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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
第二章 第三界 『暗君跋扈 クルーシブル』
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『第三界』攻略開始

――― 『第三界』 界扉付近 ―――


 話に聞いていた通りだった。


 『第三界』攻略パーティが扉を潜り抜けた先に見えたのは、『闇』。

 何も見えない。見えるものが闇という一見した矛盾。

 暗闇に目が慣れることはここでは永遠に無い。純然たる暗黒。


 『光の勇者』を自称する小唄薫が側にいることで多少は明るいが、精々4、5メートル先しか見えない。


 「もっと光量上げな。これじゃあ何も出来ないじゃないか」


 「はっはっは!それが勇者様への態度かね!?もっと媚びる様に!お願いするがいい!」


 灰鴉が大事な光源である小唄薫を殴り殺すよりも、先に動いた方が良いと思った門構姉は引きずっていた弟を小突いた。


 「起きなさい。愚弟。灯りが必要よ。あと自分で動きなさい」


 「ん~・・・これ以上明るいと眠りにくいよ~・・・痛いっ!わかったよ~・・・」


 生意気に寝言言っている愚弟を強めに殴り仕事をさせる。

 パンパンと手を叩く門構弟。


 「出てきてお猿さん。お仕事だよ~」


 眠りこけて怠惰な彼でも歴とした『大罪』のメンバー。


 黒狼大蛇がゴキブリを使役したように、門構弟も生き物を使役出来る。


 「うきゃきゃ♪」「ウッホウッホホ♪」「モキャー!」


 彼の傍らには全身を黒い毛に覆われ、赤い尻から燃え盛る火を放つ大きな猿が現れた。


 「おや、『ディーゼル猿人』かい。確かに尻の炎で明るくならあね」

 「薄汚い猿に輝きが負けるだと!あってはならない!私はもっと輝けるぞおおぼえっ!」


 より光を増そうとした小唄薫の鳩尾に番傘を突き刺し、強制的に黙らせる。


 「先が長いんだよ!猿に張り合って無駄な体力消耗すんじゃないよ!」


 「そうそう。無駄な体力は使わないの、さんせ~」


 門構弟は手を叩き、他の猿を召喚した。駕籠を担ぐ二匹の猿。『猿駕籠』だ。

 いそいそと駕籠の中に入ると早々に寝息を立て始めた。そんな弟の様子に溜息を吐く門構姉。今度は引きずっていたもう一人に蹴りを入れた。


 「今度はあなたよハイド。早く働きなさい」

 「まずはこの拘束を解いてくれませんかねえ・・・!」

 「・・・逃げたら殺すからね」


 拘束を解かれたハイドは何時間も縛られて硬くなった体をほぐしながら周りを見渡す。


 「うへえ・・・何にも見えねえ・・・距離にして5メートルが今の視認範囲だな。おい、灰鴉!お前の能力の範囲は?」


 ゴキゴキと首をほぐしているハイドは灰鴉に守れる範囲を問う。


 「範囲なぞ測ったことなんて無いね。・・・そうさな、今見える範囲の倍くらいじゃないかい?」


 「ぺっ!自分の能力把握ぐらいしとけ!まあ10メートルとしておくか・・・。ヤク中!お前は一息にどれぐらいヤレる?」


 「私ですか!?基本的に『コレ』で刈っていくので!3~4匹ぐらいなら大丈夫ですよ!」


 歯車は快活に得物を振りかざしながら答える。

 スーツを着て目をあらぬ方向に動かしながら身の丈にも及ぶ『大鎌』を振り回す。  元の世界じゃなくても即通報案件だ。


 「お、おう。わかった。・・・それじゃあ門構弟は灰鴉の効果範囲ギリギリまで猿を配置しろ。全方位に気を配らせろよ。ヤク中は俺らより一歩前に出て対処がしやすい位置に」


 「え~僕のお猿さんはおとりじゃないのに~「ならお前が前に出るか?」ぶ~ぶ~」


 文句を言う門構弟を無視して今度は門構姉を見やる。


 「私の子たちは愚弟の猿にくっつけておくわ。あとは猿たちの間にも配置する。それで対処するまでの時間稼ぎにはなるでしょう」


 やるべきことがわかっているのかハイドに先んじて己の役割を話す。


 「待てい!ここのリーダーは光の勇者様である私だぞ!物差し男に采配を決める権利なぞ無い!」


 やることが纏まりかけてきたのに台無しになりかける。

 ハイドは小唄薫の肩に手を置く。


 「勇者様よぉ。あんたはこのパーティのリーダーであり要であり最終兵器だ。つまらない指示出しなんて下々に任せておいてどっしりと構えておいてくれ。あんたの輝きは素晴らしいからな」


 「おお!そうであるか!ならばよきにはからえだ!私は勇者として輝いておこう!」


 子供でも騙されないような見え見えのおべっかと厄介払いをそのまま受け取り、上機嫌に光りだした小唄薫。


 「存外まともに攻略をする気なんだね。もっと適当な奴かと思っていたよ」


 灰鴉の少し認めたかのような発言に顔を歪ませ、舌打ちをするハイド。


 「チッ!もう後戻りが出来ねえんだ。真面目にやらねえと死ぬ。なら最善を尽くすのが基本だろ?お前たちは頭使う担当じゃ無え。なら俺が気張るまでだ」


 今しがたこの『第三界』に来るために使用した界扉を指さし吐き捨てる。


 界扉は既に闇に吞まれ、消失した。あとは進むしか無いのである。


 「決してバラけるなよ。陣形を保ったまま、確実に進むんだ」


 ハイドは入れたくも無い気合を入れ、能力を発動した。

 自身を中心として広がる能力は、自身を守る盾でありながら、他を拒絶する領域。


 「範囲が広めだから縛りは緩めだ。『三歩法則(オレルール)』」


 『第三界』攻略パーティによる行軍が開始された。

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