長く待ち侘びた時
九曜美月の視点です。
一週間間のお盆休みも終わり、再びアパートヘと戻れば、扉の前にうずくまる人影。それはこの一週間、一度も連絡のなかった愛しい人、海棠澪亜の姿だ。待ち疲れたのか、澪亜は体育座りのまま眠っているようで、私の足音にも気付かない様子だ。
「澪亜?」
「う・・・・・・ん?・・・アッ!」
慌てて起きる澪亜。手には白い、小さな箱を持っている。
「おはよう、澪亜!」
パシャッ!
「意地悪・・・」
「んん?寝顔はバッチリ永久保存だな!」
携帯画面を見せてニヤリと笑う私に、呆れた顔の澪亜。素早く待ち受けに設定した私が気になったのは、何故澪亜がここにいるのか・・・?
「美月さんの顔が、見たくなって・・・」
照れながら、澪亜は白い小箱を差し出した。
「これは?」
「モデルのReinaって知ってますか?そいつから貰った物なんですけど・・・・・・」
モデルのReinaといえば、今や若者から絶大な支持を集める人気カリスマモデルだ。ファッションに疎い私ですら、知っている。しかし、そのカリスマモデルと知り合いなのか・・・それですら凄い事なのに、そのモデルのReinaを「そいつ」呼ばわりする澪亜は、ある意味大物だな。
「開けてもいいか?」
「どうぞ!」
受け取った小箱を開けると、中には大粒の真珠。シンプルかつ注目を集めそうな真珠は、赤と金の彫刻が施された雫型の枠にはまり、どうやらネックレスの鎖からの取り外しが可能らしく、小箱の台座にはブローチ用のピンも備えつけてある。高級な宝飾だが、嫌らしさを感じさせない一品だ。
「見事としか、言いようのない一品だ・・・ホントに、私が貰っていいのか・・・?」
「Reinaに、好きな人にプレゼントしてあげてって言われたから、迷わず美月さんにプレゼントしたんです!」
好きな人に・・・・・・それって!
「一日早いけど、これが俺なりの返事です!」
「れ・・・・・」
名前を口にしようとして、不意に声は遮られた。澪亜は、私を抱きしめていたんだ・・・
「大好きで・・・!?」
今度は、私が澪亜の言葉を遮った・・・・・・・・・・・・私自身の唇で・・・。
「最高の、ファーストキスだ・・・」
好きな人に捧げる、初めてのキス・・・正直、味なんてわかんない。けど、唇を重ねた時に感じたお互いの熱・・・それは身体中がとろけそうな程に甘美で、夢中にさせるものだった。
「俺も・・・です!」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にした澪亜を見て、私の体は脳からの指令より速く、再び澪亜にキスをしていた。
私は今、最高に幸せだ・・・