2.借りを返すまで殺さないでやる
んん…?ここはどこなのだ…。温かいスープの匂い…これはいつも食べているスープと違う匂いだな…。
美味しそうな…。
「お。おこちゃまさん起きたか?」
「おっおこちゃまじゃないはぁちゃま!」
「ん。元気じゃねえか。」
「はぁちゃまはいつも元気だわっ!ほらっぴんぴん!」
「さっきまで地面で倒れてたのになあ。俺が看病してやったんだぞ。」
「かんびょう!?敵であるお前が!?嘘つくんじゃな…」
まだ目の前がくらくらして…。
「ほらどうせまだ体調治ってねえだろ。スープ作ってやったから飲んで。」
「誰がこんないい匂いで不味そうなスープを!」
「不味くねえよ…ほら飲んで」
「し…仕方ないなあ!」
口に入れた瞬間に広がるとうもろこしの匂い。風味…。
「なんだこの美味しいスープは!?」
「コーンポタージュだよ。そういえば俺を殺すんだっけ。」
「んんん…お前には借りができてしまった…。仕方ないし借りを返すまで殺さないでやる!」
「ん。そうしな。」
○ 。 ○ 。 ○
「ん…さて借りを返すまでどこに住むかなぁ。」
「おこちゃまさんは住むところに悩んでんのか?」
「おこちゃまじゃないのだ!!!まあ住むところに困っているのは事実なのだがな…。」
「じゃあ俺んち住めば?」
「え!?借り返したらお前は私に殺されるのにか!?」
「まあ殺されねえって。」
「殺すけどな!?」
「借りを返してからだろ?俺、困ったやつをたいしたことない限り放おって置かねえからな。」
「ふーん。人間って優しいんだな。」
本で見た人間は魔族と違って強欲で、貧弱で、屑で、糞で。そう思っていたのだがな…。
「意外と違うものなんだな。人間って。」
「ん?違うって?あと人間て呼ぶのやめて。俺にも名前くらいある。」
「じゃあお前もおこちゃま呼びやめろ。」
「わかーったよ。はあと。俺は結崎ヒロだ。気軽にヒロとでも呼んでくれ。」
「おう!よろしくヒロ!」