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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
幕間 第一界 攻略後
35/100

『アディクト』

 「人の生き血を啜る寄生虫以下のゴミが一体何の用だい?鼻と目が腐るからさっさと失せな」


 番傘を構えながら降りてきた男に威嚇する灰鴉。もう片方の手は鼻をつまんでいる。


 「おお、怖い怖い。落ち着いて。深呼吸」


 手に持っていたステッキをくるくる回しながらおどけた様に手を上げ、戦闘の意思は無いことを示す男。


 その気障ったらしい態度が余計に癪に障った。それにこんな臭いの中で深呼吸できるはずも無し。


 灰鴉は番傘を開き能力を行使しようとしたが、ここで消耗しても馬鹿らしいと寸前で思い苦々しげに突き付けていた番傘を下した。


 「『アディクト』の運び屋が何故ここに?今日は『第三界』攻略の集まりということは伝えてあるはずよ。麻薬組織には関係無いでしょ?」


 『一点紅』も鼻をつまんでいる。そろそろ目にも染みてきた。


 縛られて鼻をつまむことが出来ず悶えている男二人は無視することにする。


 『アディクト』。

 この世界で最も嫌われている組織の一つである麻薬組織だ。

 麻薬を作ることが出来る能力者を頂点に麻薬の売人や中毒者によって組織され、『Unknown World』の秩序を乱し、暴利を貪っている。

 世界の滅亡を目前にしても麻薬をばらまき続け手いるため、強者たち(プレイヤー)が嫌われる要因として『一点紅』の頭痛の種の一つだ。当然、思慮分別のある人達からも毛嫌いされている。


 「まずは『第一界』の攻略、ありがとう。大感謝」


 ペコリと礼をする男。そんなどうでも良いことで来たのかとまた周りから殺気が立ち上る。


 「聞けばあのゴキブリ男が活躍したそうじゃないですか。大活躍」

 「それを受けてうちのボスも『大罪』に遅れはとれないと思ったそうで。危機感」

 「こちらからも兵隊を提供するに至ったというわけです。徴兵令」


 いちいち気障ったらしくねちっこく、白々しい笑顔で話す男の話を聞くに攻略に参加するというのだ。


 『大罪』も嫌われ者の犯罪者集団だが、黒狼が活躍したことで評判がほんの少し良くなった。更に『第二界』をイワンが単独攻略。更に更に今回の攻略にも『大罪』メンバー二名の編成。

 ここで一手打っておかないと後のうま味が減ると判断したことによる売名行為なのだろう。そんな恥ずかしいことを抜け抜けと行う『アディクト』という組織の薄汚さを感じる。


 「冗談でしょ?あなたが参加するの?寝言は寝てから言うものよ?」

 「汚らしい犯罪者は『大罪』だけで十分だ!私のパーティに華やかさが無くなってしまう!」

 「おとなしくゴミ溜めでヤク吸ってくたばっておきなよ。そうしたら皆安心するからよ」

 「臭くて汚い~。お前やだ~」


 非難轟々。誰からも歓迎されていない。


 「いやはや、大変な嫌われようで。孤立中」


 男がステッキで軽くドラゴンを叩くとグジュグジュと不快な音を出しながら一人の人間を吐き出した。

 何らかの粘液でぐっちょぐちょだが見た目はどこにでも居そうなサラリーマンといったところだ。ファンタジー世界としては非常に浮く格好である。


 「うちから出すのは私じゃないですよ。私だと周りに被害が出過ぎるのでね。自粛中」


 出てきた人間は死んだように動かなかったが、運び屋の男が懐から取り出した注射器を刺すとガバリと起き上がった。


 「こんなところで堂々と薬を使いやがって・・・」


 灰鴉が吐き捨てる様に言った言葉は快活な声に阻まれた。


 「おっはようございまー―――っす!!!!」


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