再会・・・
今回は〇〇〇視点!新キャラです。
海棠澪亜・・・・・私の愛しき人、だった。
正確に言えば、まだ過去形じゃない。私は今でも、海棠くんが好き・・・
そんな資格なんて、私には無いのに。
懐かしい町並みが視界を奪っている。
「変わってないなぁ・・・」
両親の転勤の都合で、私は八歳から中学卒業までの時間を、この町で過ごした。あの時より、少しは変わっているかもしれないけど、鼻をくすぐる潮風の香りや波の音は、あの頃とちっとも変わってないなぁ・・・。
「相模!?」
「えっ・・・・・さ、なだ・・くん!?」
「おぉ!やっぱり相模かっ!!・・・っと、今はReinaだっけ?」
「相模だよ、今はプライベートだもん!!」
日焼けした顔から覗く、真っ白な歯を見せて笑う真田くんは、当時と変わらない。
「モデルだって!?スゲェな!!しかも、歌手活動も始めたんだろ!?」
「うん、まぁね・・・」
「芸能人の友達がいるって、俺も鼻が高いぜ!」
「アハハッ!そんなの大して自慢になんないよ」
そう、端くれではあるが、私は一応芸能人。といっても、今はモデルの仕事がメインだけど。
「澪亜だろ?」
「ふぇ!?」
いきなり核心を突く真田くんの言葉に、あまりにも間抜けな声を出してしまった私。
「図星だな」
「・・・うん」
ホントなら、私は今頃仕事で撮影中のはず。そんな私宛てに届いたのは、一枚の葉書。そこには同窓会の会場・日時・参加不参加の有無と・・・・・
《今年は、澪亜も帰って来るよ!》
と、一筆書き加えられいた。
(海棠くんに会える!)
その想いが私を強く動かして、事務所の社長に直談判。反対されると思ってたけど、社長は意外にも簡単に承諾してくれた。一週間の有休をサービスして。
「相模!?」
「あ、ごめん!なに?」
「いつまでもこんな場所に居たってなんにもなんねぇよ!それよりそろそろ始まるぞ!!」
今、私は町の漁協の前に居る。予定時間まで後10分少々しか無い。
「あ、もうこんな時間!!真田くんは?」
「俺は一度家に帰るから、慎吾にそう言っといて!!」
慎吾くん・・・あ、村上くんの事か。
わかった、と一言添えて、私は中学校へ急いだ。
◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆◆
今も昔と、変わり無い・・・・・古びた印象も、当時とさほど、変わってはいない。
「相模、久しぶり!!」
「玲奈。元気だった?」
「久しぶり、みんな・・・・・」
変わったのは、卒業したみんなの身長くらいかなぁ・・・。
「沙織、久しぶり!結婚おめでとっ!!」
「ありがと、でもさ〜・・・」
「な、なんだよ・・・」
「付き合ってた時と、な〜んにも変わんないんだよねぇ」
沙織の愚痴は、相変わらずだなぁ・・・。私たちは、中学校を卒業しても、ちょくちょくメールや電話のやり取りをする程の仲。同窓会開催の葉書に一筆加えて寄越したのも、彼女だ。
「相変わらずだね、二人とも。アハハッ!!」
「ま〜ね〜。それよりよく休み取れたねっ!」
「うん、まぁ・・・ね」
「あ〜・・・少し遅れるとか言ってたよ」
「誰が?」
まぁね、分かってるつもりだよ・・・私は顔に出やすいって。
「またまたぁ・・・」
「あ、それより!真田くんが一旦家に帰ってから来るから、少し遅れるって!!」
「またか・・・相変わらず遅刻魔だな」
中学時代から、真田くんの遅刻はあまりにも有名な事だけど、今日のは少し違ってたような・・・
「ま、今日は仕方ねぇな、あいつも準備に忙しいから」
「準備?」
「あ、いや・・・・・おっと、主役が来たみたいだな!!」
何故だか話をはぐらかす慎吾くんは、入り口の人だかりを指差す。
それは他でも無い、あの人の姿・・・・・。
「おーい澪亜、遅いぞ!!」
「ごめんごめん、少し渋滞に巻き込まれたのと、姉に絡まれてた」
笑顔だった・・・。過去を感じさせない、眩しい笑顔・・・。
「半年くらいか、相変わらず白いな!」
「お前は真っ黒だな!と・・・アレ?」
「ひ、久しぶりっ!!」
私の存在に気付いた海棠くん。私の声は、上擦っていた。