ゲーム=現実
まあ、そこからは酷かった。
今の今までゲームとして遊んでいた者は帰りたいと嘆き、悪さばかりしていた者は自身の行いを後悔したり、無くなった世界に愛する者を残した者は茫然とした様子で呆けたりと、なかなかの地獄絵図が広がった。
自殺をする者もいたが外の世界が無い今、死亡すると『Unknown World』のあの世にあたる『第十二界』に行くことになるだけで逃げ場はない。
一部のプレイヤーは元の世界に興味が無く、喜んだり先の展望を考えたりする者もいた。
さらにゲームが現実になったことからNPCたちが意思を持って行動を始めた。
これのお陰で色々面倒ごとが増えた。
プレイヤーたちは基本的に好き勝手行動し、時には普通にNPCを殺していたり、人によってはどっぷり犯罪者プレイをしていた者もいるので、嫌悪感を持たれていることがほとんどであった。
このゲームの『異世界に転生した望まれないアナタ』というのが何とも皮肉に聞こえる。NPCからしたらプレイヤーは「力を持って調子に乗っているガキ」という評価が中心となっている。
それでも自分の世界の危機に対して排他的になるほど現地民たちは愚かではなかった。そんな中でも好き勝手に行動する者が多かったプレイヤー側は救えない存在だったのかも知れないが、そんなことに思考を割くほどの余裕は私には無かった。
私が精力的に現地民とプレイヤーの橋渡しをしながら動いた結果、中間管理?司令塔?のようなポジションに落ち着くことが出来た。現地民の有力者にも、ある程度は融通を効かせてもらえるようになるほどには頑張った。
協力的なプレイヤーにも手伝ってもらいながら侵攻を抑え、攻略について会議を重ねる日々。
私の能力である『偶像崇拝』を使い、仲間を支援しながら遠くからしか戦いに参加出来ない自身を恥じる日々。
世界の終わりが目の前なのに犯罪者ムーブを止めないプレイヤーのことを報告され胃痛に悩む日々。
無計画に突入したプレイヤーの死亡報告を聞き流しつつも機を待ち続け、犠牲を出しながらもやっとつかんだ勝利。世界を救う第一歩である攻略が進んだ証。
先を見据えて辟易としながらもやっとつかんだ光明を断ち切るように、嘲笑うように現れた敵である『偽善者』。
心が折れそうになった。目の前の虚空を見つめたまま動けずにいた。
そんな私たちを励ますように、あるいは関心が無いかのように、『大いなる意志』は煌々と光を発していた。