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視界は赤く染まっていた。


 私は鬱病なのだそうです。


 ソレはそうなのだろうと思います。


 八年前の事、私は事故で夫を失いました。私達家族三人、そして隣人の娘さん一人を含む四人での、旅行の最中の事でした。旅館に着くのが大分遅くなり、辺りは真夜中の様にくらかったのを覚えています。私が車を運転して、夫は後部座席で娘と、隣人の女の子の面倒をみていました。山道を走行していた時、突然に飛び出してきた鹿を避けようとして、私がハンドル操作を誤り、私達は、崖から落下したのです。


 最後に記憶にあるのは、落下した直後、子供達を庇っていた夫の姿でした。子供達を必死に抱き抱えている夫。そして、その隙間を縫うように夫の首筋の辺りに突き刺さった二つの硝子の破片。気が動転していたのでしょう。硝子の破片が刺さった儘では、夫が死んでしまうと思い、最後の力を振り絞り、その硝子の破片を抜いてしまったのです。


 静かに吹き出ていく血液。

 私の視界は赤く染まっていたのでした。


 ソレからの記憶は思い出せません。


 不幸中の幸いなのでしょう…。

 私と子供達二人の命は救われたのです。


 無傷であった…。そんな御伽噺の様な奇跡なんて起こりませんでした。私は生死の境を彷徨い、私の娘は脳に瑕を負い、隣人の娘さんは左眼に傷を負ったのです。



 その責任の全てが私にあるのだと…。

 私は私を責めました。

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