受け入れられたプレイヤー
基本的に強者たち(プレイヤー)はここの住民に受け入れられていない。
だが、例外というのはどこにでもいる。積極的に融和に動き、今なお精力的に動いている『一点紅』がまず挙げられる。治安維持に勤しむ『六道』も比較的好意的に見られている。
彼らは『あの日』から住民に対して歩み寄りを見せたため、好き勝手に動く連中に比べればかなりの好印象だ。
しかし『あの日』以前より『Unknown World』で地位を確立し、恩恵を与えていた存在には敵わない。
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中央の城にほど近い場所。そこにあるのは大きな広場を持つ建物だった。城には見劣りするが清潔で品がよく、それでいて活気の溢れる所であった。
正面、右、左と三つある大きな入り口は人の出入りが途切れることなく続いている。
そこは『三業』と呼ばれる強者たち(プレイヤー)が築き上げた大型複合ギルド、『三社員の小屋』。食う・寝る・遊ぶは勿論のこと鍛冶や加工、果ては病院や金融、結婚相談所まである小屋とは名ばかりの超大型施設である。
『三業』の働きによって『Unknown World』の生活水準は大幅に上がり、今でもその基盤を支えている。『何でも出来る』ゲームという自由度の高さから、そのゲームを根底から変えるという暴挙を成し遂げた。
因みにこの世界の貨幣単位はZと呼ばれ、銅貨、銀貨、金貨、紙幣が存在する。本来は金銀銅貨のみであったがより便利にするため、これも『三業』が紙幣制度を無理やり導入した。
生活基盤と経済の掌握、という所謂一つの世界征服のようなものを成し遂げた『三業』は敬われはされども嫌われてはいない。非常に稀な例ではあるが。彼らは今日に至るまで益しかもたらしていないからである。
後ろ暗くない善行による支配は時に犯罪者よりも手に負えない。
『三業』を排そうとするには経済と民衆と娯楽を敵に回すということになる。人間が誰しも持つ三大欲求をこの世界で完全に抑え込んでいる彼らは実質『無敵』である。
彼らは基本、攻略にはノータッチであり周りもそれを承知している。『二つの道』のような直接的な後方支援にも関わらない。既に役割を確立している彼らの行動は変わらない。
この世界で経済回して、生活に彩を加え、娯楽を与え、仕事を提供するのが彼らの仕事。
素敵に無敵な彼らの元には人が集う。二大団長どころか女王陛下にだって無下に出来ない彼らは今日もその辛腕を振るう。業を背負いし彼らの欲も尽きることは無いからだ。