表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の代償  作者: 矢枝真稀
42/45

思い出を一つ失って 02

同じく九曜美月の視点です。

高橋美果たかはし・みか。私と同じ、同級生。しかしながら・・・



「子供いるのか・・・」

「正確に言うなら、お姉ちゃんの子供なんだけどね。お姉ちゃんは、旦那さんと夫婦旅行先で事故に巻き込まれちゃって、二人とも死んじゃったんだ・・・」

「そう・・・なのか」

「あ、ごめんごめん!暗い話しちゃって!!」



アハッと笑う美果だが、その胸中は、きっと辛く、悲しみを耐えているのだろう・・・。私も、それ以上は首を突っ込む事をしなかった。



「あの子ね、美咲みさきって言ってね。ほとんど親との思い出が無いの・・・だからね、今はお姉ちゃん達に代わって私がお母さんをしてるんだ」

「そっか・・・偉いな、みっちゃんは」



昔から、みっちゃんは世話を焼くのが好きで、よく下級生の面倒を見てたっけ。


「私の夢はね、この子を立派に育てて、いつかお嫁にいく時に「ありがとう、お母さん」って言われる事なんだ」

「みっちゃんなら、出来るさ!」

「フフッ・・・ありがとう、美月ちゃん!」



「お母さーん!」と叫びながら、美咲ちゃんはみっちゃんの元ヘ駆け寄る。ひざ小僧には、転んだのだろうか、擦り傷から血が滲んでいる。



「あら、転んだの?痛く無い?」

「いたくないもん!」

「そう?」

「美咲ちゃんはいい子だね、ご褒美あげる。ほら、みっちゃんにも!」



今だ冷たいラムネを二本、みっちゃんと美咲ちゃんに差し出す。



「ありがとう、お姉ちゃん!!」

「ありがとう、美月ちゃん!・・・うわぁ、懐かしいなぁ」

「ふふっ、あの小さな駄菓子屋のばあちゃんに貰ったんだ」



親指でポンッとビー玉を押し、本日二本目のラムネを喉ヘと流す。みっちゃんも同様にして飲むのだが、美咲ちゃんは力が弱い為、なかなか開ける事が出来ない。



「美咲ちゃん、開けてあげよっか?」

「いいもん、出来るもん!」



なかなか負けず嫌いな生活らしい。悪戦苦闘しながらも、美咲ちゃんはどうにかラムネのビー玉を押し込む事に成功して、シュワシュワと泡を立てるラムネに口を付ける。



「・・・おいしー!!」



どうやら気に入ってくれたようだ。



「あのばあちゃんの店、失くなるらしい」

「うん・・・寂しくなるね・・・」



しみじみと切なさに浸る私達の耳に、カラカラッと音が聞こえる。それは美咲ちゃんが、空になったラムネ瓶を見つめながら、中に入ったビー玉を揺らしている音色。



「きれーい!!」



その無邪気な笑顔は、少しだけ私達の切なさを、拭ってくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