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嘘の代償  作者: 矢枝真稀
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無計画デート? 〜ショップ編〜

澪亜視点、少し長め・・・かな?

アーケード街をぶらぶらと散策し、良さそうなショップを発見。ガラス張りの明るい照明が、通りに漏れている。

店の名は《SAYURA》。



「いらっしゃいませ〜!!」



店員さんのかわいらしい声が店内に響き、吊られて他の店員さんも声を出す。



「先輩は、どういうふ・・・」

「澪亜、ここで「先輩」は不粋だぞ。美月、もしくは美月ちゃんと呼べ!」



まさかの二択っ!?



「美月さん・・・で」

「・・・・・妥協してやろう」



何とか回避できた。



「こんにちは〜!どういった服をお探しですか?」



と、1番最初に挨拶をした店員さんが美月さんに近付いてきた。



「えっと、実は・・・」



と、美月さんは色々と事情を説明していた。完全に、俺は蚊帳の外・・・。仕方なく適当に店内をぶらぶらしてみた。・・・・・・すると



「んん?」



《春の新作》と銘打ったフロア中央に飾られたマネキンに目が留まる。

白いスタイリッシュなシャツ、タイトな黒いジーンズに、黒を基調とした紅い刺繍のハット。

ぱっと見はボーイッシュなファッションだが、大きめに開いた胸元が、大人の女性っぽさを演出してる。



(先輩に似合いそうだな・・・)

「こんにちは〜!彼女さんの服をお探しですか?」

「うぉっ!」



背後からの声というのは、いきなりだとびっくりするな。振り向くと、美月さん並に身長の高い店員さんだった。


「彼女ではないですけど・・・」

「あら?あちらの方は、彼氏だって言ってましたけど」



また話をややこしくしやがったな、あの人は・・・



「まぁ、似たようなものかな・・・それより、これ・・・」



マネキンを指差した。これなら、美月さんに似合いそうだ。



「ご試着ですか?」

「俺じゃねーよっ!」



いかん、マジツッコミをしてしまった。



「冗談ですよ〜!お連れのお客さんにですか?」

「まぁ、大切な人ですから。いつもお世話になってるし・・・」

「かしこまりました!」



そう言って、店員さんは美月さんの相手をしてる別の店員さんに、耳打ちをした。肝心の美月さんは、いそいそと試着室へと入っている最中。完全にカーテンが閉め切られたのを見計らい、先程の店員さんは戻ってきた。



「サイズはシャツがM、バストはおよそDで、ウエストが58、といったところですね〜!」

「え?あれだけでサイズとかわかるんですか?」

「ま、プロですから!」



フフン!と自慢げに鼻を鳴らす店員さん。さすがです・・・。



「えっと、シャツ・帽子・インナー・ジーンズで、大体いくらですか?」

「ざっとで一万五千円位ですね〜」



一万五千円か・・・あぁ、バイト代貰ってて良かった。



「じゃ、これ下さい!」

「ありがとうございま〜す!あ、彼女さん試着終わったみたいですよ〜」



振り向くと、カーテンがシャッと開き、中から美月さんが出てきた。



「あ、こっちでラッピング済ませときますから、彼女さんの所に行ってあげて下さい」

「すみません、お願いします!」



店員さんは、俺の後ろで購入予定の服を隠し、そそくさとレジに向かって行く。俺もさりげなさを装いながら美月さんの元へ。



「ど、どう・・・?」

「・・・・・・イイ」



普段のパンツスーツとは違い、始めて見るデニムのミニスカート。タイトなロングTシャツは、スタイルに自信のある人にしか着こなせないイメージだが、美月さんは、完璧に着こなしている。見事なクビレだ!



