『核』発見。からの―――
『――見つけた!不自然に見えない箇所!そこに『核』があるはずよ!』
『そこから8m上よ!』
力を振り絞り探知をしていた『二つの道』は監視が厳しくかつ探知が効きづらい箇所を中心に探し、ぽっかりと穴のように見えない部分を探し当てた。
「ギギギ・・・やっとか!遅い奴も嫌われるんだぜ!?」
けがによる痛みと疲労で自分で何を言っているかわからない黒狼は腕の力を使い、素早く登り始めた。羽も無ければ両足も吹き飛ばされている黒狼。ゴキブリ並みの生命力があるとしても限界だろう。動きは明らかに鈍ってきている。
『急ぎなさい!『一点紅』もそろそろ限界よ!バフが切れればあなたも終わりよ!』
『ゴキブリでしょ!もっと生き足掻きなさい!』
「優しくねえ激励どうも!っぐ!」
片腕も吹き飛ばされてしまった。これでますます機動力は落ちるだろう。
「クッソ・・・!だが、着いたぞ!」
目標地点に来た黒狼。透過を使い、分厚い機械の壁を通り抜け『核』を目の前にした。
苦労してたどり着いた黒狼並びに視界を共有していた『二つの道』は達成感よりも先に、別な感情に囚われていた。
「な・・・こいつは・・・!?」
『どういうこと!?これが『核』なの!?』
『それじゃあ・・・『あれ』は・・・!?』
目の前の存在に困惑してしまったのがいけなかった。どんなものであれすぐにでも破壊を優先すべきだった。
ガゴン!と駆動音がすると『核』は機械の外にすごい速さで放出されていった。
「クソっ!ぼんやりしちまった!」
一足早く困惑から復帰した黒狼は『核』を追いかけて外に飛び出した
。
「どこだ!?どこにいった!?」
ざっと周りを見渡して黒狼は気を失いそうにになった。
見渡す限りの機械兵と視界を潰す殺虫成分を含んだ煙。たまにチカチカ光が見えるのはレーザーが照射されているのだろう。
「おいおいおい・・・『二つの道』、見つけられるか?」
『・・・っ、駄目ね。対策されたわ。全ての『目』の機能が停止されている・・・』
『あと少しであなたを処理できると踏んだのね・・・物量で押して終わりって計算かしら・・・』
歯噛みする『二つの道』からの通信に舌打ちをした黒狼は、ガクンと体が重くなったと同時に強烈な痛みが全身を貫いた。
「う、ぐえっ・・・!あのおばさんも限界か・・・!」
今の今まで自身を強化していた『一点紅』のバフも切れた。気合を入れて支援を受けてからそれなりに時間が経過していたことに今気づく。
『あのおばさんも限界の様ね・・・わたしたちも、もう』
『い、今すぐにでも、気を失い、そうです、わ』
攻略を始めて黒狼を支え続けてきた『一点紅』や『二つの道』からの支援はもう望めない。
黒狼自身も今すぐにでも逝ってしまってもおかしくない重傷だ。
「はあ・・・はあ・・・ご、ゴキブリも不死身じゃねえからな・・・流石に、逝っちまいそうだ・・・」
今すぐに諦めて、おとなしく黄泉送りにされてしまいたい。が、仮に攻略が失敗すれば、どうなるか。きっと黒狼が黄泉帰りを果たした瞬間また引っ張り出されるのだろう。
再びこのクソみたいな攻略をこなす度胸は黒狼にはなかった。さらに今回の攻略で『ノーチラス』はこちらを学習した。次はもっとえぐいことになるだろう。
「いま、今回、攻略を成功させねえと・・・世界の終わりだとか、世界のためだとかのお為ごかしはうんざりだ・・・目に見える地雷を踏むよりましか・・・」
攻略中に仕込んでいた『種』。機械兵の足止めにした以外にも念のため撒いておいた、出来れば使用する機会が来なければと思っていたものを使う時が来た。