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大いなる意志のヒの下に  作者: PERNOG
幕間 第一界 攻略後
22/100

偽善者の遊び

 「ん?安心していいよ。ここで手を出すほど僕は野暮じゃないさ」


 手をパタパタと振りながら弁解するかのように話す。


 「今回のゲームは君たちの勝ち。そこから盤面をひっくり返すのは楽しくないからね」


 「・・・それで?どうしてネモに化けてたのかしら?スパイのつもり?」


 男は心外だという風にかぶりを振っていた。


 「一人で酒に溺れてスパイも何もあったもんじゃないよ。それにネモに化けていたんじゃない。さっきまで間違いなく此処にいたのは『艦長』ネモだったよ」


 男はネモの顔をした面を掲げて見せた。その面の表情は目を閉じながら泣いているように見える。


 「これはね、ネモから取った彼の心の一部さ」

 「僕に第一界を乗っ取られそうになった時に彼は何をしたと思う?」


 またくるくると面を弄びながらぺらぺら喋る。


 「逃げようか、それとも第一界に身を捧げるか。迷っていたみたいだから彼から『逃げたい』という心を取ってあげたんだ。僕があの世界に手を加えたのはそれぐらいかな」


 「すると彼は迷うことなく中枢に入り込んで自身と『核』を融合させて機械の一部となった」


 「彼の血は機械に通い、彼の体にはオイルが流れた。中枢であるノーチラスの操作権を持つ男が機械の中に入る。第一界の支配を完璧に自動で行う。『逃げ』の心を持たない究極の中枢の完成ってわけさ」


 「容赦の欠片も無くなった彼は、外界からの全てをシャットアウトするべく罠を配置した。命令に齟齬が生じないように兵士は全て機械化した。壁を崩されないように外から素材を仕入れた」


 『偽善者』が語る内容で周りの空気は一転し、殺気立ったものから重苦しいものへと変わった。

 『敵』によって第一界は狂い、周りの世界が被害を被った。そう思っていたのは少し違った。最大の原因は目の前の存在であることには違いない。ただ、住民や資材が奪われるあの襲撃は。生き物の気配が無いあの第一界は。他者を拒む遊びの無い罠の配置は。


 「全部、ただの『防衛反応』だったって、わけ・・・?」


 『一点紅』がポツリと呟いた。


 「正解~!君たちは互いに削り合っていたってわけさ。アッハッハ!」

 心底愉快そうに不愉快に笑う『偽善者』。


 「ま、僕の担当した世界は無様に負けちゃったしね。素直に引き下がるよ。その前に・・・」


 『偽善者』は『一点紅』の足元にネモの面を放りだす。


 「勝者にはキチンと報酬がないとね」


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