星を纏い星に守られ
咄嗟の反応によって船を高速旋回したことによって、船の後ろ半分が削り飛んだだけで済んだ。即座に周りの星屑を回収し船を修復させる。
「おいおいおい!完ッ全に捕捉されてんぞ!どおなっていやがる!?」
フルスロットルでその場を離れる。デコイの陰に隠れるように船を走らせても『寄星虫』は迷いなくこちらを追尾してくる。
速度は船の方がずっと上だが如何せんサイズが違い過ぎる。必死に逃げても一息で距離を詰められる。急旋回や急発進を繰り返して緩急をつけながら巧みに躱すが、どんどんと被弾が増える。
船が壊れれば即座に修復をするが段々と敵の攻撃の精度が上がっており、修復が間に合わなくなってきていた。
こんな状況だと周りのデコイが邪魔でしかない。「木を隠すなら森」とばかりに大量に展開されたものが今や忌まわしく感じるイカリ。
「おい呑!周りのクソウゼェ案山子を消せ!邪魔で仕方ねぇ!」
「・・・下手に消しても良くはないだろう。正直に言うと、今更だな」
呑の変わらず見下したような言い方が癪に障るが、何かが引っ掛かったイカリ。絶体絶命な状況においても取り乱す様子が無い姿を見てある考えに至る。
「テメエ・・・この状況も想定済みだったな・・・!?」
怒りを滲ませた声で呑に詰める。怒りを受けても特に変化も無く、呑は淡々と答える。
「お前の能力は周りにある物を接収して船の修復を永遠に行える。正直に言うと、かなりチートじみたふざけた能力だ。・・・だが、今回は取り込んだものが悪かったな」
イカリは呑の言葉を反芻すると見る見るうちに驚愕で顔を染めた。
「ま、さか・・・星の性質を帯びちまったってのか!それであのクソ虫に居場所を探知された・・・!」
星屑を大量に取り込んだことで『寄星虫』の星を求める感覚に引っ掛かってしまった。修復を繰り返せば繰り返すほどに船は元の形を保っていても、元の船とは全くの別物になってしまった。
「お前がここで能力を使って船の修復をした時、この状況は確定した。正直に言うと、迂闊だったな」
「テメエえええええええ!!!殺してや」
『バクン!』
吠えるイカリ。今にも殴りかからんとした行動は、『寄星虫』によって船ごと飲み込まれたことによって残響を残して消え去った。