『第三界』攻略パーティ結成
粘液でぬれてべったりしている髪を後ろに束ね爽やかな笑顔を見せる。
「う~ん。やっぱり目覚めの一発は効くなあ~!24時間働けますよ~!」
はきはきと喋り、まともに見えるがやはり薬物にやられているのだろう。目が充血し両目が別な方向を見ている。かなり不気味だ。
「彼女を参加させます。いい働きをしてくれるでしょう。馬車馬」
「歯車。ボスからの命令です。『第三界』の攻略に参加しなさい。一番槍」
運び屋の男から指令を与えられるとビタッと直立姿勢になり敬礼のポーズをとった。
「ボスの命令なら喜んで!粉骨砕身!頑張ります!」
「歯車・・・?・・・『社畜』歯車貞一か!?そんな危険人物と一緒何て御免だね!」
灰鴉は反対の意を示す。
「・・・だけど私たちが求める『矛』としての役割には適任よ。これで攻撃の面でも不安が無くなるわ」
『一点紅』は自分の感情ではなく、あくまでも攻略を成功させることに重きをおいて考える。
「冗談キツイぜ『一点紅』よぉ!いつ背中から刺してくるかわからない薬物中毒者と背中を預けて戦えるかよ!てゆーか早くほどけ!臭くてかなわん!」
ハイドは陸に揚げられた魚のようにビチビチ跳ねながら喚く。
「私も心情的にはこんな奴らの手なんて借りたくも無いわ。だけど戦力の確保は急務よ。四の五の言ってられる状況じゃないのよ」
二つの世界をトントン拍子のように攻略したから忘れそうになるが、まだ『第三界』なのだ。あと9個も攻略するとなるとここで意地を張ってもしょうがないのである。
「酷いですよ皆さん!仲良くしましょう!ね!」
どこを見てるかわからない目で言っても怖いだけなのだが、あちらが歩み寄りを見せる以上、こちらがある程度折れないと始まらないと思った面々は渋々了承。
ここに『第三界』攻略パーティが結成されたのであった。
「それじゃあ私は帰ります。歯車。良い報告を期待しますよ。好成績」
運び屋の男が帰ろうとドラゴンの方を向くと、既に芯まで腐れ落ちており、広場の地面にどす黒いシミを残して無くなってしまっていた。
「あらら。時間をかけ過ぎましたか。歩いて帰るとしますか。御散歩」
ステッキを回しながら軽やかな足取りで広場を出ていく。
「・・・いつか、あいつとも協力しないといけないのか・・・」
嫌悪感を隠しもせずに吐き捨てる様に言った灰鴉の言葉。
これから先のことを思い、目の前の攻略がより憂鬱になったのは、しょうがないことだった。