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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
57/100

迫る決着

 『聖光龍』の卵は四人の間を凄まじい速度で飛び交っていた。

 受け取るときは優しく、闇に当てるときはぞんざいに扱われた卵はすくすくと成長し、今ではバランスボールほどの大きさにまでなっていた。


 「闇も下手を打ったな!『第三界』のあらゆる物を食い過ぎたせいで、逃げる余裕を自ら無くしちまっている!」


 楽しそうに卵を投げるハイド。闇からの猛攻によって決して浅くはない傷を負っているがその表情は明るい。闇が怒り猛り攻撃の殺意が増すほどに卵に闇を食わせる機械は増える。勝利の天秤はこちらにどんどん傾いてくるのをひしひしと感じていた。


 「おっとっと!?・・・しっかり投げな!ここまで来ておじゃんにはさせないよ!」


 器用に番傘で卵を拾い上げ、傘回しで加速をつけて、襲われそうな人に向けて卵を渡す。


 灰鴉はただ単に卵の中継と闇の感知をするばかりではなかった。

 卵を三人に渡す際に卵に自身の能力の『香り』を付着させ、受け取った人に『香り』を移し、闇から守っていた。卵には『香り』が残らず、闇の吸収を阻害しないという徹底ぶり。


 (『生え香り』。渡した『香り』も数秒で消えるから、闇から避けられ続けはしない。・・・『香り』の生成が追い付かなくなるまえに孵ってくれよ・・・!)


 希望を持てたからと言って、攻略を達成できるかはわからない。現に今までのダメージは確実に四人を蝕んでいる。


 四人の中で最も機動力のあるはずの歯車は、動きが徐々に精彩を欠いてきていた。

 門構姉に傷を塞いでもらっているが身体中が傷ついているのには変わりはない。激しく動いているため蝋のコーティングの下から血が溢れてしまっている箇所も見て取れた。


 (う~ん。血を流し過ぎましたかねー。痛みは感じなくとも体が重くなってきました)


 クスリによってタガの外れている歯車も、不死身になっているわけではないので体の不調が無視できないレベルまで追い詰められればその動きに翳りが出るのも当然だ。


 (残りのストックは~・・・『1440分』。もう攻撃に回さなくてもいいとして、どれぐらいもってくれますかね)


 歯車の『眠らない(ワーカーホリック)』。

 『睡眠から覚めて眠っていなかった時間をストックする』という能力。ストックした時間を消費し、一時的に自身のステータスを上げたり攻撃の強化をすることが出来る。ハイドはクスリを多用することによって可能な限り眠らない様にしている。


 (今回の攻略にあたって三徹しときましたが、ここまで来るのと、それと先程の山に対して使い過ぎましたね。鈍っていく体に強化を入れ続けるのにも限界がありますし)


 隙を見て素早くクスリを口に放り込み、飲み下す。相変わらずバッドトリップが続くのか思考は冷静そのものだ。クスリを飲む甲斐が無いので嫌なのだが、靄がかかった頭ではこのキャッチボールは続けられないだろう。


 無意識にふらついてきた体を動かして卵を受け取り、闇を吸収させてから再び投げ返す。


 (早いところ孵ってくれないですかね)


 クリアな頭の中に不満や焦燥が湧かしつつ、表情には出さずに歯車は駆ける。


 この思考の間に、バランスボールから大玉にも迫る大きさになった卵に対して希望と共に苛立ちを感じざるを得なかった。

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