暴走超特急・美佳【第9駅】きらきらをさがすお嬢さま
※この作品は暴走超特急です。途中下車はできません。あらかじめご了承ください。
☆第1章:おじょうさまの さがしもの
むかしむかし……ではなく、
いまよりすこしだけ むかしのお話。
とある街に、
どこから見ても“おとぎばなしのお姫さま”みたいな
ひとりの娘がおりました。
名前は―― 須磨子さま。
須磨子さまは、まいにち身だしなみにぬかりありません。
きらきらした宝石、かがやく飾り、
背すじのびる気品、そして素直なこころ。
ところが、ある朝のことです。
クローゼットにかけられた
お気に入りの宝石たちをそっとなでながら、
須磨子さまは小さく首をかしげました。
「……あら? いつもと同じなのに……
なんだか、きょうの“きらきら”は ちがう気がしますわ。」
胸の奥が、ぽつりとさびしいような、
ひかりをさがしているような――
そんな感じがしたのです。
◆ ブランド店へ
「きょうこそ、ほんとうの “きらきら” を見つけに行きましょう。」
そう心に決めると、
須磨子さまはお気に入りのドレスに着がえて、
街いちばんのブランド店へ向かいました。
扉を押すと、店内には光があふれています。
ガラスのショーケースには宝石がずらり。
どれを身につけても美しいのに――
胸の奥のひかりが、すこしも灯らないのです。
「……ちがう。ちがうのですわ。
これでは心が“きゅん”といたしませんもの。」
須磨子さまは静かに決めました。
「わたくし、旅に出ます。
この胸の奥を照らす“ほんとうのきらきら”を、
見つけに行きますわ。」
こうして――
須磨子さまの きらきらの旅 が始まりました。
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☆第2章:しょうにん ミカオとの であい
旅に出てまもなく、須磨子さまは市の立つ町へ。
呼び込みの声、焼き菓子の香り、荷車の音……
にぎやかな雑踏の中心に、
「へいらっしゃい! 安いよ安いよ~!」
ひときわ元気な声の商人がいました。
名は―― 商人ミカオ。
笑顔、手振り、くりくりした目。
どこかで見たことがあるような……?
ミカオは胸を張って商品を差し出します。
「お嬢さん、今日のおすすめはコレっす、いや……コレでい!」
江戸っ子らしい歯切れのよい口調。
須磨子さまは小首をかしげます。
「まぁ……どこかで聞いたような……?」
ミカオはにっと笑って、あっさり名乗りました。
「へへっ、あっしはミカオでい!
旅のお嬢さん、よろしくでさぁ!」
ミカオのブレスレットは太陽の下できらりと光りましたが、
胸の奥のきらきらとは違いました。
「素敵ですけれど……わたくしの光ではないようですわ。」
ミカオは一瞬しょんぼりしたようでしたが、
すぐに明るく笑いました。
「まだ旅はこれからでい!
アンタのきらきら、見つかるに決まってらぁ!」
須磨子さまは微笑みました。
「ご親切にありがとうございます、ミカオさん。」
須磨子さまが去った後。
ミカオは胸を押さえてつぶやきます。
「……あぶね……バレてねぇ……でい!」
須磨子さまは気づいていません。
「まぁ……活気のある商人さんでしたこと。」
旅は続きます。
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☆第3章:東方のくにの みこ ミカリーヌ
森を歩いていると、
しゃらん……と風鈴のような音。
そこに立っていたのは
白と藍の絹衣をまとった 東方の巫女ミカリーヌ。
幻想的な姿に須磨子さまは息をのみます。
ミカリーヌは囁くように言いました。
「あなたの胸には……探しものが宿っています。」
「わたくし、“心のきらきら”など存じませんわ。」
ミカリーヌは風を起こし、花びらを舞わせます。
「きらきらとは、心をあたためる灯り……。」
須磨子さまはますます混乱。
その時。
「ほんと……すてきな旅路でい……」
「まぁ……? 最後、なんと?」
ミカリーヌは袖で口元を隠します。
「気のせいでございます。風の音でい。」
(やっべぇ……“でい”出たぁぁ……!)
