圧縮される作戦会議
ハイドの能力の決められるルールとペナルティは一つずつ。
簡単に守れる、かつ破れるルールでは時間を引き延ばすことは出来ない。そこでハイドは課されるペナルティを利用することにした。
ルールは『目を合わせてはならない』。
ペナルティは『体感時間を100倍にする』。に設定した。
これによって、領域内で目を合わせて会話をしている間は、外の百倍の時間で話をすることが出来る、という領域を作り出した。
「まず、この卵だな。何の卵だと思う?」
「普通に考えれば『聖光龍』の卵じゃないのかい?ここで光っているモンスターと言えば」
手に持つ光る卵を、ハイドから視線を逸らさない様に視界の端に入れながら答える。
「取り敢えずこれが『聖光龍』の卵だとしよう。何故闇に食われずにいる?ここの世界の一切合切は闇に食われたはずだ。少しの光しか発してない卵ごときが残っている?」
「そうだよね・・・この世界の支配者であり、闇にとっても一番気に食わない存在だっただろうに。卵とは言え、残しておく理由なんて無いはず・・・」
「光をも飲み込む闇が手を出さない・・・いや『出せない』理由・・・」
ハイドと灰鴉は頭を捻る。目標の無いまま攻略に来て、何も分からないまま進み、犠牲を出しながらもやっと見つけた物。意味のある物に違いない、そうでなくては困る。その思い込みは視野を狭めているかもしれないとは思いつつ、今はこの卵から光明を見出すしかないのだ。
「うちらの出す光と違ったりするんじゃないかい?『聖光龍』っていうぐらいだ。何か神聖なものなんじゃないか」
「神聖だろうが邪悪だろうが塗りつぶされるだろうさ。お前は直に感じていたんだろう?底知れぬ悪意と果てしない害意を孕んだ闇を。それにそんなことで食うのをやめるなら『第三界』の景色はもっとバラエティに富んだはずだぜ」
ハイドも灰鴉から視線を逸らさぬ様にゆっくりと懐から地図を取り出し、邪魔にならない位置に広げて見せた。
「街や村には教会だってあっただろうし、光魔術や聖魔術を使える奴らなんてゴロゴロいただろう。そも、『聖光龍』が生きていた時でもここは闇の世界であったことは変わらなかったんだろ?闇に対する防衛術なんざいくらでもあったはずだ」
「それらが通用しなくなったのは・・・『聖光龍』が死んでから。闇の中で君臨していた支配者が闇にやられるとは考えにくいし」
「十中八九、『敵』とやらの仕業だろう。・・・『第一界』担当とか言っていた『偽善者』って奴がやったことを聞いたか?『支配者から逃げの心を奪った』以外、特に何もしなかったんだとよ。たった『一手』。・・・この『第三界』でも、決定的な『何か』をした。おそらくそれが『聖光龍の殺害』だったんじゃねぇだろうか・・・」
「しかし、支配者が目障りだとは言えわざわざ『敵』とやらがそんなことを・・・?」