あの日
2096年4月1日。もはや意味を成さない年月日。
私たちがこの世界、「Unknown World」に閉じ込め――否、この世界こそが私たちの現実になった『あの日』。
『一点紅』と呼ばれる私は恵まれないステータスと、周りを強くする能力から、俗にいう姫プレイみたいなことをして過ごしていた。
いつも通りにクソみたいな仕事をこなした日。眠りたい欲を抑えてログインしたあの日。私たちの明暗を分けたあの判断は今でも後悔という言葉がついて回る。
世界の終わりに巻き込まれて死ぬか、本当の終わりを食い止める戦いに身をやつすか。いったいどちらが良かったのだろうか。
ログインしていた人数。約1万人。それが最後の生き残りになった。
いつも通りにゲーム内で歌ったり踊ったりをしていた私はいつの間にか街中に立っており、気付くまで踊っていた私は恥をかいた。
ゲーム内で死亡していて身動きが取れない一部を除いて、基底世界『ゾーン』に全プレイヤーが強制的に集められた。別の世界で探索していた者や戦闘をしていた者なども関係なく招集された。
某有名ラノベのようにログアウトのできないデスゲームをやらされるのではと一部が湧いていたが、そんな生易しいものではなかった。
私たちを集めた存在。定義が難しいが『大いなる意志』或いは『世界の核』そのものと言えるもの。
それ曰く、
『世界の外から侵攻してきた存在により、元の世界は滅ぼされてしまった』。
『世界中の悪鬼羅刹神仏英雄を集めて抵抗したが悉くが敗北』。
『完全に滅ぶ前に最も接続ユーザー数の多かった、このゲームに退避した』。
『このゲームにも侵攻の手が伸びており、すでにここ以外の12の世界は墜とされた』。
『滅びは目前に迫っている』
とのことだった。
私たちはゲームに閉じ込められて出られないのではない。
外の世界は既に滅んで存在せず、このゲームこそが現実となったということだった。
楽しく遊んでいたゲームは一瞬にして、逃げ場のない地獄と化したのであった。