トドメの一撃
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「ものの見事にあの男の予想通りになったわね・・・。最後まで気に食わない奴だわ・・・」
サンクス率いる『十三使徒』は内側からの爆破によって半身が吹き飛んで不快な悲鳴を上げている『寄星虫』を遠くから見ていた。
『寄星虫』の光線から助け出された後、呑が大量に作り出したデコイに紛れて『第四界』の端の方に隠れていた。魔術師ダウトの兵装『無貌なる信者』の光学迷彩能力を使っていたお陰で見つかることは無かった。
呑が大量にデコイを展開したのは攪乱のためだけではなく、爆破の威力をより高めるために導火線を出来るだけ長く伸ばすための時間と距離稼ぎもあった。何も知らないイカリが縦横無尽に動き回ったお陰もあって導火線はどんどんと伸びていき、『寄星虫』に大ダメージを負わせるほどの火力を叩き出した。
サンクスは手の中で塵になっていくスイッチを見つめ呑の死を悟る。
当たり前だ。奴自身が爆発するスイッチだったのだ。攻略のためとはいえ自身の手で人を殺すスイッチを押した。船の乗組員も見捨てる判断をしたのも自分だ。
「事前に乗組員のことを聞いていたとしても・・・すまない・・・救えなかった・・・!」
力なく血を吐く様に悔しさを口に出す。
しかし、未だ攻略途中。ここでへこたれている訳にはいかない。完全に塵となって消えたスイッチを持っていた手を力の限り握りしめる。
「半身が吹き飛んでもあの虫はまだ生きている!・・・ケファ老!まだ見つからないの!?」
「年寄りをもっと労ってほしいもんじゃな・・・。若造の支援があってもそう簡単にはいくまいて・・・」
アンテナを伸ばして何かを探している老魔術師ケファの兵装『天国の鍵』。側でその性能を底上げしているは若輩騎士アッドとその兵装『定められた補完』。彼らは与えられたチャンスを逃すまいと必死になっていた。
散々こちらに接触をしてきたのだ。見つけられないはずが無いと信じて、脳が焼き切れんばかりに回り、負担が大きくなっていっても止めない。
「・・・見つけたぞ!爆発には巻き込まれなかったみたいじゃな!『寄星虫』の内部・・・心臓に奴はいるぞ!座標を表示する!」
『天国の鍵』から照射された淡い光が空中にモニターを映し出す。『寄星虫』の構造図に赤い点が明滅している。唾棄すべき存在がいる地点だ。
「ジール!準備は良い!?『寄星虫』の心臓ごと奴を消し飛ばしてしまいなさい!」
「オーライですぜ姐さん!チャージは完了済みですぜ!」
砲身の長い銃を構えるはジールが操る『熱が引かぬ信心』。超長距離砲を備えた兵装は長い時間をかけて貯めた力をいつでも吐き出せる状態でいた。あとは引き金を引くだけである。
「犠牲が多い戦いだったが・・・これで終わらせる!撃てぇーー!」
サンクスの号令と共に先の『寄星虫』の光線をも上回る極光が発射され、『寄星虫』を貫いた。その速度は凄まじく、若輩騎士のアッドには光が見えたかと思ったら『寄星虫』に新しい穴が空いていたというものであった。
半身を吹き飛ばされて悲鳴を上げていた『寄星虫』は悲鳴を上げるのを止め、ボロボロと崩壊していった。満ち満ちていたエネルギーは溢れ出さずに蒸発する様に消えていった。
―――― 『危険物』 遥髷 呑 死亡 ――――