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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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卵を守れ

 卵が割られれば終わり。そんな状況で無防備に卵だけを射出するなんて、この男が許すはずも無く。


 「『三歩法則(オレルール)』!『卵を害することは出来ない』領域だ!」


 ひょっこりと顔を出したハイド。飛ぶ卵にしがみついて卵だけを守る領域を作り出した。


 決して卵を割られないようにするために卵『だけ』が害されない領域を。


 「うぼふっ!ぐえっ!」


 しこたま殴られるハイド。しかし卵からは離れない。ここで離れてしまったら卵が完全に無防備になってしまう。


 「気張りなさいよ、ハイド・・・」


 仕事が終わった灰鴉と門構姉の二人は見守る事しかできない。仮に卵が破壊されたら、攻略失敗としてすぐに離脱をしなくてはならないが、ギリギリまでは留まる。


 「すみません!止めきれなくて!あと何発か追加で行きます!」


 歯車も健闘しているが、相手を切らずに戦うのはかなりの労力らしい。襲い掛かってきた死体の足を反射的に切り飛ばし、闇の傀儡を増やしてしまう。


 切り飛ばされた足や腕は執拗にハイドを嬲る。ハイドの息の根が止まれば領域も消え、卵を害せるので闇も早急にハイドを殺さねばならない。だが、闇は楽しそうにハイドを嬲る。


 (へっ!抵抗しない命を見て、嬲らない選択は取れねぇだろ!お前にある『聖光龍』に対しての恐れは、溢れ出る悪意や害意には遠く及ばない!いま、目の前の命を弄ぶ楽しさを無視出来ない!)


 確実に卵は壊したいのだろう。飛んでくる死体は卵に当たれば割ることが出来る威力を持っている。だが、一撃でハイドを殺せるものでは無い。痛みと恐怖で苦しませながら死に追いやる程度だ。


 「ごぼへっ!あががっ!」


 ハイドが攻撃を受け苦しむ声を上げるたびに闇は震えるように蠢く。よっぽど愉しいのだろう。


 たった1キロも無い飛行。数十秒にも満たない移動の中で、ハイドは雨のような暴力を受け続けている。


 「・・・ぶっ!あっぶねぇ!軽くトんでた!たかだか数百メートルなのに長い!」


 だが、ハイドの頑張りにより、闇の澱みまではあと目と鼻の先。着弾まで数秒も無い。


 「まずい!剣を持った手が行きます!」


 歯車からの警告を聞き、振り返ればすぐそこに迫る『光火剣』。ハイドもろともに卵を突き刺すつもりなのだろう。


 迫る凶刃に対し、想定内だとばかりに笑うハイド。顔面はボコボコにされたおかげで醜く腫れ上がり、見るも無残で情けない様子を見せても、彼は笑う。


 「仕上げだ・・・・!」


 ハイドは卵を力の限りに押し、空中で卵をさらに加速させ、自分から卵を離す。


 卵は予定通りに闇の澱みに触れた。留められていた闇を残らず吸収した卵には即座に罅が走り、殻が四散する様に割れた。


 蛇のように長い体。一枚一枚温かな光を発する鱗。風も無いのに穏やかにたなびく髭。野蛮さが微塵も感じられない、透き通るような牙。雄々しくも高貴さが感じられる一本角。


 周囲の闇を深呼吸をするように吸い込み、美味しそうに堪能した後に、叫ぶ。


 『LUUAAaaaaaaa――――――――――――――!』


 『第三界』の支配者。第三天、『聖光龍』がここに再誕した。


 「へっ・・・やって、やった・・・ぜ・・・・!」


 卵を死守するべく暴力に曝され、挙句は心臓を剣で貫かれたハイドは、空を飛ぶ『聖光龍』を確認して満足そうに呟いてから目を閉じた。


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