃない? 先生一人が停職食らうのと、生徒一人の人生を棒に振らせるのじゃ、どっちが嫌な事かは、先生はっきりしてるわよ」
「……先生おっとこまえー……ご、ごめんなさい女性さながらの美しき道徳精神ですそういうわけでもう一杯注いでこようとするの止めてください、もう頭冷えてるって!」
またも笑顔で水を汲みに行こうとする担任に、思わずズボンを掴んで止めさせた。
同時に心の中で何かが音を立てた気がした。
また
やっちゃった……