帰郷03
短いです
家に戻ると、姉は買い物で留守らしく、港にいた先輩と馴染みの二人を居間に招いて、お茶の準備中。台所と居間は隣なので、聞き耳を立てなくても三人の会話は耳に入ってくる。
「そうなんですか、美月さんは澪の大学の先輩なんですね」
「ああ、私にも友達がいない訳じゃないが、1番の友達と言えるのは、間違いなく澪亜だな」
「へーぇ、恋人じゃないんですか?」
「どこでその結論に達したんだ、お前は」
茶を運びながら寝言をほざく慎吾をひと睨みすれば、褐色の男は小さくなった。昔から慎吾は俺の睨みに弱い。ま、慎吾だけじゃないが・・・
「澪亜、怖い・・・」
「同感だ・・・」
俺の顔を見て後退りする女性が二名。そんなに怖いか?
「お茶、お待たせ」
「「サンキュー!」」
「すまんな、澪亜」
夕食の時間が近づいていたので、俺は再び台所に向かおうと立ち上がって、美月さんに足を掴まれた。
「どこへ行くんだ?」
「え?もう夕方なんで、飯の準備をしようと・・・」「ああ、それは心配ない。静波さんがオードブルを取りに行ってる」
「オードブル!?あのケチな姉さんが???」
ガチャリ・・・
「だ〜れがケチだって〜ぇ?」
「・・・ごめんなさい」
不意に後ろから手が伸びて、俺の首に巻き付くように体制を取った我が姉上様は、無気味に笑みを浮かべながら、徐々に首を絞めてくる。
「私だって、たまにはパーッとお金くらい使うわよ。それに、可愛い弟が帰って来てるんだもん、当たり前の事よ」
「ありがと、姉さん」
締め付けていた腕は解かれ、優しく笑う姉。そんな光景を見ていた慎吾は
「羨ましい・・・」
「あんたには私がいるでしょっ!!!」
と、沙織にげんこつを喰らい
「いいなぁ・・・」
と、美月さんは微笑みながら小さく呟いた。
「さ〜て、そんじゃ澪亜も帰ってきたし、美月ちゃんの歓迎会も含めて、乾杯しましょ!」
「そうだね、慎吾と沙織も食べてくだろ?」
「それじゃ・・・」
「お言葉に甘えて・・・」
オードブルの大皿が二つと、大量のアルコールが準備され、俺の帰郷と美月さんの歓迎会が、始まった。