『心亡き中枢』ノーチラス
「やっと着いた・・・ここが中枢か・・・」
数あるトラップを無視し一直線に飛んでも時間をかけてしまった黒狼は内心の焦りは出さずに最後の扉を通過する。
(ちっ、体力は問題ねぇが、足止めしているゴキブリたちが少なくなってきているな。機械兵たちがここまで来るのも時間の問題・・・ちんたらしている暇は無いな)
目の前に聳える機械。様々な管が伸び不快な電子音を発している塔。これがこの世界を機械の楽園、生物の悪夢へと変えた元凶。
『たどり着いたわね。あれこそが、第一天の『艦長』ネモからこの世界の全てを奪った中枢。新しい支配者、いえ、偽物の支配者、第一偽天『心亡き中枢』ノーチラスよ』
通信機越しに目の前の存在こそが、今回の攻略の目標であることを聞かされる。見上げるほどに巨大な機械。
「そんでどうすんだ?ここまで侵入は出来たが、俺には破壊力ってもんが無い。このデカさのものを丸々破壊なんて出来ねぇぞ」
『ここの機械たちは闇雲に壊してもすぐに修復されるわ。それにただの科学ではなく、魔術をも取り込んだ文明。電力を魔力に、魔力を電力に変換し、人間と違わぬ魔術も使用するやっかいなものよ』
ゴキブリ越しに見ていた機械兵の様子を思い出す。物量によって押しつぶした機械兵たちが時間をかけずに自己修復し、起き上がっていたのを。
「中枢という重要施設。並みの修復力じゃあ無さそうだな」
手をこまねいていても相手は待ってくれない。天井や床や壁から砲塔が出現し、こちらに狙いを定めていた。
『ネモに聞いた限り、あの中枢には『核』があるわ。そこを破壊すれば止められる』
『余程触れられたくないのね。あたしたちの探知も魔術か何かで阻害されて、中まで見通せないようにされているわ。だから黒狼、あれに近づいて調べなさい。近ければ看破出来るかもしれないわ』
砲塔だけでなく中枢を守るために配置された機械兵たちもが続々と現れた。
「状況は悪くなる一方・・・キッツいなぁ・・・!」
黒狼は口を大きく開き、大量の黒いものを吐き出した。全てゴキブリだ。
『うええ~・・・相変わらず気持ち悪い男・・・!』
黒狼を中心にして大量のゴキブリが湧き続けた。
「俺のゴキブリは無限に増殖させられるが、俺自身が生み続けられるわけじゃねえ。透過を使う体力も残しつつ攻撃を避け、『核』も探す・・・かなりギリギリになるかもしれねえ」
『ここが私の能力の使い時ね。全力であなたを支援するわ』
満を持したと言った感じに『一点紅』は気合を入れる。
「どんくらいもつんだ?」
『30分。それで決めなさい』
黒狼が飛び出すと同時に『一点紅』は能力を起動した。
『世界よ。力を与えたまえ。『偶像崇拝』。対象は第一界の黒狼大蛇』
『一点紅』は揚々と歌い始めた。世界から得られる力を黒狼一人に注ぎ込む。