表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
63/100

悪意の澱み

 「・・・見つけたよ。悪意の澱み。深くて不快な暗黒」


 目を閉じたまま呟く灰鴉。彼女は能力の『香り』を使わずに探知をしていた。

 能力による探知ではあまりにも害意や悪意を拾い過ぎてしまう。そこで、曝された悪意を忘れないうちに自身の感覚を強化し、『第三界』の中に流動して点在する闇の濃い部分を探り当てた。


 感覚の強化は『Unknown World』の住民なら誰でも使える『闘気術』の中の一つ『鋭敏術』を使った。身体能力ではなく感覚の強化。肌で感じた悪寒、耳で拾った無音、そして何よりも精神を抉るように刺激する悪意、それらを敏感に感じ取った。


 「方角は真東。距離は・・・大体8、いや、900・・・」


 「近いな。それぐらいなら耐えられそうだ」


 「でも、歯車たちの少し横を通ることになる。気をつけて」


 門構姉はハイドに頼まれて作っていた物に卵をセットした。

 それは糸で出来た大きなパチンコだった。引き絞った糸はギシギシと音を立てている。いつでも発射できそうだ。


 「『糸の砲台(スリリング・ショット)』。そこまで遠くないなら、山なりじゃなくて直線で最高速で撃てるわね」


 「速さが重要だからな。じゃ、手筈通りに」


 灰鴉が構える番傘の先。香炉が付いている菊座には目に見えるほどの『香り』がブーン・・・!という音を上げながら凝縮されていた。


 目をカッ!と開いた灰鴉は番傘を振り抜いた。凝縮された『香り』が発射される。あまりの勢いに番傘が逆傘になる。


 「これでもう逃げられない・・・!『此処炉香り』!」


 飛んで行った『香り』の塊は、目標地点に着弾。その地点を中心に、周りを『香り』が包み込んだ。


 「いつもの数倍濃い『香り』で闇を包み込んだよ!あの結界の中に深い『闇』がある!薄まる前に!早く!」


 「っ!?発射!」


 張り詰めた糸を切ると、セットした卵がものすごい速さで射出された。

 轟音を立てながら空を飛ぶ卵。人の大きさにも匹敵する卵。射線上にものがあれば引き潰されてしまうだろう。


 闇は何をされるのかを察した。己が一部が気に食わない邪魔な何かに阻まれて動けないでいる。そこに迫る天敵。


 鎌を持つ人間と遊ばせている人形を無理やり動かして、飛んでいく卵を打ち落とそうとした。


 「させません!」


 歯車は死体を阻んだ。しかし、やはり歯車も限界が近いのだろう。咄嗟の動きだったため、いつもの癖で腕を切り落としてしまった。


 「いけない!」


 返す手で切り落とした腕を膾切りにしようとしたが、動かせるものが増えた闇は体で鎌を受けさせ、腕は卵に向かって動かした。


 いくら卵が高速度で発射されたとはいえ、大きさが大きさ。空気抵抗などによってその速度は落ちる一方。しかし未だにこの世界に広がる闇はバケツリレーの如く、空中で何度も腕を加速させることが出来る。


 飛んでいく卵に追いすがる腕。卵を破壊せんと迫る凶弾が今まさに卵に追いつかんとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