ナイトハント・アンド・ペネトレイト・ハート(9)
KA-BOOOOOOOM! 爆轟が石とレンガの屋敷を揺らす。
爆心地はすぐ隣。燃料のリネンを山ほど運び込み、ショットシェルから抜いた火薬をバラ撒いた部屋で爆炎手榴弾を起爆したのだ。
パノプティコンが念動魔法で部屋を密封したことで、漆喰塗りの壁は爆圧に耐えて原型を保っていた。つまり爆発のエネルギーが一切外に逃げず、隣の部屋で暴れ回ったことになる。
「さすがに殺っただろ、これは」
俺は独りごち、隣に浮かぶゲイジング・ビットにハンドサインを出した。数秒後にドアが開き、向かいのリネン室に身を隠していたパノプティコンが戻ってきた。
「お疲れ様です。首尾は?」
「……爆発は抑え込んだ」
「さすがA級、大したパワーだ。――いやー、すいませんねお騒がせして。もうすぐ片付くんでじっとしてて下さい」
俺は後ろを振り返って言った。
「わァ……ぁ……」
「ジョン坊、マジでやっちゃったの……? ヤバいよ……」
そこには娼婦がふたり、縛り上げられてベッドの上に転がされていた。
この部屋にいた金髪ウェーブの女(落ちぶれた貴族令嬢という設定)と、爆破した部屋にいた茶髪の女(借金を抱えた商人の夫を持つ若妻という設定)だ。どちらとも何度か話したことがある。
「お姉さん方には申し訳ないけど、ノスフェラトゥは保身のために組長を裏切った。死んでもらわなきゃ俺の立つ瀬がないんすよ。ねえ、パノさん」
「……こういうやり方は不本意だったけど」
パノプティコンが鋼のような無表情で言った。
この女は感情を抑えようとするとき、こういう顔になる。勝つためにはやむを得なかったとはいえ、やはり爆薬頼りの作戦には思うところがあったらしい。
手順は、こうだ。
1、手前の部屋から娼婦を拉致し、リネン室から燃料代わりの布を運び込む。
2、焼夷手榴弾と爆炎手榴弾を仕掛け、パノプティコンの念動魔法で保持しておく。
3、角部屋の壁を撃って銃眼を開け、ノスフェラトゥをおびき寄せる。
ノスフェラトゥが裏をかこうと隣の部屋に入れば、散弾で動きを止めて爆殺する。即死を免れたとしても、リネンに火がついて部屋の中は火の海だ。再生したそばから熱と酸欠で死ぬ。
逆に俺がいる角部屋に乗り込んできた場合は、リネン室に隠れたパノプティコンが背後から奇襲し、乱戦になったところを俺のスキル〈必殺〉で殺す。どちらにせよ正面対決を避け、初見殺しで仕留める運びだった。
「騎士道精神っすか? 殺しにセンチメント持ち込んでもしょうがないでしょ。そうやって無駄な色気を出した奴から足元掬われるんです。他でもないノスフェラトゥがいい例でしょうが」
「うるさい」
「失敬」
俺は娼婦の縄を解いた。ふたりは殺人鬼でも見るような目で俺をチラチラ見ながら逃げていった。事情に気付いた他の娼婦も逃げ始めたらしく、無数の足音や叫び声が聴こえてくる。
俺たちは2階に人がいなくなったのを確かめ、爆破した部屋をあらためた。
高熱に晒された室内は灰と煤にまみれ、死体の焼ける臭いが立ち込めていた。
床には半ば灰となった人骨がいくつか。さっきまでノスフェラトゥがまとっていた得体の知れない威圧感は、もはや影も形もない。
「うまく焼き殺せたみたいっすね。骨だけで襲ってきたらどうしようかと」
「砕いて畑にバラ撒いてやった」
「そしたら野菜になって蘇ってきますよ」
「そうなったらあんたに食わせる」
「気は進みませんね」
俺は骨の欠片をひとつ拾い上げた。白く燃え尽き、再生する様子もない。
