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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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大逆襲の一手

 「何やってるの!?」


 門構姉は突然のハイドの奇行に声を上げる。二人も犠牲にして手にした攻略のカギになるかもしれないものを。今までの頑張りを無に帰すようなことをしたハイド。


 落ちて来る山に卵をぶつけたらどうなるかは明白。山の表面を内容物で無様に汚す様は容易に想像できる。


 しかし、灰鴉は感じ取っていた。光る卵が投擲されるとき、溢れんばかりの悪意に塗れていた闇が『恐怖』した瞬間を。


 「え!?」


 光る卵は落ちて来る山を接触したところから抉り取るように吸収していった。

 卵は山を吸収していくとともに徐々に大きくなっていき、野球ボールよりも小さかった卵は山を貫通するころにはバランスボールほどの大きさとなっていた。


 「よし!読み通りだ!山になっていようが、あれは闇で出来ている!『聖光龍』にとっては大きなスポンジケーキと変わらない!」


 一行を始末するためとは言え、自由落下するものを作り出してしまった闇の落ち度だった。武器やらモンスターの姿ならば回避をすることもできたが、山を形どってしまったがため、今の今まで避けていた『聖光龍』の卵を避けることが出来なかった。


 「勇者様がおっ死んじまってどうなるかと思ったが、それがいい方向に転んだ・・・!『聖光龍』の卵を孵すには光は邪魔だ!」


 闇を食らい、明るい軌跡を作り出した卵を眺めながら不敵に笑う。卵はまた落ちて来る過程で闇を吸収し、大きくなって落ちて来る。


 「そういうことで、うちらがやることは『聖光龍』の卵に闇を食わせること。そのためには卵を闇に近づけなきゃならない」


 番傘を開き、落ちてきた卵を優しく受け止める灰鴉。傘回しの要領で卵を回転させ速度をつける。降りしきる石も元は闇。余すことなく卵にぶつけ成長させる。


 シビレを切らしたのか闇が再び、槍や剣を象りハイドを襲った。それをいち早く察知しした灰鴉は回していた卵をハイドに放り投げた。

 ハイドは素早く卵をキャッチし、自身を襲う武器を卵でガードした。武器はそのまま卵に吸収され、消えた。卵はまた少し大きくなった気がする。


 「つーわけでこれからはキャッチボールの時間だ。灰鴉を中心に卵を投げ合って闇の攻撃を誘い、卵をぶつけて闇を食わせる。『聖光龍』が孵るまでこれを繰り返す。・・・簡単だろ?」


 ハイドはまた灰鴉に卵を投げ返した。番傘で受け止め、また傘で卵を回す。


 「じっと置いておいても決して闇は『聖光龍』の卵に接触しない。なら、あっちから手を出してきたところに卵を持ってくりゃ良い」


 山が地面にズズン・・・と落ちた。大規模な山が落ちてきたにしては軽い音と共に砂塵が舞い上がった。


 一行は卵が空けた大きな穴のおかげで潰されずに済んだ。


 「卵はしっかりキャッチしろよ。砂地とはいえ落として割るなんて洒落にならん」


 山だったものは瞬時に闇へと戻り、周りへと溶け込んでいった。動かない的となることを恐れたのだろう。


 「盾にしておいて随分じゃない?」


 灰鴉から卵を受け取っていた門構姉は溶け込む闇に追撃するように卵を投げた。実はハイドや黒狼よりも力の強い彼女が投げた卵は凄まじい速度で闇に追いすがり、吸収していった。


 隙を晒したかに見えた門構姉に闇が襲い掛かる。が、糸で繋いでいた卵を素早く手元に引き寄せ、闇を吸収させる。


 「下は砂地とはいえただの地面だからな。闇じゃないものに対してはちょっと丈夫なモンスターの卵だからな。優しく扱えよ?」


 徐々に大きく、輝きを増している卵を見てほくそ笑む。


 「固まっていると効率悪いですね。少し離れますよ」


 歯車は卵を受け取ると高速で動き、闇の中へ突撃した。卵を避ける様に闇が晴れる。逃げ遅れた闇は吸収され、さらに周りが明るくなる。


 「待ったはナシだ。自分の身は自分で守ってくれ」


 各々がばらけた位置に移動し、構える。苛立ちと憎悪からか闇がそれぞれを食らおうと醜悪に蠢く。


 『第三界』攻略を掲げ、死と隣り合わせのキャッチボールが始まった。


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