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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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光る卵

 闇が広がり、人だろうがモンスターだろうが、木だろうが森だろうが、村だろうが山だろうが。それら一切合切を食らい、この世界を砂と闇だけの世界にされたというのに。


 目の前で弱弱しく光る卵は一体何なのだろうか?


 「ボーっとしているところ悪いですけど。上、どうします?」


 歯車からの言葉で再起動したハイドと灰鴉は視線を卵から放し頭上を見る。


 ゴゴゴ・・・と山が降ってくるのに、対抗策が何も浮かんでこない。


 「距離は9,いや10000、落ちて来る速さから計算すると・・・およそ1分後!それまでに何とかしねえと・・・!」


 「この卵持って走るかい!?うちらの足ならどうにか落下範囲から逃げれるんじゃないかい!?」


 光る卵は手がふさがっている灰鴉ではなく、運ばれている門構姉が手に取った。


 「いや、仮にあれの範囲外に出ても、二の矢、三の矢が飛んで・・・落ちて来るでしょ」


 「そうですね。必死こいて走り続ける羽目になりそうです。この闇の中でそれは自殺行為ってもんでしょう。幸いというか、あれ以外の攻撃が止んでいる今、うかつに走り回るべきじゃないでしょう」


 門構姉も歯車も冷静に現状を分析する。

 確かに自分たちがあれから逃げるという行動をとった場合、闇は有効打であると気づき次々と投下を続けるだろう。さらには山の投下の他に襲撃の手を重ねこちらを物量や質量で押しつぶしてくるだろう。


 「私たちは『絶望に塗れた状態で腹の中の希望の光を気付かせない』行動をする必要があります。闇に対して、最善手を取り続けると状況はあっという間に悪くなっていきます。ハイドさんと灰鴉さんは一度能力を解いて、あきらめた様な感じを出して、対策を考えるのに注力しててください。私は足掻きと無駄な抵抗を演出するので。」


 ハイドと灰鴉が能力を解除する。己の侵食を阻む領域や結界が消えたのを感じ取り、闇が嬉しそうに蠢いている。山を落としたことが最適であったと闇に誤解を植え込む。


 歯車は大鎌を構える。鎌の刃に黒く禍々しいオーラが宿る。


 「『60分』・・・『悔い契り』!」


 大鎌を振り抜くと山に向かって黒い斬撃が飛んでいく。山の表面に大きな斬撃痕が走る。だが山の破壊には至らず、山は落下を止めない。


 「死力を尽くし、抗い続ければ、闇はその姿に愉悦を覚えるでしょう。少しは落ちて来る速度も減るやもしれません。私が苦しむさまを長く見たいが為に。・・・逃げるのはギリギリのタイミングにしてくださいね」


 歯車が再び大鎌を構え、力をためる。先ほどよりもより大きくオーラが立ち上る。


 「『120分』・・・『契り巻乱』!」


 何度も鎌を振り抜き、無数の斬撃を放つ。

 今度は山の表面をズタズタに切り裂いたが、山より先に砕かれた石や岩が降り注ぎ、一行を傷つけるだけで山は壊れない。降りしきる石により、矢面に立つ歯車の体は至る所に石によって抉られ、血を流している。その痛々しい姿に一行は手を貸そうとしたが歯車は振り払うように、再び大鎌を構える。


 「私を使い潰すつもりでいなさい。その卵が何なのか?山を突破した後どう動こう?・・・攻略のことだけ考えていなさい。」


 ハイドはやるせなさそうにグッと拳を握ると一つ深呼吸をしてから灰鴉を側に招いた。


 「作戦会議だ。あいつが少しでも時間を稼いでくれている間に、打開策を練る」


 灰鴉はハイドに近づくと、抱えられていた門構姉はすい、と二人から離れる。光る卵は灰鴉の手に残る。


 「考え事は私には向かないわ。・・・闇に感づかれない程度に歯車とあなたたちの援護をしてるから、お願いね」


 無様に足掻いている体を崩さぬよう、ぺたりと地面に座り込み、空を見上げる門構姉。懇願するように、庇護欲を駆り立てるような情けない泣き顔を晒す。しかし、表情と裏腹に手だけはシャカシャカと小さいながら素早く動かし、糸を使いながら歯車をサポート、ハイドと灰鴉の二人を守るようにしている。


 「あいつらの様子は気にするだけ時間の無駄だ。俺たちでどうにかしねぇと・・・」

 「けどあと数十秒だよ!?そんな悠長には・・・!」

 「やってみるだけやるしかねぇだろう!・・・『三歩法則(オレルール)』でどうにか時間を引き延ばす。最大出力で発動する。だからもうちょっと側に来い」

 「もっと近く?・・・ほんとに足短いんだね、アンタ」

 「殺すぞ」


 足の短さを指摘され殺意を覚えるハイドだが、時間が無いので怒るのは全てが終わってからだと、気を張りなおす。


 「『三歩法則(オレルール)』発動。必死こいて頭を回すぞ」


 外は二人に任せて、思考と議論の領域を作り出し、現状打破だけでなく、『第三界』攻略を掲げて話を始めた。


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