しかし須磨子さまは美しい風景に夢中。
ミカリーヌは最後に告げます。
「あなたを照らす灯りは……すぐそばに。」
須磨子さまは意味が分からぬまま旅を続けました。
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☆第4章:しままちで見えた “かげ”
庶民の市場「しままち」。
プチプラのアクセサリーがささやかに光ります。
どれも可愛いのに、
心のきらきらとは少し違う。
その時――
逆光の中に 少女の影 がふわり。
手を差し伸べ、
“こっちへ” といざなうように揺れます。
須磨子さまが近づくと、影はふっと消えました。
しかし胸の奥に
あの影のぬくもりが残った気がします。
「……あの影……どこかで……。」
須磨子さまは影の示す方向へ進むことにしました。
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☆第5章:きし ミカハルト の ちかい
丘の途中、金属音。
銀の鎧の騎士が立っていました。
名は―― 騎士ミカハルト。
……顔は完全に美佳。
「旅は危険でい。気をつけなせぇ。」
須磨子さまは首をかしげます。
「まぁ……どこかで……?」
ミカハルトは焦って咳払い。
「風の音でい!」
(ば、バレてない……よな……!?)
須磨子さまは礼を言って去っていきます。
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☆第6章:たびげいにん ミカーナ の けはい
旅芸人ミカーナは紙吹雪を舞わせ、
須磨子さまを楽しませました。
明るくて軽やかで……
しかし顔は完全に美佳。
須磨子さまが首をかしげるたびに、
ミカーナは大道芸で全力誤魔化し。
(すまっち……気づいて!?)
しかし須磨子さまは楽しそうに去っていきました。
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☆第7章:まほうつかい ミカティア の ことば
森の奥。星のような光。
魔法使いミカティアが浮かんでいました。
優雅な魔法使い……なのに顔は完全に美佳。
「アンタの探し物……案外すぐそばでい。」
「まぁ? 魔法使いさまの方言かしら?」
ミカティアは全力で取り繕います。
(なんで“でい”出るのよあたし!!)
須磨子さまは光の魔法にうっとり。
「その灯りは……必ずアンタを照らすでい。」
ミカティアはそっと須磨子さまを送り出しました。
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☆第8章:ほんものの あくとう
草原で出会った男は、
須磨子さまをだまそうと腕をつかみました。
その瞬間――
「すまっちに指一本触れてんじゃねぇでいッ!!」
疾風のごとく飛び込んできたのは……
もちろん美佳。
「悪党は成敗だぁ!!」
須磨子さまはぽかん。
「まぁ……美佳様に似たご親切な方!」
美佳(心の声)
(本人だっつってんだろォオオ!!)
悪党は脱兎のごとく逃げました。
須磨子さまはふわりと笑います。
「……わたくし、分かった気がしますわ。
探していた“きらきら”が。」
「……えっ……」
「それは、美佳様の笑顔のことでしてよ!」
「…………ッ!!?!?!」
美佳は真っ赤になり、
草原に叫びがこだましました。
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☆最終章:きらきら の いろ
草原に静けさが戻る。
美佳は耳まで真っ赤。
須磨子さまはぽわんと笑っています。
「美佳様……
あなたがそばにいてくださると
わたくしの心があたたかく灯るのです。」
美佳は震える手で、その手を握り返した。
「……すまっち……
あんた……ほんと……ずるいでい……。」
ふたりは手をつないで歩き出します。
どこまでも続く道を。
須磨子さま
「次はどこへ参りましょう?」
美佳
「どこでもいいでい。
すまっちと一緒なら、どこもきらきらだ。」
夕陽がふたりを照らし、
物語はそっと幕を閉じました。
――きらきらは、
いつだってすぐそばに。
見つける心さえあれば。
おしまい。
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【アナウンス】
本日はブランド店発・しままち経由・美佳行き
きらきら便 にご乗車いただきまして、
誠にありがとうございました。
ダァシエリイェス!!
よくパケ買いしてしまうところをみると、私は何歳になってもキラキラが好きなのかもしれません。




