致命的で初歩的なミス
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『無駄な足掻きは傍から観るなら好きだけど作業ゲーは嫌いだよ!』
口で文句を言うペストマスクは心の中で難易度が上がったことを喜んでいると同時に攻略法を見つけていた。
(君たちの乗る船は能力か何かで強化・補強を行っているのは確認済み。そして修復に周囲の星屑を使っている。・・・もう詰みだねぇ♪)
表面は苛立ちを演じながら光線を滅茶苦茶に撃っているペストマスク。やけくそに撃っているように見せてある瞬間を待つ。
(次に君たちが大きく修復を試みたとき・・・それが最期さ)
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多数のデコイで攪乱が出来ても、全くの無傷でいられるわけではない。もはや面による攻撃と変わらない濃度で襲ってくる光線は直撃を避けても船を破壊していく。
「なりふり構わない攻撃の方が厄介だ。正直に言うと、読みよりも勘での動きを強制されてしまう」
いくら膨大な魔力を持とうとも、大量のデコイを作り出し続ける呑の負担が軽いわけも無く、進展しない現状に苛立ちを募らせていた。
イカリも同様のようで足元には空いた酒瓶が山を作っていた。
「またチンタラする羽目になるとはなぁ!こんなゴミゴミしたとこじゃなくてあの虫の方に行きてえなぁ!何とか出来ねぇのか!?なあ!騎士さんたちよぉ!」
救出した騎士たちがそれ以来全く行動をしていないどころか喋ってもいないことに疑問を感じつつ騎士たちを見やる。
固唾を呑んでいるのか黙って『寄星虫』を見ている騎士たち。『十三使徒』は引っ込めている状態だが特に傷を負っている様子は見えない。それなのに黙り込んでいる連中に違和感を覚えるイカリ。
「なあ、呑よぉ・・・。あいつら馬鹿に静かじゃねえか?力足らずでしょげ返っている感じでもねぇしよぉ」
「そんなことに意識を割く暇があるなら疾く動きなさい。正直に言うと、船の修復を怠るな。落とされるぞ」
我関せずの呑の様子に気にするだけ無駄かと船の操舵と修復に注力する。
光線によって消し飛ばされた船のマストを、近くを浮く星屑を引き寄せて修復する。宇宙を飛ぶ上でマストはそこまで必要としていなかったが見栄えを気にしたイカリが事も無げに修復した。してしまった。
『見つけた』
今の今まで無差別に光線を発していた『寄星虫』はグルリと方向転換する。
『第四界』の中央に座して動かなかった『寄星虫』は醜悪に口を開け、猛然と、寸分の狂いも無く船に向かって突進してきた。