自爆したファイアライザーのときと同じだ。魔導サーモバリック爆薬の超高温は、条件が揃えば人骨すらボロボロに焼き尽くす。
「まんま遺骨だな。親父の骨もこうして拾ってやりたかったが」
「自分で殺しといて?」
「結果論っすよ。パノさんこそ、推定・姉の仇をブッ殺した感想はないんすか?」
水を向けると、パノプティコンはぎりり、と歯を軋ませた。
「……満足からは、程遠い」
「その心は?」
「姉さんの仇を見つけたらどうするか、ずっと考えて生きてきた。体中の骨をプレスマシンにかけた鴨ガラみたいに蹴り砕いて、這いつくばるそいつの心臓を生きたまま引き抜いてやるつもりだった……なのに、このザマ」
パノプティコンが鋼鉄ステッキを打ち付け、床の人骨を砕いた。
「真実を問いただすこともできなかった。正面から捻じ伏せることもできなかった。容疑者は容疑者のまま、爆弾で吹っ飛ばされて死んだ。――これで終わりだなんて、納得がいかない。私の7年間は何だったの?」
パノプティコンが怒りを絞り出すように言った。金色の目が煮えたぎる熔鉄めいてぎらぎらと明滅していた。
「……ごめん。あんたの判断は正しかった。私が個人的に納得いかないだけ」
「うーん……」
俺は手の中で骨片を弄びながら、少し考えた。
お前がノスフェラトゥより弱かったのが悪い。言ってしまえばそういうことだが、それを口に出してもこの女を責めるだけで、建設的ではない。
「じゃ、もうちょっとだけ探ってみますか? 奴をもっかい殺すのは無理でも、何か手がかりが見つかるかも」
そう切り出してみると、パノプティコンは意外そうに目を見開いた。
「時間ないでしょ。いいの?」
「良くはないけど、パノさんには義理もありますし、7年頑張ってきたんでしょ? 屋敷のどこかにブラッバーマウスって奴がいるはずだ。ノスフェラトゥの付き人で、枯れ枝みたいに痩せた古株の年寄りです。何かしら知ってるでしょう」
「わかった。急ごう」
言うが早いか、パノプティコンが足早に歩きだした。
相も変わらず肩肘張った奴だ。俺はこっそり肩をすくめ、奴の後に続いた。
◇
「お前達、逃げてはならぬ! ノスフェラトゥ様は手練の魔法使いぞ! あのお方が敗れるなど万に一つもあり得ぬこと! 逃げるな! 逃げてはならぬーッ!」
その直後、ブラッバーマウスはあっさり見つかった。
『無光夜』本館、玄関ホールへと続く画廊。そこに離れから逃げてきた娼婦たちが十数人も詰めかけている。さっき逃がしたふたりの姿もある。
ブラッバーマウスはリボルバーを持った用心棒を両脇に連れ、扉の前に陣取って、大慌てで女たちを押しとどめていた。
「そのノスフェラトゥ様が爆弾で吹っ飛ばされたのよ! 知ってるんだから!」
「他の用心棒もどうなったか解ったものじゃない!」
「義理を守って店と心中なんてゴメンだわ! そこを通して!」
怒り心頭の娼婦たちがブラッバーマウスに詰め寄ろうとする。用心棒ふたりが威圧的に銃を見せつけ、それを抑える。今にも血が流れそうな雰囲気だ。
「証拠もなしに物を語るな! あの方が爆弾程度で死ぬわけが――」
「証拠ならここにあるぜ、爺さん」
俺は娼婦たちの後ろから声を上げ、部屋で拾った骨の欠片を放り投げた。
真っ白に焼けた骨がカラカラと音を立てて床を転がる。その場にいた全員の視線が俺、床の骨と動き、また俺に戻った。
「どうも、皆さん。バックスタブです。ノスフェラトゥはくたばった」
「な……あ……?」
俺が名乗りを上げると、ブラッバーマウスは血相を変えて目を見開いた。
