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氷を口に含む
あの時から、肉体の内側が火照っている感覚がありました。ソレを冷ます為、氷を口に含むのです。口に含んだ氷は、肉体から徐々に体温を奪っていきました。
その行為は、肉体の内側に潜む、不安や恐怖を融解する、そんな気持ちにさせてくれました。だからこそ、私は幾度も幾度も氷を口に含んでいたのでしょう。そう。あの時の記憶すらも融解するのではないかと、淡い期待をしていたのかも知れません。
でも、その行為が陰虚体質への入口なのだとは、当時の私には解りませんでした。陰虚体質とは、肉体の水分が不足する体質の事です。不思議ですよね?氷を大量に口に含んでいたのに、肉体は水分不足になるのだそうです。肉体から潤いが消失し、自らの熱で、のぼせる様になりました。
だからなのでしょう。
喉の渇きが尋常ではないのです。肌の水分も無くなり、カサカサになり、肉体も少しずつ少しずつ痩せ細っていきました。
だから私は余計に家から出なくなったのです。