キャラクター名鑑(3)
【オールドオーガ】
67歳、只人の男性。身長179cm。恰幅のいい体格、白髪の混じった髪。
かつて東区の覇権を握っていたレッドサイクロプス・クランの組長にして、リボルバーと刀を同時に取り回すアサルトギャング・スタイルの達人。若かりし頃は名前の通り鬼神のごとき強さで恐れられた。本編の2年前の段階では既に老境に差し掛かっていたが、その業前は衰えを見せない。
◆レッドサイクロプス・クランの凋落
レッドサイクロプス・クランは30年以上の歴史を持った古豪クランであり、新興組織であるヒュドラ・クランは当初、対等の敵とすら見られていなかった。状況が変わったのは本編の5年前、暗黒シンジケートの支配者サクシーダーと、同じく暗黒麻薬カルテルを率いるデスヘイズがヒュドラ・クランに合流してからのことだった。
まず、暗黒シンジケートがウィンドセント区画の工場地帯を押さえたことにより、ヒュドラ・クランは銃火器の供給を潤沢に受けられるようになった。さらに工場と薬物が生み出す莫大な上納金を用い、レッドサイクロプス・クランと対立する組織や魔法使いを吸収することで、組織規模を日増しに拡大していった。
このときヒュドラ・クランが巧妙だったのは、レッドサイクロプスに対して表向き穏健な態度を取り続け、「格上には噛み付けない狂犬」を演じ続けたことだった。
急成長を嗅ぎつかれて正面対決に持ち込まれないよう、暗黒シンジケートはレッドサイクロプス・クランにも銃を卸し続けた。その裏で新型自動火器を開発・量産し、民間魔道具の部品に見せかけて輸送することで、水面下で戦力を増強していった。
また、同時にレッドサイクロプスの弱体化工作も行われた。デスヘイズの暗黒麻薬カルテルはアクアヴィタエの暗黒酒造俱楽部と手を組み、注意深く販路をレッドサイクロプスの支配地に伸ばした。そこから安価なドラッグと密造酒を広めて値崩れを起こさせ、敵組織の利権を徐々に弱らせていったのである。
こうした複数の裏工作を取り仕切ったのは、若頭チャールズ・E・ワンクォーターだった。生え抜きのギャングには欠けがちな長期的視点、そして徹底して名より実をとる経営能力が、この策略を成功に導いた。
これは貴族の大部分がギャングの傀儡にされている東区において、貴族出身の彼を要職につけた組長ブルータル・ヒュドラの采配の結果でもあった。路地裏孤児だったブルータル・ヒュドラは学も組織経営のノウハウも持ち合わせていなかったが、己の利益となるなら部下の思想やバックボーンを気にしない男だった。
そして本編より2年前、事態を重く見たレッドサイクロプス上層部がこの目障りな新興クランを撃滅せんと動き出した矢先、それを読んでいたヒュドラ・クランは乾坤一擲の奇襲を仕掛けた。
一番槍は防弾魔導車『怒れる幽霊』に乗り込み、サブマシンガンと爆炎手榴弾で武装した精鋭機動部隊だった。彼らはレッドサイクロプスの事務所を次々と奇襲、交通の要所をいくつも制圧する活躍を見せた。
それでもなお、レッドサイクロプス・クランには正面からぶつかれば勝てるだけの戦力と自信があった。故に敵を逃がさず殲滅すべく、ヒュドラ・クランの支配地を包囲する形で戦力を広げた。
しかしその瞬間を狙い、ヒュドラ・クランは主力の魔法使いを載せたトレーラーで敵の本拠地オーガ・ピラーに突貫。本拠地に猛烈な攻撃を受けたレッドサイクロプス・クランは、実力を発揮しきる間もなく組長オールドオーガを討ち取られ、あっけなく崩壊を迎えたのだった。
【マグナムフィスト】
48歳、只人の男性。身長195cm。ワックスで固めた黒のリーゼント・ヘア。両腕の肘までを覆うガンブラックのアダマント鋼ガントレット。
ヒュドラ・クラン大幹部にして、暗黒闘技会会長。闘技会はヒュドラ・クラン結成以前から存在する少数精鋭の武闘派クランであり、そのチャンピオンだったマグナムフィストは凶暴極まりない殺人ギャング・ボクサーとして恐れられていた。
闘技場戦士としては既に現役を退いているが、ボクシングの実力は健在。渾身の強化魔法を込めたストレート・パンチ『火焔砲』は〈不抜〉や障壁魔法すら爆砕する。
【リバーウェイブ】
225歳、エルフの男性。身長180cm、黒の三つ編み、東国衣装、流水めいた意匠が描かれた青の京劇面。
暗黒闘技会、そしてヒュドラ・クラン最強と謳われる武闘家。
東国の竹林を故郷とする、いわゆるバンブー・エルフ。氾濫河川並みの水量を操る水流魔法の達人だが、本人はむしろ体術戦の駆け引きを好む。マグナムフィストはギャングとしての兄弟分であり、闘技場経営の相棒であり、闘争に生涯を捧げる同志であった。
【タワーシールド】
31歳、只人の女性。身長168cm。金のショートヘア、魔石付きのグローブ。
一度は南区で冒険者となるも、自分たちを侮辱した依頼主を殺害、ギルドの追跡を振り切って東区に出戻ったアウトロー。エクスキューショナーとは姉弟関係にある。
『偏向障壁』と名付けた変種障壁魔法の使い手。板状に形成される魔力障壁は防御のほか切断や足場など多彩な応用が可能である。かつては強豪レッドサイクロプス・クランの守護神として知られ、暗黒闘技会においてもリバーウェイブに次ぐ強者と見られていた。
【エクスキューショナー】
29歳、只人の男性。身長205cm。金髪の巻き毛。フルフェイスマスクを被り、ギロチンの刃に持ち手を付けたような巨大剣を背負う。
並外れた膂力を持つ暗黒闘技会の処刑人。闘技場では魔物戦の他、敗れた闘技場戦士にとどめを刺す文字通りの処刑人役を務めていた。
タワーシールドは実の姉にして、東区での幼少期をともに生き延びた相棒である。防御と敵の拘束をタワーシールドに任せて突撃し、渾身のギロチン・ブレード突進回転斬りを叩き込むのが冒険者時代からの常套戦術だった。
【サクシーダー】
29歳、只人の男性。身長170cm。メタルフレームの眼鏡、無機質なモノトーンのサスペンダースーツ。
東区の金と物の流れを支配する暗黒シンジケートの代表者。同組織は支配地域の保護や維持を一切行わない、伝統的なギャング・クランとは気色を異にする経済組織だが、もともと違法行為に躊躇のない彼はさらなる利益追求のためにヒュドラ・クランへの合流を選んだ。
路地裏の孤児から密輸ビジネスで成り上がった男。他人を破滅させて金を吸い上げることだけが生き甲斐の冷血漢。それ以外についてはまったく無頓着で、ただひとりの理解者も作ろうとしなかった。
【ウルフコマンダー】
35歳、獣人の女性。身長190cm。灰色がかった茶髪。黒一色のハイテックアーマーとマギバー・グラス、肉食獣の後脚めいたブースター仕込みの義足。
東区で活動する傭兵団「ウォードッグ隊」を率いる傭兵隊長。もとは都市外からクイントピアに流れてきた魔物猟師であったが、やがて東区獣人の相互扶助組織としてウォードッグ隊を立ち上げ、傭兵稼業を行い始めた。
火炎魔法と最新鋭マギバネティクスを駆使した高機動戦の名手だが、最大の強みは〈念話〉のスキルによる指揮統制能力である。
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