戦いは数
―――――
「うーん・・・なんだか単調になってきたな~・・・そろそろ終わらせちゃおうか」
独りごちたペストマスクは悪気も無く呟いた。船とは思えない高機動や騎士たちが隠し持っていた鋼鉄の兵士には驚いたが、ただそれだけ。圧倒的有利な状況からの弾数無限のシューティングゲームは飽きを感じてしまう。
あまりにも面白みが無いから少し介入したが、これはこれでつまらないことをしてしまったと自省する。
「さて、これで終わりならそれまでだったって訳だ。次回を期待させてもらうよ」
ペストマスクはゲームを終わらせる一手を使うことにした。つまらなくなったゲームを終わらせるための最悪な一手を。
――――
『寄星虫』の触手は星屑を投げるのを止め、全ての触手の先にエネルギーをチャージし始めた。ここからは全て光線による攻撃を仕掛けてくるのだろう。
「まずいわ・・・これじゃあ修復が間に合わなくなる・・・!」
触手や隕石ならば打ち払うことが出来ていたが、光線を真正面からどうにか出来るのは防御に優れた機体のみ。被弾すれば即座に修復をするという流れを作っていたがここから先は難しいだろう。
「サンクス隊長!指示を!」
他の隊員も最悪の想像に行きついてしまったようで必死に指示を仰いでくる。しかし、打破するものが浮かんでこない。今にも光線の奔流が襲い掛かってきそうなこの場で、頭の中はパニックになってしまっている。
『なかなか楽しめたよ。とりあえずここはゲームオーバーってことで。次、頑張りなよ』
モニターから無慈悲な死刑宣告が流される。ペストマスクの腹立つ物言いに返す言葉も見つからず、ただ唇を嚙み締めるしかなかった。
(ここから逃げる?否、船にいる者を見捨てるなんて出来ない。迎え撃つ?否、数瞬はもつだろうが即座に全滅するだろう。どうすれば・・・どうすれば・・・!)
堂々巡りのように頭の中を思考がグルグルと回るが相手は待ってくれない。
『まずはちょこまか飛び回る子たちからだね』
無慈悲な光線が発射された。先ほどまでとは比べ物にならない威力と範囲だ。星屑を蒸発させながら迫る光線は宇宙を飛ぶ十三の機兵を消し飛ばした。
――――――――
『次はその船だね~。マザーシップを撃墜してこっちのゲームはクリアだ』
モニターからの通信に皺を深める呑。イカリは楽しそうに酒を飲み続けている。見っともなく命乞いをするか激しく罵ってくるかと思ったペストマスクは意外な様子を不思議に思った。
『おや?仲間が消し飛ばされたのに変化なしとは。君たちも酷い人たちだね』
「仲間だぁ?ゲッヒャッヒャッヒャッ!薄ら寒いこと言うなよ!全ては『俺様』か『所有物』の二つだけだ!あっちも俺様のことは仲間だなんて思ってもいねえだろうぜ!」
イカリはペストマスクの戯言を笑い飛ばす。「それに」と続ける。
「お前は絶対的な立場から楽しんでるかもしれないが、些か俺様たちをナメ過ぎだ。俺様たちは何も失っちゃいないぜ?」
ペストマスクは驚きからかマスクの奥の目を見開いた。消し飛ばしたはずの『十三使徒』が全員五体満足で船の後ろから飛んできたのだ。
「お前はインベーダーゲームを所望していたな?正直に言うと、時代遅れのゲームは終わりだ。今の流行りはもっと難易度が高い」
『十三使徒』の数は減っていないのならば十三のはずだ。しかし、目の前に広がるのは船の周り一杯に広がる幾千をも超える数の『十三使徒』。
「どうだ?侵略者ってのは怖ろしい物量で襲い掛かってくるものだろう?正直に言うと、そっちが手数で勝負するならこちらも手数で勝負だ」
気付いた時には船も何隻かに増えており、どこに攻略組がいるのかが判別できなくなっている。
「STAGE1クリアおめでとう。正直に言うと、こっからが俺のターンだ。震えて眠れ」
既に『寄星虫』の触手の総数をも上回った軍団が大挙として押し寄せていった。