表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の代償  作者: 矢枝真稀
8/45

春休みは、未だ明けず・・・・

毎日のようにバイトをしていて、突然休みになったりすれば、一日の時間が妙に長く感じたりするもので、その例に漏れず、喫茶店のマスターの用事で臨時休業になってしまい、暇を持て余している最中だ。大学も春休み中で講義も無く、かといって特別用事があるわけでもない。あまりに暇で部屋の掃除を敢行してみたが、昼前には終わってしまい、買い物も昨日のうちに済ませてしまったので、やる事がなくなってしまった。



「ヒマだ・・・・」



残念ながら、部屋にテレビという物はない。情報等は雑誌や携帯で取り入れているし、芸能に全くといって興味のない俺にとっては、無用の産物に過ぎなかったからだ。しかし、こうも暇なら話は別である。



ピリリリリ・・・・!!



無機質な着信音が部屋に響く・・・・



「もしもし?」

「もしもし、澪亜?私だけど」



聞き慣れた声は、先輩より少しばかり年上の、女性のもの・・・・なんて事はない。姉からだった。



「ああ、どうしたの?」

「どうしたの?じゃないわよ。今は春休み中でしょ!?今年に入ってこっちに帰って来ないから・・・・」

「今年からバイト始めてね」

「バイト?あんたが?」



いつもながら、失礼な姉である。



「うん。生活費とか稼いでるし、なるべく親父からの仕送りは使わないようにしてるよ」

「へーぇ、あんたがねぇ・・・・」

「うん、友達も出来たし、元気にしてるよ。姉さんこそ、元気?」

「あたしに元気?て聞くのは野暮よ。相変わらずってとこ。それより今は春休み中でしょ?帰って来ないの?」

「うーん、とりあえず今日から三日間は休みで暇だけど・・・・」

「じゃ、帰って来なさいよ!!あんたの友達連れて」

「ヘ?」

「ヘ?じゃないわよ。あたしも会社潰れてヒマだし、あんたの友達ってのにも興味あるし」



さらりと爆弾発言した姉。会社潰れたって・・・・



「いや、俺はいいけどむこうの都合もあるし・・・・」

「ま、駄目ならあんただけでも帰って来なさい」

「・・・・うん、わかった」



どちらともなく「それじゃ」と声をかけ、電話を切る。姉とは大学入学以来、一度も会っておらず、家に帰るのも、約一年ぶりだろうか。



「はぁ、とりあえず電話してみるか・・・・」



電話の相手は、言うまでもなく先輩、九曜美月さんである。



トゥルルル・・・・トゥルルル・・・・



「澪亜か、どうした?」



たった二回のコールで呼び出しに応じた先輩の一声に「もしもし?」はなかった。



「あ、いや・・・・」

「なんだ?用事があったんじゃないのか?」

「じつは、ですね・・・・」



ひと呼吸置いて、先輩に用件を伝える。どうにも姉の言い出した事なので、いまひとつ説明しづらい事なのだが。



「ほう、それはいいな!!生憎私もヒマでな、かといってやる事もなくてダラダラしてたんだ」

「あれ、意外ですね。先輩の事だから友達と買い物とか行ってるんだと思いましたよ」

「いや、私の連れも実家に帰省してるんだ」



やる事もなくて俺に電話しようとした矢先に、俺から電話があったんだと、先輩は言う。道理で電話に出るのが速いはずである。



「なら、30分後に澪亜のアパートに来るから」

「え、いや、迎えに行きますよ」

「心配するな、実家は県内だろう?車をまわすから待っててくれ」

「いや、でも・・・・」

「気にするな、それじゃ30分後に!!」



と、一方的に電話を切られ、俺はしばし自宅待機となった。







→→→→→








30分足らずでインターホンが鳴り、やって来たのは当然の如く先輩だった。



「待たせたな、さあ行こう!!」



「早く行こう!!」と俺を急かす先輩の表情は嬉々としており、反対に俺の表情は、漠然たる不安が浮かび上がってしまう。あの姉の事である、ただでは済むまい・・・・





車に乗り込み、先輩と俺は姉の待つ我が海棠家へと向かうのであった。
















俺の心に、一抹の不安を残して・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