不穏なる船出
――― 第四界 『壊滅宇宙 コスモポリタン』 ―――
星々が衝突しあうことで様々な場所で爆発による瞬きが見える宇宙。その暗闇と破壊の海を征くのは大きなガレオン船。『三業』が用意した最高級ではあるがただの船。
しかし襲い来る流星群を物ともせずに悠然と宇宙を切り開くように進んでいた。
「ゲッヒャーッ!やっぱり船は良いな~!最高だぜ~!」
汚い声をあげながらノリノリで舵を取るイカリ。勿論この男の能力で船は宇宙を飛んでいる。
イカリの『母との別れ(レイズ・アンカー)』は自身を船長として周囲の物体から、船と乗組員を作り出す能力だ。土や石、木や鉄など利用できるものは何でも利用できる。
その能力の側面の一つとして、初めから船や乗組員が用意されていた場合、船を作り出すリソースを船の強化・改造に回すことが出来る。
これによってただの船が宇宙を飛び、星をも蹴散らす宇宙船へと魔改造された。
「俺様にかかれば海だろうが砂漠だろうが宇宙だろうが関係ねえ!俺様の覇道は誰にも止められねえんだ!ゲッヒャッヒャッヒャッ!」
ご機嫌なイカリは笑いながら酒をラッパ飲みする。久々の航海に美味い酒。危険で楽しい『第四界』。陰気臭い魔術師や喧しい騎士どもが乗っていることは気に食わないが、彼の気分は悪くなかった。
「飲酒運転になるぞ。酒はほどほどにしておけ。正直に言うと、酒臭いから飲むな」
そんな気分に水を差すような物言い。発信源はいつの間にかイカリの横に立っていた。
神経質そうな顔つきは不快そうに眉間に皺を寄せている。真っ赤なネクタイをしっかりと締めており、パリッとしたスーツは皺ひとつ無い。
「ゲッヒャ!小うるさい奴がまだいたなぁ・・・。呑よぉ、久々の娑婆なんだぜ!少しは良いだろうが!」
酒臭い息と共に唾を飛ばすイカリにますます不快さを表す呑と呼ばれた男。胸ポケットからハンカチを取り出すと眼鏡を拭き始めた。眉間の皺をより一層深くしてイカリを睨みつける。
「ここの中心はお前だ。指示を出せずに酔いつぶれては困る。正直に言うと、殺してやろうか!」
眼鏡を掛けなおしてもなお目の鋭さは変わらず、殺気を放つ呑。二人の間で殺気や闘気がぶつかり合い、船体が軋む。
『第四界』の攻略は、最悪で険悪なスタートを切ることになった。