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95 夏の神殿

「「浮島?」」


 浮島ということに二人の声が揃った。見た目は対岸か、ただの島だ。まさか浮いているとは、思わないだろう。


「と、言うことはこの泉は見た目以上に巨大であるということか?普通では渡れなさそうな感じであるのぅ」


「モナ殿どうすれば行けるのか?」


 いや、行かなくていいし、それに普通では行けない。呼ばれない限りは


「キトウさん行かなくていいですよ。浮島が移動して岸まできてくれればいけますが、そんなこと早々に···」


 ギギギギギと怪しい音が何処からともなく響き渡ってきた。

 泉の中央を見ていると、島が動いている!!!よ、呼ばれている!そんなはずは···私は勇者じゃないよ。


「行けるようであるな」


 そう言ってシンセイが泉の方に足を向けた。いや、行けば恐らく、数日は地上に戻ってこれない。


 ドンッという地響きを立てながら浮島が接岸した。


「では、参ろうか」

「モナ殿。如何した?」


 シンセイはサクサクと足を進め、浮島の上に乗ってしまった。その姿を見て私はうなだれる。


「浮島に入れば最低5日は出てこれないです」


 私の言葉に『なんじゃと!』と言って浮島から出ようとして、透明な何かに弾かれているシンセイがいる。


「浮島に入って5日後に神殿の何処かに生る自分にしか見えない果実を食すれば、出られます」


 そう、神殿の地下の一部がジャンルのような密林になっている。そこの何処かに自分にしか見えない果実を食べれば、出られるという仕組みだ。


「はぁ。入りましょうか」


 シンセイと頭の上の幼竜を置いて行くことはできない。ベルーイは5日の間も食料(魔物)がない神殿の中に拘束しておくことは可哀想なので、手綱を外して自由にさせておいた。5日後には戻ってくると言っておけば、賢いベルーイならわかってくれるだろう。そのベルーイは『キュキュ』と鳴いて木々の中に消えて行った。

 ほ、本当に帰って来るよね。私は歩いてサイザールまで行けないよ。


 そして、私は浮島に一歩····ジュウロウザ、なんで、私を抱えているのでしょうか?浮島に足を取られて泉に落ちたら大変だ?

 そう言われてしまったら、何も言えない。

 雪にでさえ顔面から突撃した私のことだ。浮島から転がり落ちることは否定できない。


 ジュウロウザに子供のように抱えられ、浮島の上に生えている木々の間を抜けていく、その先には冬の神殿と同じように白い建物が垣間見えてきた。近づいていくと、浮島の上にも関わらず、建物の手前には水が満たされた大きな水の庭と言っていいところがある。それが水鏡のように白く美しい神殿を映し出していた。


「キトウさん。そこの神殿の入口を映した水鏡が入口です」


 そう、ここは普通に白い建物の中に入っても、夏の神を祀った像しか存在しない。本来の神殿は水鏡の中にあるのだ。


「水鏡が入口なのか?」

「これはこれは奇妙な空間であるのぅ」


 シンセイは奇妙な空間と言いながら、なんの躊躇もなく足を水に付けて進んでいく。段々足を進めるごとに、シンセイの体は水の中に沈んで行っている。そして、完全にシンセイの姿も頭の上にいたノワールの姿も見えなくった。


「では、俺たちも行こうか」


 ジュウロウザがそう言って、水鏡の入口から足を進め、水の中に入ってく。私の足先も水が浸かる位置にきたが、全く濡れている様子がない。まるで、水があるように幻覚を見さられているようだ。


 一階分ほどの階段を降りたあとには、篝火の光が満たされた空間に降り立った。何処を見ても濡れている様子がない。ゲームではなんとも思わなかったけれど、実体験をすると不思議な感じだ。


「この先はいくつも道が別れておるが、どう、いたそうか?」


 石の壁に囲まれた広い空間の先には5つの通路が見える。まずは、挨拶に伺うのは普通だろう。


「中央の広めの通路の先に祭壇がありますので、そこで夏の神エスターテ様に挨拶をしましょう」


 私がそう言うとシンセイが進み出し、その後ろからジュウロウザが進みだした。

 あのー私歩いても問題ないと思うのですが?滑ると大変?

 いや、ここは普通に石の通路ですよね。

 でもですね。私も歩かないと駄目だと思うのですよ。


 ジュウロウザと押し問答をしている内に祭壇のある空間までたどり着いてしまった。祭壇の上部には夏の神を(かたど)ったと思われる白い像があり、更に上に視線を向けると、水の中から空を見上げているような天井があった。

 とても、涼やかな空間だ。


 ジュウロウザに石の床の上に下ろしてもらい、床に膝をついて右手を左の胸に添えて、左手は床に添える。


〘この神殿にお招きいただきまして夏を司るエスターテ神に感謝申し上げます。無事にロズワードに行って村に帰れますように〙


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