次の攻略に向けて
「・・・では、これより会議を始めます・・・」
いつもの会議室にいつもの面々。第一界を攻略したというのに活気は無く、鬱々とした空気が広がっていた。
「騎士団より報告。第一界攻略中には他の界からの侵攻は無かったため、特に被害は無い。この間のネモ・・・いや『偽善者』に倒された者たちは命に別状も無く、調子が戻り次第事情を聴くことになっている。・・・そんなところだ」
騎士団長はとつとつと報告する。
精鋭を集めた騎士団からより実力の高い者を『大いなる意志』の警護にあたらせていた身として今回の『偽善者』の介入は騎士団のプライドを大きく傷つけた。声も固く、悔しそうにしている。
「魔術師団じゃ。攻略が終わった第一界の探索を行っておるが、あの盗人の最後の一撃が凄まじくてな・・・使えるものを探すよりも壊れていないものを探すのに苦労しとる」
魔術師団長も疲れを隠せない様子でゆるゆると報告した。第一界攻略により機械兵からの侵攻が無くなったので大きく負担は減ったが、そこから得るものも特に見つからないため辟易していた。
「既に攻略を終えてこちらの領域になったところに意識を割きすぎるのも建設的ではない。『一点紅』よ。次なる攻略について話そう」
悪い空気を断つように騎士団長が提案する。
「そうね。そうしましょう。・・・脅威度で言えば『第三界』。順番に攻めるなら『第二界』となるけども」
「『第三界』は危険だ。入り口から漏れ出す闇によって何人もの犠牲者が出ている。確かにあそこをどうにかしないとまずいな」
「わしら魔術師団の光魔術でなんとか食い止めておるが無理が祟っておる。早急に対処せんと抑える要員にも限界が来るじゃろう」
「ええ、確かにどうにかしないといけないわ。だけど『第一界』の時と違って、攻略目標がわかってないのがキツイわね。『第三界』の中で目的も無くうろつくことはただ死にに行くのと変わりないわ」
『一点紅』の言葉に思考する面々。『第一界』の時には「暴走した中枢を止める」という目標がはっきりしていたからこそスムーズに攻略が出来たが『第三界』ではそれが出来ない。さらに『第三界』は闇に包まれている世界。まともに探索も出来ない。
「光を灯して進むしか無いがその光に群がるようにモンスターが襲ってくる。光を絶やせば闇に食われる。・・・その中で目的も無く動くことは多大な負担となるだろう」
騎士団長が渋面を隠そうともせずに『第三界』の恐ろしさを話す。
「流石に『第一界』の時みたいな単独攻略は厳しいじゃろ。光源となる者。モンスターを対処する者。探知に優れた者。・・・パーティーを編成しないといかんな。『一点紅』よ。強者たち(プレイヤー)から適性のある者を・・・」
「か、会議中失礼します!」
先行きの見えない会議でどうにか希望を持とうと、無難なところからでも決めていこうという流れだったが、突然部屋に飛び込んできた者にその空気は断ち切られた。