表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の代償  作者: 矢枝真稀
38/45

想いは募り・・・

相模玲奈視点です。

澪亜は笑う・・・。私も、笑っている・・・。

こんな日が来る事を、どれだけ待ち望んでいただろうか・・・。



(あぁ、こんなに素敵な笑顔だったんだ・・・)



仕事の忙しさを利用し、澪亜の事を忘れようとした。けど、どうしても頭から離れる事は無かった。

思い出すのは、笑う事を忘れた澪亜の顔・・・。後悔と懺悔だけが、私を縛っていた。



(ごめんね・・・)



せっかく澪亜が場を盛り上げてくれている。言葉には、出せなかった。



(・・・ありがとう)



心の中で、小さく頭を下げる私。胸に燻っていた罪悪感が、彼の笑顔で払拭されていく・・・。

同時に、別の想いが再燃している事に気付く。



「どうしたの?」

「ん・・・ちょっと、ね・・・」



美羽の問い掛けに、私はちょっと苦笑い。やっぱり、バレバレかなぁ・・・。



「(まだ、好きなんでしょ?)」

「(・・・うん、そうみたい・・・)」



澪亜を取り巻く人込みから外れ、私は美羽の問いに素直に頷く。

ほんとは、芝居じゃなかったんだ。金子くん達の誘いにのったのは、いつも遠くで見ていた海棠くんに、少しでも近づきたかったから・・・。

ほんとはあんな結末なんて、望んではいなかった。



「(良いんじゃない?まだ好きでいても)」

「(・・・そうかなぁ?)」

「(頑張れ!・・・まぁ強力なライバルがいるみたいだけど)」

「(え・・・えぇっ!?)」



ラ、ライバル!?だ、誰っ!?



「(ま、その辺は慎吾か沙織にでも聞いて。私も詳しくは知らないから)」



にゃは〜♪とでも擬音が聞こえそうな感じで、体育館に準備されている料理を物色する美羽。



(ラ、ライバルって・・・)



そりゃ、海棠くんは大学生だし彼女くらいはいるだろうと覚悟はしてた。けど・・・現実にそんな事を言われると、やっぱり不安になるよ・・・






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





一次会も終わり、帰り際にみんなで写真撮影。周りのさりげない気遣いで、私は海棠くんの隣。密接する集団の中で、私の心臓は高鳴りっぱなしだった。



「澪亜、二次会は?」

「あ〜、俺はパス。ちょっと寄る所があるから」

「そっかぁ、んじゃ相模さんは?」

「う・・・ん私も遠慮するよ」



私と海棠くんは、二次会を遠慮して、昔よく行った町の小さな喫茶店ヘ。ちょっと強引な気もしたけど、海棠くんは苦笑混じりに我が儘に付き合ってくれている。



「こんばんは〜」

「こんばんは!」



時刻は8時。町で一軒だけの喫茶店に、お客さんはいなかった。



「あ〜い、いらっしゃい!何にしましょう?」

「俺はブラック。ホットで!」

「私は・・・あ、カフェ・オレのホット!」

「あ〜い!」



喫茶店とは言うものの、昼は駄菓子屋のこの店は、当時と変わらずおばあちゃんが経営している。刻み込まれた皺に、垂れた目尻は変わらず優しい。



「ブラックとカフェ・オレ。お待たせ〜!」



数分で、注文した物は差し出された。鼻をくすぐるコーヒーの薫り。一口飲めば、ほのかな苦味と甘さが口の中いっぱいに広がってゆく。



「・・・で、聞きたい事って?」

「うん、あのね・・・その・・・」



付き合ってる人はいるの?好きな人はいるの?

私の事、好きですか?

聞きたい事がいっぱいで、何から話せばいいのか・・・。



「どぅれ、わたしゃ奥におりますから、ごゆっくりどうぞ・・・」



おばあちゃんは気を利かせてか、一声かけて店の奥に引っ込んでしまった。



「あのね・・・彼女とか、いるの?」

「彼女?いないよ。一応告白はされてるけど・・・・・・」

「えっ!?」

「アパートに戻ってから、返事を聞くって言われてね」



嬉しそうに話す海棠くん。私は、平静を装ってたけど・・・・・・

















辛かった。



「その人はね、俺の大切な人なんだ。まさか告白されるなんて思ってなかったけど・・・」



やめて・・・



「でね、その美月さんが・・・」



そんな嬉しそうな顔、しないで・・・



「それから・・・」



もう、やめてっ!!



「それから・・・・・・どうした?」

「・・・かな」

「え?」

「・・・駄目かな?」

「どうしたの、相模さん?」

「私じゃ、駄目かな?」



縋るように、私は言葉を投げかけていた。



「ホントは、初恋だった。海棠くんは芝居だって思ってたかもしれないけど・・・」

「・・・・・・」

「・・・今も、好きです・・・」























返事も聞かず、私は店を飛び出していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