「ジョン坊だわ」「誰?」「ほら、ヒュドラ組長の……」「あの子がどうして?」「組長を殺して逃げたって話よ」「嘘」「でも彼、もともと鉄砲玉よ」
娼婦が口々に呟き、画廊の両側に寄って道を開けた。ふたりの用心棒が雲行きの怪しさを感じとり、銃に手をかけたまま顔を見合わせる。
状況が呑み込めずにいるそいつらに向かって、俺は堂々と宣言した。
「ヒュドラ・クラン若頭、チャールズ・E・ワンクォーターは、クランを乗っ取るために俺を利用して組長を殺した。ノスフェラトゥはそれを知りながら奴に味方した。ふざけたタマだ。だから死んでもらった」
半身で『ヒュドラの牙』を構え、銃口をブラッバーマウスに向ける。
「あとはそこの爺さん相手にちょいと野暮用を済ませてオサラバだ。お姉さんたちと用心棒の先生方に用はない。死ぬのが嫌ならどいてくれ」
「や、野暮用……一体何の!?」
ブラッバーマウスが目をぎょろぎょろと動かしながら言った。
「ノスフェラトゥが出た夜会で、若い女が死ぬか消えるかした事件が35件だとさ。奴が裏で女をさらって殺してたこと、知らないとは言わせねぇぞ」
「げェッ!?」
ブラッバーマウスが明らかな動揺を見せた。
『女をさらって云々』の部分は口から出任せだったが、奴の態度自体が肯定しているようなものだ。女たちがどよめき、パノプティコンが今にも飛び掛からんばかりに身を低める。
「く……下らぬデタラメで女どもを誑かすのはやめろ! 暗黒娼館街のあるじが何故そのような惨いことをせねばならぬのだ!?」
「喰い殺すためだろ。この期に及んでシラ切ってんじゃねぇよ」
俺はここまで聞いた情報を組み合わせ、適当な推測をでっちあげた。
合っているかどうかは大した問題ではない。自信満々に話して場の主導権を奪い、情報を引き出すのが目的だ。
だが、まったくのデタラメを言っているつもりもなかった。その証拠にブラッバーマウスは目を見開いて固まっている。
「ノスフェラトゥの若さの秘訣は人体操作の血肉魔法。奴は何十年も前からこれでガワを繕って、若さを維持してた」
ブラッバーマウスがふたりの用心棒に目配せし、俺を殺させようとした。
BLAMN! BLAMN! 俺は機先を制してそいつらを撃ち殺した。死体が倒れ、女たちの悲鳴が上がる。
「しかし自分の身体をいじくれたとして、それだけで不老不死でいられるもんか? たぶん無理だよな。機械工作ができたって同じ魔導車を何十年も乗り回せやしない。消耗した部品を補充しなきゃな。――だとすれば、どこからだ? なにしろ人体だ、魔法で石や氷を作るのとは訳が違う」
「ギヒィィーッ!」
ブラッバーマウスが一目散に逃げ出そうとした。俺は後ろから引き金を引いた。
BLAMN! 右膝に散弾を受け、痩せぎすの従者がその場にくずおれる。
「ぐわーッ!?」
「そこで女の失踪と話が繋がってくる。この前アバラを砕かれた時に聞いたんだが、大昔に血肉魔法で暴れた魔族どもは、他人を生贄にしてこの魔法を使ってたんだとさ。そんなわけ、で!」
俺は娼婦の間を通ってブラッバーマウスに歩き寄り、穴だらけになった奴の右脚を革靴でぐりぐりと踏みつけた。ブラッバーマウスが白目を剥いて悲鳴を上げた。
「ギャアアーッ!」
「奴には若い女を殺す動機があったわけだ。さっさと吐いちまえ、本人が死んだのにシラ切ってもしょうがねぇだろ」
「アアアアアアアア! あのお方は死んでなどおらぬ! 死ぬなどあってはならぬ! そんなことがあってはならぬのだ!」
「言葉わかるか? やったかやってねぇのか聞いてんだよ」
俺はブラッバーマウスの手を踏みつけ、体重をかけた。
