愛しき人ヘ・・・
過ぎ行く日々〜前編〜とは異なるSide Storyです。美月視点、本文は短いです。
アパートから、電車で2時間とちょっと・・・。目的の場所に近い駅で、私は降りた。目的地に行く前に、私は必ず寄る場所がある。
「いらっしゃいませー」
そこは一軒の、小さな花屋。あの人が好きな、白い薔薇を一輪買って、その足で目的地に足を運んだ・・・
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
喧騒を忘れた郊外に、あの人はいる。辺りは桜並木が蕾を膨らませていた。
「久しぶり・・・元気だった?」
声をかけて、花を添える。返事は、返って来ない・・・
「一年振りだよね、此処に来るのは・・・」
他愛のない言葉を、何度も、何度も・・・
「私、今気になる人がいるんだ!私の一つ下の男の子でね、名前は澪亜って言うの」
何度も・・・
「でね、それから・・・・・」
間を空けず・・
「・・・って言ったの!!」
当然、返事は無い・・・
「まださ、どう好きなのかはわからないけどね」
どう言っても、言葉は宙に浮いたまま・・・
「どう思う?」
何も答えない・・・私は、独り言をずっと言っている様・・・
「ねぇ、聞いてる?」
呆れた様に、言葉を吐き出す私。
「たまには、優し〜く声をかけてくれてもいいんじゃない?」
「私がこんなに相談してるのにさ、何すましてんの?」
どんなに声を出しても、貴方は何も言わない・・・・・・
「ちょっとは何とか言ってよっ!!!」
私の声に、怒りが混じっている。
「ねぇ、答えてよ・・・・・・」
俯く私の頬に、涙が伝う・・・
「どうして、何も言ってくれないの・・・」
安らかに眠る貴方・・・
どうして、貴方は何も言わないの?
どうして、黙ってるの?
どうして?
どうして・・・
「答えてよ・・・」
魂は・・・
「兄さん・・・」
此処に無い・・・