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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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闇の執念

 『聖光龍』の卵に闇を吸収させる試みは佳境へと突入した。ように感じる。


 最初には聞こえなかった心臓の鼓動のようなものが卵から聞こえ、もぞもぞと動き始めている。


 あと一押し。決定的なひと押しがあれば孵ってくれるという根拠のない確信がある。

 しかし、卵が大きくなり機動力が減っただけでなく、闇も学習をしたのか、うかつに攻撃を仕掛けなくなっていた。歯車が駆けても追い縋れず、門構姉の糸を使ったトリッキーな動きでも闇を捉えられない。


 「あと少し・・・あと少しのハズだ・・・!気ぃ抜くなよ・・・!」

 自分の都合の良い領域を作り、戦いは自分が有利の中でしかやってこなかった、この中で最も戦闘能力が低いハイド。クスリで痛みを誤魔化しながら無視できないダメージを負っている歯車。精魂尽き果てた状態から絞り出すように能力の行使を続ける門構姉と灰鴉。誰が倒れても不思議では無い。


 門構姉はふと視界の隅に動く者を捉え、受け取った卵をほぼ反射的に突き出した。


 「あっ・・・」

 「しまった!罠だ!」


 動いていたものは、首の無い死体。ハイドに運ばれ用済みと打ち捨てられていた小唄薫の死体。闇から延びる糸のようなもので動かされているようだ。

 「まだ食われていなかったのか!まずいぞ!あれはまだ闇じゃない!卵を割られるぞ!」


 糸で卵を動かす様を見て学習したのだろう。首なし死体の手には生前彼が愛用した『光火剣』が握られている。あんなもので卵を攻撃されれば終わりだ。


 門構姉は驚きから即座に気を持ち直すと、卵に繋いでいた糸を引っ張り手元に引き戻そうとした。


 だが、闇の行動が一手早かった。死体に配慮するはずも無く、骨が折れ、肉が千切れる音を発しながら小唄薫の体は凄まじい速さで襲い掛かってきた。


 咄嗟の判断で引き戻すのを途中で止めたおかげで、剣が卵を叩き割るのは避けられた。しかし、繋いでいた糸を全て断ち切られてしまい、卵は無防備となった。


 「ああっ・・・!」

 「ちょっとまずいですね・・・」


 歯車は素早く動き卵を回収しにかかる。だが、今の今までかなりの広さの中で卵の受け渡しをしていたため、お互いにかなり距離がある。如何に歯車の足が速かろうが間に合わない。


 「クッソ!死んでから迷惑かけんなカブト虫!」


 『第三界』を攻略するためのパーティ。闇にとっては無粋な侵入者。この世界を掌握した闇にとっては邪魔な存在。しかし、闇からは手が出せなかった『聖光龍』の卵に干渉が出来る駒を与えてくれた。鬱陶しい闇を食む卵を壊す絶好の機会である。


 今までの鬱憤を晴らすべく、闇は乱暴に死体を動かし、周りで静止を叫ぶ連中を無視し、忌まわしき卵に死体の持つ剣を力の限り打ち付けた。


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