敵に反撃の機を伺うような様子はない。ただ泣き喚いているだけだ。こいつも爪を隠していたらどうしようかと思っていたが、取り越し苦労だったか。
「ノスフェラトゥ様! アアアアアアアッ! アアアーアアアアッ! お許しを! アアアアアアアアアア! お許しをッ! お許しをーッ!」
「何だよ、もう。理性的に喋ってくれ」
ブラッバーマウスはエビ反りで痙攣し、訳の分からないことを叫び始めた。
俺は溜め息をついてパノプティコンに向き直った。スパニエルやステイシスならもっと上手く拷問しただろうが、俺は即座に殺すやり方しか知らない。
「どうします? 少なくとも無実の反応じゃ――」
そう言いかけた、矢先。
「我が主よ! お許しをッ! ノスフェラトゥ様! お許し……アアッ! 嫌だッ、死にたくない! ……ギヒィィィィィッ!」
ブラッバーマウスの痙攣がさらに強まり、打ち上げられた魚のように飛び跳ねた。その頭の中からミシミシと音が響き、奴の頭部が膨れ上がっていく。まるで孵化する直前の卵のように。
「げ」「下がれ!」
パノプティコンが俺を後ろに引っ張り、鋼鉄ステッキを構えて前に出た。
「ィギィイアッ! ギャッ! ァギャアアアアアアアアアアアアーッ!」
BANG!
次の瞬間、ブラッバーマウスの頭が爆ぜ、何かが矢のごとく宙に飛び出した。
見れば、それは血に濡れた1匹のコウモリだった。ノスフェラトゥが変身したものと同じ――自分が殺されたときの保険として、従者の体内に身体の一部を残してあったのか。
「オイ嘘だろ、いい加減死んでくれ!」
BLAMNBLAMNBLAMN! 俺は散弾でそいつを撃ち落とそうとした。
だが的が小さく、速すぎた。血のコウモリは異様な速度と軌道で散弾を避けると、さっき逃がした茶髪の娼婦の胸元を食い破って、体内に入り込んだ。
茶髪の女が身を捩り、不快な絶叫を上げた。人間が苦しんで死ぬときの声だ。
数秒後、その身体が内側から破裂し、鮮血とゴア肉片が飛び散った。それら全てがコウモリへと変化し、周りの娼婦たちへと無差別に襲いかかった。
悲鳴、血飛沫、飛び交うコウモリの大群。たちまち画廊が地獄絵図と化す。パノプティコンが目を剥き、わなわなと何事かを呟いた。
「……何なの、こいつら!? なんでこの人達まで!?」
「非常食だったんでしょ。娼婦はだいたい身元が不確かっすからね」
数を増していく血のコウモリを見ながら、俺は推理を続けた。
「ブラッバーマウスが女どもを逃がさなかったのは、こうやって奴の餌にするため。ところが当のノスフェラトゥが死んでたんで、自分まで餌にされちまったわけだ!」
俺はパノプティコンと背中合わせで立ち、ポーチから出したバードショット弾を『ヒュドラの牙』のチャンバーに直接装填した。
BLAMN! BLAMN! BLAMN! スパイク付きダックビル・ハイダーが炎と散弾を噴き出し、襲い来るコウモリの群れを撃ち落とす。後ろから来るコウモリはパノプティコンがステッキで防ぐ。だが、自分の身を守るので精一杯だ。
気付けば、画廊に生きた人間は俺たちふたりだけになっていた。娼婦たちはひとり残らず身体を喰い尽くされ、血のコウモリとなって空中を舞っている。
やがてそれらが一点に集まり、黒髪の女を形成した。裸のノスフェラトゥを。
「……許せ、娘たちよ……血肉魔法の秘密を知った者は、ひとりたりとも生かしてはおけぬ……全ては妾の安寧のためじゃ……」
たちまち深紅の魔力が吹き荒れ、鎧化魔法の仮面と剣士服がその身を包む。
