忠誠を示せ
「女王からの激励を頂戴した以上、情けない姿は見せられない。・・・恩恵の有無も関係無い。我らは戦い、成果を示すことこそが女王への忠誠の証となるだろう」
騎士団長の言葉に熱い目線によって応える。下がっていた士気が燃え上がっているのを感じる。単純なものだと軽く笑うが、やる気があがることは大歓迎だ。
「お前たち騎士や魔術師にあって、強者たち(プレイヤー)に無いもの・・・それは鍛錬や研鑽によって積み上げられた技量だ」
「奴らが鍛錬をしていないとは言わん。じゃが、ほとんどが己の恩恵を伸ばす形でしか鍛えとらん。・・・中には完全にバグのような存在もおるがの・・・」
皆の頭にいつも全裸のイワン(変態)の姿が浮かぶ。頭の中にさえ長くいて欲しくはないので早々に気持ちを切り替える。
「基本となる魔術や闘気術を少し備えたぐらいで、あとは極端なものとなっている奴がほどんどだ。そのとがった能力故『一点紅』殿は都度、攻略に適した者を選び出すのに苦心している」
この世界の住民の大半が抱いているプレイヤーへの評価。『力だけを貰って得意がっている馬鹿ガキ』というのは的を射たりというものだ。馬鹿ガキの集団に統率やら何やらを求めることが間違っている。
「長所を伸ばすことが悪いとは言わん。儂もカイゼルもある意味では極端な鍛え方をしておる。だが積み上げてきたものが違う」
元がゲームのキャラなのに何を言ってるのかとも思う発言。だが、『Unknown World』がプレイヤーにとって現実になる前から、彼らはここで生きてきた。『設定』と一言で切って捨てるのはこの世界で生きているものを否定することになる。
「この世界の住民としての誇りは捨てるな。だが、足を引っ張る無用なプライドは捨てよ!」
各団長は首から下げていたブレスレットを掲げる。輝ける石を胸に抱く聖母を象っている。ブリリアント家直属の臣であることを表す大事なもの。騎士や魔術師も同じように掲げる。
「女王陛下に覚悟を捧げよ!忠義を尽くせ!これからは如何に泥臭くとも良い!内に秘めた誇りを示せ!」
青ざめていた顔は血色を取り戻し、暗かった眼は轟々と燃えている。
「獣やガキに負けるな!人としての強さを見せつけるんじゃ!」
その日、中央の城から窓が割れんばかりの『人』の咆哮が鳴り響いた。
強い覚悟と深い忠義に彩られた叫びは何分も続き、女王に諫められるまで続いた。