「美月さんって、美人ですよね。スタイルも良いし!」

「なっ!?」

「とってもお似合いですよ!」



思わず口をついて出た本音に、美月さんは口をあんぐりと開け、店員さんは緩んだ口元を手で隠した。



「すごく似合ってますよ!」

「ホントか?」

「ええ、とっても!・・・せっかくだから、色々試着したらどうですか?」

「あ、あぁ、そうだな!!」



これはキープで・・・とか何とか呟きながら、美月さんは再び試着室へと消えていった。

その間に先程の店員さんの元へと戻り、素早くお支払い。



「一万二千円ですね〜」

「あれ?一万五千円って言ってませんでした?」

「あぁ、三千円分は、サービスしておきました!」

「サービス?」

「いやぁ、大切な人にプレゼントでしょう?素敵な事です!差額で、美味しい物でも食べて下さいねぇ〜!」

「あ、ありがとうございます!!」



ニクい演出に感謝して頭を下げ、顔を上げた時に、胸元のネームプレートに視線が向いた。



「て、店長さん!?」

「はい!あれ?気付いてなかったんですかぁ?」

「いや、若いから店員さんかなって」

「あら、うれしい〜!これでも30は軽く超えてますけどね〜」



爆弾発言!姉と大して変わらないと思ってた。



「じゃなきゃ、勝手に値引きとか出来ないでしょう?」

「・・・ですよね」



支払いを済ませ、かわいらしくラッピングされた箱にシャツ・インナー・ジーンズ、帽子は潰されないので、箱の上にちょこんと乗せられ、店名の《SAYURA》のロゴがプリントされた濃いグリーンのエコバッグに入れられた。どうやらエコバッグもサービスらしく、次回購入時にこのバッグを持参すれば、10%割引だそうな。



「さてと、美月さんは・・・」



試着室へ引き返すと、ちょうど新しい服に着替えた美月さんが出てきたので、さりげなくバッグを後ろに隠し、まじまじと美月さんを見つめる。



「そ、そんなに見るな!!恥ずかしい・・・」



顔を真っ赤にして、試着室のカーテンで身を隠す美月さん。



「美月さん、ちゃんと見せてくれないとわかりませんよ」

「・・・・・・」



無言で渋々カーテンを取り払った美月さんの服は、さっきとは打って変わり、淡い空色のワンピース姿。見た目は完全にどこかのお嬢様だ。



「モデルが良いと、何でも似合うなぁ・・・」

「・・・そ、そうか?」



美月さんは何でも似合う。それはこの二回の試着でわかった事だが・・・



「で、美月さんははどんな服が好きなんですか?」

「どんな?」

「あまり乗り気じゃないでしょ?服選び」

「そ、そんな事は・・・・」



少しだけ、美月さんが無理をしてるような気がしていた。



「自分が着たい服を選ぶのが1番ですよ。無理はしないで下さいね」

「・・・ふふっ、バレバレか。確かにな、少しばかり焦ってたようだ」



困惑は一変し、何時もの美月さんに戻った。素早く着替えを済ませ、自分の着たい服を選び始めた美月さんの顔は、生き生きとしていた。






◇◇◇◇◇◇◇◇






三度目の試着で納得のいった服を選んだ美月さんは、1番最初に試着したデニムのミニスカートと最後に選んでいた薄手の白いジャケットを購入し、店を出た。


「ありがとな、澪亜!危うく自分らしさを忘れる所だった」

「個人的には美月さんのワンピース姿は可愛いと思いましたけどね」

「・・・からかうな」



顔を真っ赤にしながら、ポカポカと俺の胸を叩く美月さんは、小さな子供みたいだ。



「あ、そうだ、コレ!」

「何だコレは?」

「俺からのプレゼントです」

「プレゼント?」

「いつもお世話になってるし、お礼の意味も込めて・・・って、せめて家に帰ってから中を見て!!」



ガサガサとバッグから取り出そうとしてる美月さんの手を止めさせる。空気も何もあったもんじゃない。



「服なんですけど、美月さんに似合うと思ったんで!」

「・・・ありがと、大切に着るよ」



バッグを大事そうに抱きしめる美月さんは、嬉しそうにこっちを見る。




ドキッ!




不意に、胸は高鳴った・・・。普段なら、美月さんの笑顔を見ても、なんとも思わないのに。



「どうした?顔が赤いぞ!」

「あ、いや、なんでもないです」

「そうか?ま、いいや、行くぞ!」



突然、美月さんは俺の手を掴んだ。



「ふふっ、いいじゃないか・・・今日は少し、私の我が儘に付き合え!」



意地悪げに美月さんは笑い、俺の掌を掴んだ手に少し力をいれた。



「これも、我が儘ですか?」

「そうだ。いいだろ?手くらい繋いだって」



我が儘か・・・。ま、先輩がそう言うなら・・・



「じゃあ、今日はとことん付き合いますよ」



言いながら、美月さんの手を握り返した。




















ほのかに帯びた熱は、冷めないまま・・・。

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