表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
52/100

足掻きを魅せろ

 ハイドと灰鴉が作戦会議を開いている間、歯車は足掻いた。


 (ストックを全部吐き出せばあの山を両断は出来るでしょう。しかしそれだと後が続かない。もし仮に二発目、三発目が来れば流石に断ち切れない)


 こちらの力を小出しにしつつ、決して闇が本気でこちらを殺しに来ない様に嬲られる必要がある。それでいて、少しでも山の落ちて来る時間を延ばすために攻撃を続けなければならない。


 (お二人とも早いところ頼みますよ)


 歯車は大鎌を振るう。山の表面だけを傷つけるような力加減。降りしきる石に曝されて血まみれになっている歯車の姿はさぞ滑稽に見えているだろう。


 (おっと、お嬢さんの能力ですか。出血を抑えてくれるのは助かります)


 先程まで血が流れ出ていた傷口を覆うように、薄く白い膜が身体中にコーティングされている。出血が抑えられるだけでなく石からも体を守ってくれている。


 「歯車さん・・・何も出来ない・・・私を恨まないで・・・」


 門構姉は悲観そうに呟く。ちゃっかりがっつり仕事をしている。闇に気取られない様にさりげなく、わかりにくく能力を行使している。


 門構姉の『強欲の大罪(シリアス・ロバリー)』は『触れたものを蝋で固める』能力であり、本来の使い道としては蜘蛛の糸を伸ばして相手に触れて、対象の動きを封じるものだが、今は体を保護するという使い方をしている。


 (あくまで傷口を固めてくれているだけなので、動きが阻害されませんね。いい能力です)


 今まで防御で活躍していた糸の壁も蝋によるコーティングをしていたため、かなりの硬度を誇っていた。それが体を守ってくれているお陰で石が降ってきたくらいでは傷はつかない。


 (まあ、痛がる素振りぐらいしておきますか。そのほうがあっちも気を緩めるでしょうし)


 一度膝をついて、体から血をまき散らし、唸り、山を睨む。どうにか立ち上がる体を見せてから再び大鎌を構え、斬撃を放つ。


 「くそう、くらえ『60分』。『契り人塵』」


 線状に長さが揃った斬撃が山に飛んでいく。再び山の表面に傷跡を残し、周囲に石が降り注ぐ。それらを痛そうにうける歯車。


 言葉が棒読みに近く、表情も然程変わらない歯車の反応でも十分闇はお気に召しているようで追撃や奇襲は来ない。


 (もうそろ走らないと潰される前に逃げれないぐらいになりましたね。お二人はまだですか?)


 焦れたように二人の方を見ると、会議は終わったのかこちらに歩いてくるのが伺えた。二人の表情は切羽詰まっていた先ほどとは違い、不敵な笑みを浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