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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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糸×肉=最強の盾

 「・・・こうなれば力業で進むしかないか・・・。今更目標を変えたところでどうなるわけでもなし。・・・糸の壁を変形出来るか?こっちの方向に延びる形で」


 門構姉が指を振ると、糸の壁は通路の様に形状を変える。


 「良し。灰鴉、お前は少し能力を閉じて休め。だが歩きのペースを上げるぞ。門構姉は通路を作り続けろ。強度はある程度でも構わない。俺たちに闇が及ぶ時間稼ぎさえ出来れば上々だ。勇者さんは変わらず灯りを頼む。歯車は突破してきた闇の撃退だ」


 ハイドは『猿駕籠』に近づき門構弟を引きずり出した。


 「お前は囮製造係だ。猿には悪いが俺たちの囮として死んでもらうしかねえ。だからお前も自分で歩け。死にたくないなら歩いて猿を補充し続けろよ」


 「え~ん。歩くのやだよ~・・・。助けておねえちゃ~ん~・・・」

 「黙って歩きなさい愚弟。あなたにまで意識を割く余裕は無いの。死にたくないなら働け」


 使役する蜘蛛の力だけでは追いつかないと判断した門構姉は全力を出すために姿を変えた。


 下半身が黒く、艶めいた蜘蛛の体へと変わり、目は八つ開かれ口からは鋭利な牙も覗かせている。妖艶さをも感じる蜘蛛女へと姿を変えた門構姉呼び出した蜘蛛とともに、糸の壁の補強と変形に取り掛かった。


 「特に無防備になっちまってる、お前の姉や灰鴉に多めに猿の護衛をつけておけ!」


 「おねえちゃんでっかいから狭くなったじゃ~ん」


 地面に寝ころんだまま、ぶうぶう文句を垂れる門構弟だったが誰も何も反応をしてくれなかったため、心底面倒くさそうに立ち上がると、自分で彼らと共に歩く。


 「強いお猿さんだとここじゃ狭くて出せないけど~。壁になるようなお猿さんか~」


 灯りではなく、護衛。それでいて肉盾にもなる猿型モンスターを呼び出した。

 「ウッホ♡」「ウヒョー♡」「ウホッ♡」


 「ええい!ただでさえ華が無いのにこんなもの呼び出すな!臭くてかなわんわ!」


 パーティを取り囲むように現れたのは筋骨隆々で満面の笑顔の猿『脳筋ゴリラ』たち。

 薄めの体毛のため筋肉の付き具合がはっきりとわかるこのモンスターは、ボディビルパンツのみを着用し、肉体を目立たせるためオイルを塗っている。正直側にいてほしくないモンスターだ。


 「いきものである以上、臭いのはしょうがないでしょ~」

 「毛色が違うだろう!寒々しい世界観から一気に男子学生の部室の空気になったわ!」


 小唄薫が地団太を踏みながら叫ぶ。こんなところでコントみたいなやり取りをする余裕があるのもすごい事だ。呼び出された猿は各メンバーを守るように、もとい体を見せびらかすようにポジションを取った。

 「守れと言われたのは女ふたりだろう!なぜ私のところに来るんだ!」

 光のおかげで自身の肉体も輝くと感じた『脳筋ゴリラ』たちは小唄薫の周りに多めに集まってポージングを披露している。心なしかこの糸の壁の中の気温や湿度が高まったかのように感じる。


 「・・・勇者さんは今回の要だからな。守りが多いことに異論はないしな。ゴリラどもはそれでいいぞ」


 深く考える事じゃないと早々に判断したハイドは攻略の方に意識を割く。

 糸の壁と肉の壁に守られていながらも少しも安心は出来ない。時間をかければかけるだけこちらが消耗し、いずれはパーティ全滅だ。とにかく『龍ヶ峰』に急がなくてはならない。

 「もし何かしら進展があるなら、闇からの攻撃や反応にも変化があるかもしれん。気をやらない程度に集中していくぞ」


 ハイドは先に進むことと攻略のことを中心に考えているため、いまは小さいところまで気を回す余裕が無い状態だ。いつもの彼ならきっと思うところはあっただろう。

 能力を一度解除して冷静になっている灰鴉のみが今の自分たちの行軍を俯瞰する余裕があった。


 光を発するカブト虫みたいな甲冑男を中心に、肉体を誇示するゴリラに囲まれている。集団の中には寝間着男に蜘蛛女。物差し男に大鎌を持つ目がヤバいヤク中。それらが陣形を乱さず糸の壁の中で移動している。


 「逆にうちが浮いてるじゃないか・・・なんだこの集団・・・」


 攻略に参加したことをまた別な意味で後悔している灰鴉は人の目が無いことを感謝しつつ、早く攻略を終わらせようと決心するのであった。


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