向かい風の中に立っているような感覚。娼婦十数人分の身体を取り込んだ影響か、奴が放つ威圧感はさっきまでと比較にならないほど強くなっていた。
「あの狂人の追跡を逃れて幾星霜……娼館主に身をやつし、ようやく平穏な暮らしを手に入れた……手に入れたというのに……」
ノスフェラトゥはぼそぼそ呟いたかと思うと、突然顔を上げて怒りに吼えた。
「下賤の者どもがッ! 妾のささやかな住処を荒らし回っただけでは飽き足らず! 我が不老の正体までも暴こうとするとはッ! 何故これほど執拗に我が安寧を壊そうとする!? 手前勝手なセンチメントで人の暮らしを台無しにしおってッ!」
「黙れ、下衆がッ!」
パノプティコンが罵り返した。燃え残った燃料に再び火がついたような剣幕だ。
「人を食い物にして安寧も何もあるものか! 7年前のあの日、私の姉を殺したのはお前だな! 娼婦の口を封じたのがその証拠!」
「分をわきまえよ、小娘が! ひとりふたりの命が何じゃ!」
ノスフェラトゥは切って捨てた。
「ギャングの仁義だの、姉の復讐だの……馬鹿馬鹿しい! このクイントピアで毎年何人死んでいると思っておる! 100人も200人も殺してきた分際で、身内が死ねば正義の復讐者面か! その無意味な復讐の過程で、いったい何人が犠牲になった? ここの娘らとて、お主らのせいで死んだようなものじゃ!」
「ヤク中の寝言かよ」
「どの面下げて言ってるんだ、この女! 八つ裂きにして叩き殺してやるッ!」
BLAMN! 顔面狙いの散弾射撃。同時にパノプティコンが念動魔法で床や壁を剥ぎ取り、複数方向から投げつける。
「先刻までと同じと思うでないぞ……血肉魔法使いの強さとは、即ち喰らった生命の数! 蓄えた血と肉こそが力よ!」
ノスフェラトゥは背に魔力を集め、節くれだった皮膜の翼を生やした。それをカーテンのように展開し、銃弾と瓦礫を食い止める。
「いよいよ化け物じみてきたな。喰った分だけ部位を増やせるってわけか」
俺は舌打ちした。あれではバカでかい盾が2枚もついているようなものだ。
「もはや『無光夜』は立ち行くまい。暗黒娼館街も出直しじゃ……しかし、お主たちだけはこの場で葬り去らねばならぬ! 我が必殺剣、とくと見よ!」
ノスフェラトゥは手の中に魔力を集め、赤黒のレイピアを生み出した。
その刀身をパノプティコン目がけて水平に突き出し、翼を広げた。広げた翼は引き絞られた弓、その間で身を低めるノスフェラトゥは弓につがえられた矢めいていた。奴の額の骨がビキビキと音を立て、山羊めいて湾曲した角が生える。
飛んでくる。パノプティコンが俺の前に出て、鋼鉄ステッキを両手持ちで構えた。
「――『魔王の矢』ッ!」
DOOOOM! 音速を超える音。奴の足元が爆ぜ、衝撃で屋敷が揺れる。
ノスフェラトゥは砲弾のごとく加速し、両翼を畳んで低空飛行で突っ込んできた。竜種のジェット突進攻撃を思わせる、超音速の突進突き!
「くッ……!」
パノプティコンは機敏に反応し、ステッキで剣先を逸らそうと動いた。
だが打ち合ったその瞬間、刀身の周りを螺旋状に渦巻く魔力に巻き込まれ、鋼鉄のステッキは半ばから折れ飛んだ。
僅かに逸れた剣先がパノプティコンの脇腹を貫通。遅れてノスフェラトゥの身体が衝突し、魔導車事故めいた衝撃音が響く。パノプティコンは声ひとつ上げる間もなく押し込まれ、数メートル後ろの壁へと叩きつけられた。
読んでくれてありがとうございます。
今日は以上です。この更新は週に一度行います。
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