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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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ハイドのルール

 身体中の長さが記された奇天烈な服を着ているハイド。


 彼の能力『三歩法則(オレルール)』。自身を中心に自分が一つ決めたルールを課した領域を作り出す。


 ルールには強制力は無いが破るとペナルティが発生する。ルールやペナルティは領域に存在する全てに自動的に開示され、全てに平等に降りかかる。


 「お前らを守るために普段より範囲広げてるからな。あまり強いルールは課せねえ」


 能力の名の通りに、彼の能力が十全に発揮する範囲は彼の歩幅で『三歩』圏内。今広げている領域は半径5メートル程。軽いルールとペナルティぐらいしか与えられない。


 「アンタの脚がもう少し長ければねぇ・・・」


 しみじみと短足を馬鹿にする灰鴉。


 「うるせぇ!どいつもこいつもモデルみたいな体形しやがって・・・!」


 ハイドは決して身長は低くないが、如何せん足が短いため自身の能力と体形がかみ合っていないことを地味に気にしている。


 「・・・俺の能力の外側で灰鴉の能力で守る形を取っているから、外から襲われることはほぼ無いはずだ。よしんば襲われてもまず猿が襲われる。それなら対応は十分間に合うだろう」


 「でもハイド。もう少しましなルールを組めないの?何よ「他者を害するには自身の存在を示さなければならない」って」


 「ふん!勇者である私はいつもしていることだ!今更ルールに加えんでも良いわ!馬鹿者め!」


 「これぐらいで良いんだよ。どんな猛獣でもこっちを襲うには鳴き声を上げて自身の存在を示してからしか襲えない。その隙さえあれば対処の時間は簡単に取れるだろう?」 


 光るカブト虫の存在を無視しながらハイドは淡々と説明する。


 「ペナルティもそんなに重く出来ないからな。「その場で10秒身動きが取れなくなる」ってものにしてある。10秒あればヤク中が名乗りと撃退するのにお釣りが来るだろうよ」


 最大出力なら「即死」というペナルティでも課すことが出来ると言うが、あまりに重いルールやペナルティでは身動きがとり辛くなると判断しての落としどころだろう。


 「それよりも灰鴉の方はどうなんだよ?ちゃんと俺たちを守れんのか?」


 「守るものの中に邪悪で矮小な奴がいるんでね。期待はしないことさ」


 軽口を叩きながらもカブト虫と門構弟を抜いて油断をしている者はいない。


 ハイドと灰鴉は能力の常時発動により刻一刻と体力や気力、魔力が失われていく。


 一歩先を歩く歯車はただでさえ定まらない目が周りの異常を逃さない様に忙しなく動き続けている。


 門構姉はいつもやっているあやとりをする暇が無いほど集中している。彼女の足元から使役しているモノが出たり入ったりをしながら辺りを警戒していることが伺える。


 「それにしても、何も見えずに歩くのはつまらんな!私が来たのだから歓迎の一つもあって良いものだがな!」


 「Zzz・・・Zzz・・・」


 我関せずの二人に殺意よりも呆れが湧く。


 先の見えない闇の行軍。明確な死との隣り合わせの歩み。慎重に慎重を重ねながらあてもなく歩く一行。なにかしらの進展があるまで出来ることの無い者の歩みはしっかりとしながらも不安を隠せないものがあった。


 「いってぇ!蹴るなよ!」


 「ちんたら歩くんじゃないよ!足短いんだからさかさか歩き!陣形を乱すんじゃないよ!」

 「この女・・・いつか絶対泣かす・・・!」


 後ろから尻を蹴られ追い打ちとばかりに罵倒されたハイド。


 決して自分はこんなアホみたいな役回りじゃないはずだ。『第一界』決起集会の時の高みの見物強者ムーブを決めていた時が遠い過去のように感じる。

 蹴られて痛む尻をさすりながらなんだが悲しくなってきたハイドは皆にわからないように、少し泣いた。


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